「バスケットボールの勝ち方を学べたシーズンだったと思う」
ペリカンズではとにかくザイオン・ウイリアムソンに注目が集まる。しかし、ザイオンと同じぐらい重要なプレーヤーがブランドン・イングラムだ。2020-21シーズンの彼は61試合に出場して平均23.8得点、フィールドゴール成功率46.6%、3ポイントシュート成功率38.1%というスタッツは前のシーズンからほとんど変わらない。それでも勝敗に責任を持つ気持ちの強さはよりはっきりと出せるようになった。これは弱小だった頃のレイカーズでスターターを約束され、ただ奔放にプレーしていた頃との大きな違いだ。
「バスケットボールの勝ち方を学べたシーズンだったと思う。期待していたほど勝つことはできなかった。それは一言で言えば一貫性を欠いたからだと思うけど、勝っても負けても僕たちは経験から学んだ」とイングラムは言う。
今シーズンのペリカンズを率いたのは昔気質のヘッドコーチであるスタン・ヴァン・ガンディで、チームの将来を担う才能を伸ばすために選手たちの短所よりも長所にフォーカスし、得意なプレーを出させる環境を準備した。ザイオンにはリズムをつかみやすいようにボールタッチを増やし、イングラムには個人技で勝負させるべくスペースを与えた。
精神的なムラがなくなり、アウトサイドシュートの精度、マークを引きはがしてパスをもらう動きが向上した。ディフェンスはまだ向上の余地を残すものの、バスケの試合で「気持ちを出す」とは精力的にディフェンスすることと同義で、その意味では前より随分と頑張れるようになった。リバウンドがやや減り、アシストが増えたのが昨シーズンからの変化だ。
「今シーズンのプレー自体は悪くなかったと思っている。個人的にはオフェンスで以前より良いプレー選択ができるようになり、ディフェンスでも相手の出方に合わせて守れるようになった。オフボールの動きの質が上がって、みんなベストな瞬間にベストポジションを取ることでパスがよく回った。ボールムーブからフリーでシュートを打ったりレイアップに持っていくのは楽しかったよ。チームとしての成長、仲間との信頼関係を感じながらプレーすることができた」
「しかし、チームとしても個人としてももっと良い結果を出せたはずだ。僕としてはオフェンスでもっと自分が決める積極性を出すべきだった。ほとんどの試合でミスマッチを突くことのできるシーンがあったけど、そこで行かなかったことも少なくなかった。ディフェンスでももっと多くの責任を背負ってプレーできたと思う。それもまた自分のプレーだと認めなきゃいけないし、言い訳はしないよ。この悔しさを忘れずに、僕はもっと良い選手に、チームはもっと良いチームになりたいと思う」
ヴァン・ガンディの1年目は今後勝ち続けるための基盤作りにあてられ、今後はイングラムとザイオンを軸に『勝てるチーム』を編成していくことになる。しかし、2人に長期契約が残っているとしても、無駄にできる時間はない。プレーオフに出るか出ないかのチームから早急に脱却し、NBA優勝を目指してプレーできる環境を整えなければ、ザイオンが2024年まで、イングラムが2025年までの契約を全うするかどうかは怪しいものとなる。
アンソニー・デイビスに愛想を尽かされてトレードを直訴されたのは、チーム編成の大きな敗北だ。レイカーズからイングラムを含むヤングコアを譲り受け、ロッタリーでザイオンがいる年の1位指名権を引き当てたことで将来性のあるチームは維持できたが、ここからどうステップアップしていくか。チーム内外に「ペリカンズ強し」を印象付ける動きが求められるオフ、まずはロンゾ・ボールとジョシュ・ハートの契約問題から着手することになる。