ファンに約束した契約延長を反故にしてのネッツ移籍で関係悪化
ネッツはセルティックスとのプレーオフファーストラウンドで2連勝スタートを切り、敵地ボストンに乗り込む。
ジェイレン・ブラウンが戦線離脱し、ケンバ・ウォーカーもコンディション不良を抱えながらのプレーを強いられるセルティックスは2試合いずれも攻守に圧倒されており、TDガーデンでのホームゲームは絶対に落とせない。ボストンのファンも気合いが入るところだが、今回の対戦では別のモチベーションもある。カイリー・アービングの帰還だ。
カイリーは2017年オフにキャバリアーズからセルティックスに移籍し、チームの中心に据えられた。しかしカイリーはチームを勝たせることができず、若手の多いチームでリーダーシップを発揮できなかったばかりか、チームメートと距離を置くようになってしまった。そして契約延長を約束していたのを反故にして、フリーエージェントとなってネッツと契約したことで、ボストンのファンとの関係は最悪のものとなった。
ネッツに移籍して最初のボストンでの試合、カイリーは肩を痛めており遠征に帯同していなかった。それでもアリーナの外には「臆病者」と書かれた彼の写真が貼られ、試合中は「カイリー、クソ野郎」のチャントが本人不在の中で沸き起こった。その後は新型コロナウイルスの影響で無観客での試合が続き、ボストンのファンの前でカイリーがプレーする機会は現地28日のプレーオフ第3戦が初めてとなる。
カイリーも意識するところは大きいようで、第2戦を終えた会見でボストンでの試合について「ちゃんとしたバスケットボールの試合になることを願うよ。好戦的な雰囲気や人種差別、観客から罵られないことをね。ただ、そうなったとしてもゲームの一部で、僕は自分たちでコントロールできることに集中したい」とコメントしている。
ここで「ボストンで人種差別を経験したことがあるのか」を問われたカイリーは「それを証明できるのは僕だけじゃないけど」と両手を挙げた。ここでZoomの画面外から「世界中が分かってることさ」との声がして、カイリーも「そう、世界中が分かっている」と応じている。この声は会見の順番を待っていたケビン・デュラントによるものではないかと見られている。
ただでさえ緊迫するであろうTDガーデンでの試合、このカイリーの発言はボストンのファンをさらに焚きつけるだろう。トレイ・ヤングとマディソン・スクエア・ガーデンのニックスファンの対立は大きな盛り上がりを見せているが、必要以上の敵対心は好ましいものではない。セルティックスの指揮官、ブラッド・スティーブンスは地元ラジオに出演した際に「カイリーのコメントを真剣に受け止めたい」と語り、過激になるであろうボストンのファンを牽制している。
「彼が実際にどのような状況にあったのかは知らないが、ガーデンもセルティックスもNBAも、ファンが一線を超えないように注意を払っている。これは本当に重要なことで、誰も差別を受けるべきではない。カイリーが何も言わなかったからといって、何も起きていなかったとは限らない。真剣に受け止めてもらいたい」