クリス・ミドルトン

「自信を持って打った。積み重ねてきた努力を信じるしかない」

NBAは優勝を争うプレーオフへと突入した。そのオープニングゲームを戦ったのはバックスとヒートで、オーバータイムにもつれる熱戦の末、クリス・ミドルトンの決勝シュートでホームのバックスが初戦をモノにしている。

昨シーズンのプレーオフでも両者は対戦しており、この時はヒートが完勝してNBAファイナルまで駒を進めた。今回の試合はその記憶が残る中、相手の長所を潰すディフェンスが効き、長い長いゲームの中でどちらかが明確に主導権を握る時間はほとんどなかった。

前年に続いて上位シードのバックスだが、ヤニス・アデトクンボは厳しくマークされ、強引にかわしてもフィニッシュまでしっかり寄せられてシュート精度を狂わされ、フィールドゴール27本中10本成功と確率は上がらず26得点に留まった。一方でヒートも攻守の軸となるバム・アデバヨのシュートタッチが不調。こちらもフィールドゴール15本中4本成功の9得点と存在感を発揮できなかった。

点差は開かなかったが、終盤にはヒートの闘志が目立っていた。第4クォーターの最後は残り8秒からの攻めでジミー・バトラーがアデトクンボ相手のアイソレーションを制し、同点ブザービーターとなるレイアップで締めて延長に持ち込んだ。オーバータイムの残り20秒にもゴラン・ドラギッチの3ポイントシュートで同点に追い付いていた。何度もチェックメイトしながら勝ちきれないバックスに対し、土壇場でのビッグプレー連発で士気の上がるヒート。昨シーズンのプレーオフでヒートが見せた泥臭い戦いの中での勝負強さが、この試合でも発揮されていた。しかし、その試合をモノにしたのはバックスだった。

ドラギッチは言う。「彼らはホームで勝たなければいけないプレッシャーを感じ、追い詰められていた。接戦で僕らにチャンスがあったと思う。それなのに勝てなくて残念だ」

残り20秒からの攻めを託されたのはクリス・ミドルトンだった。この試合を通してタフなディフェンスを遂行していたトレバー・アリーザを振り切り、すぐに寄せたダンカン・ロビンソンのシュートチェックが目の前に迫っていたにもかかわらず、難しいフェイダウェイ・ジャンプシュートをねじ込んだ。

アデトクンボの得点が伸び悩む中で、ミドルトンはフィールドゴール22本中10本の27得点を記録。シュートタッチ自体は必ずしも良くはなかったが、「自信を持って打った」とこのクラッチショットを振り返る。「シーズンを通して練習と試合で積み重ねてきた努力を信じるしかない場面だった」

先勝したバックスだが、ヒートの20本に対して5本しか決められなかった3ポイントシュート成功率は第2戦以降の課題となりそうだ。打った本数自体も相手の50に対して31と少ないが、成功率16.1%はいくらディフェンス重視のプレーオフであっても低すぎる。それでも司令塔のドリュー・ホリデーは、自身が5本打ってすべて外したことも含めて気にしていない。「そこだけを見るのではなくトータルで考えるべきだ。確かに確率は悪かったけど、勝つために必要なのは3ポイントシュートだけじゃないからね」

プレーオフからアリーナの入場制限が緩和され、『ESPN』によればレギュラーシーズンではキャパシティの18%にあたる3300人の入場者数が、この試合から50%となり、約9000人の観客が声援を送った。ヘッドコーチのマイク・ブーデンホルザーは、勝利とともにこのことを喜ぶ。「ホームアドバンテージを得た甲斐があった。我々のファンのエネルギーを感じられたのは、本当に素晴らしいこと。世の中が正常な状態へと戻る、大きな一歩だ。この方向にこのまま進んでいけることを願うよ」