ベン・シモンズ「ウチが勝つには彼が必要だ」
セブンティシクサーズはウィザーズと戦ったプレーオフファーストラウンドの第4戦を落とし、スウィープ(4勝0敗)でのシリーズ突破は果たせなかった。まだ1敗を喫しただけだが、チームの雰囲気は重く沈んでいる。エースのジョエル・エンビードが右膝をケガしたからだ。
この試合の第1クォーター残り5分を切ったところで、エンビードは左ウイングの位置からドライブで仕掛けてトップスピードのままシュートを狙ったのだが、ロビン・ロペスのブロックショットを浴びた。バランスを崩したまま右膝から着地し、そのまま転倒。ここからの速攻でダービス・ベルターンズの3ポイントシュートを許したのだが、ここでタイムアウトを取ったのは失点が問題だったというより、エンビードの状態を確認するためだ。
最近のエンビードは、シュートに行った後の着地ではわざと倒れるようにしていると語っていた。レギュラーシーズン中に左膝を痛めた後、着地の際にわざと倒れれば膝に体重がかかるのを避けられると考えるようになったのだ。倒れながら着地することで守備への切り替えは遅れるが、それでもケガのリスクを嫌った。しかし今回は、バランスを崩して身体が沿った状態で着地したために、膝に体重がかかってしまった。
エンビードは自分で立ち上がってプレーを続けたが、第1クォーター終盤に交代。そのままロッカールームへと直行した。エンビードがいなくなったシクサーズはペイントエリアの主導権をウィザーズに明け渡し、悔しい敗戦を喫することになった。
トバイアス・ハリスは「別に世界が終わったわけじゃないさ」と落ち着いた口調で言い、ベン・シモンズは「ウチが勝つには彼が必要だ」とエンビードの重要性をあらためて語る。エンビードはフィラデルフィアに戻ってからMRI検査を受けるが、第5戦への出場が危ぶまれる。もし長期欠場となれば、レギュラーシーズンで東地区首位となり、プレーオフ最初の3試合でウィザーズを圧倒していたシクサーズは窮地に追い込まれる。
すでに3勝しているため、第5戦でエンビードを強行出場させる必要はない。早く勝ち抜けを決められれば、ニックスvsホークスの勝者と当たる次のラウンドに向けて時間的な余裕ができるが、逆にファーストラウンドであと2つ『負けられる』と考えることもできる。この間にエンビードの治療を優先させるべきかもしれない。
しかし、ヘッドコーチを務めるドック・リバースは「負けてもいいからエンビードの回復を優先させよう」とは言わないはずだ。彼は1勝3敗から3度の逆転負けを経験している指揮官だ。マジックでの2003年、クリッパーズでの2015年と2020年。特にナゲッツの勢いに飲み込まれた昨シーズンの負けは記憶に新しい。4戦先勝のシリーズで気を抜くことは敗退に直結する。
それでも、エンビード抜きではシクサーズは違うチームになる。レギュラーシーズンで彼が不在の試合は10勝11敗、プレーオフ進出チームとの対戦に限れば4勝9敗となる。ブラッドリー・ビールとラッセル・ウェストブルックを擁するウィザーズが本格的に勢いに乗る前に決着を付けたいが、残った選手たちの奮起なくして勝利はあり得ない。