コリン・セクストン

ケガ人の続出、無能の批判を免れないトレードの失敗から脱却できるか

キャバリアーズの2020-21シーズンは3連勝で華々しく幕を開けたが、最終的には22勝50敗、リーグで4番目に悪い成績で終わった。不名誉なスタッツはたくさんあるが、平均得点(103.8)と3ポイントシュート成功率(33.6%)はリーグ最下位の数字だ。もっとも、開幕時点で勝敗は第一優先ではなく、期待値は「プレーオフに行けたらラッキー」ぐらいのもの。プレーイン・トーナメント行きの可能性は4月25日時点で潰えたが、勝敗よりも内容、未来に繋がる基盤をどれだけ作れるかが問われるシーズンだった。

では、その基盤作りはどれだけ進んだのだろうか。キャブズの今シーズンを振り返り、良いことと悪いことを整理したい。

2018年のドラフト1巡目8位指名のコリン・セクストン、2019年の1巡目5位指名のダリアス・ガーランド、2020年の1巡目5位指名のアイザック・オコロは貴重なプレータイムを得て経験を積み、その才能を伸ばしている。ネッツからトレードで獲得したジャレット・アレンはフランチャイズセンターを任せられるポテンシャルがあり、まだまだ粗削りなので経験を積むことでさらに成長できる。

キャブズのヤングコアの中心となるセクストンはリーグ18位の24.3得点を記録した。エースとして全幅の信頼を置くには少々物足りないが、3年目の選手としては上々だ。若くしてエースを託された選手としては、ジェイソン・テイタムもドノバン・ミッチェルも3年目の数字は同じようなもの。チームがより良いチャンスを作り出せるようになれば、まだ伸びる余地はある。

他にも、ナゲッツから来たアイザイア・ハーテンシュタインもリムプロテクターとして今後さらに伸びるだろう。ケガ人続出の状況でチャンスをモノにした2年目のディーン・ウェイドはドラフト外ながら掘り出し物だった。

ただ、キャブズの環境が若手の能力をフルに引き出すものでなかったのも事実だ。セクストンはシーズンを振り返り「ケガが多すぎて、やりたいことの多くができなかった」と語る。オコロに次ぐチーム2位の60試合に出場したセクストンがそう言うのは、自分のケガもあるがチームの状況だ。例年以上の過密日程でコンディション管理は難しく、どのチームも苦労したが、キャブズはその中でもひどかった。ケビン・ラブは25試合、ラリー・ナンスJr.は35試合にか出場できず、即戦力と期待されたトーリアン・プリンスも29試合の出場に留まった。セクストンの60試合出場は多いように思えるが、ルーキーイヤーから2シーズン全試合出場を続けていた『鉄人』が12試合を欠場している。

その結果、72試合のシーズンを戦う先発ラインナップは30を超えた。ウェイドは2ウェイ契約だった1年目に出場機会がほとんどなく、プレーできるなら喜んでコートに出ていく立場だが、その彼も「ケガ人が多くてラインナップが目まぐるしく変わり、相手どうこうより自分たちがどのような状態にあるか把握するのに苦労した」と語っている。これだけケガ人が相次いだのは偶然ではなく、チームとしてのコンディショニングに問題があったからだ。それを解消しない限りは同じことが繰り返されるはずで、上位進出は期待できない。

コービー・アルトマンGMによる編成の問題も間違いなくあった。ケビン・ポーターJr.はロケッツにトレードされるとすぐに大活躍。バックス相手に50得点を奪った試合では、レブロン・ジェームズが保持していた50得点10アシスト以上の史上最年少記録を塗り替えた。ポーターJr.を素行不良の多い問題児と決めつけて、2巡目指名権と交換したこと。何の代償もないままアンドレ・ドラモンドを手放したこと。またケビン・ラブとの長期契約も現時点では失敗だったと言わざるを得ない。強かった時代を知るチームリーダーを引き留める意義はあったが、再建が思うように進まないチームに32歳のベテランを縛り付けたことで、モチベーションを失わせてしまった。後から批判することはいくらでもできるが、このすべてのケースにおいて「もうちょっとマシなやり方はなかったのか」と言われても仕方がない。

もっとも、再建中のチームで何もかも上手くいくはずはない。ガーランド、セクストン、オコロ、アレンは魅力的なヤングコアであり、この4人を軸としたチーム作りを推し進めることもできるし、誰かをトレードに出すことで再建のスピードを速めることもできる。今シーズンのキャブズは見どころのないチームではなかったが、大きな期待を寄せられるチームでもなかった。この夏に動く余地が大きいチームだけに、その期待は来シーズン開幕までに大幅に上げられるはずだ。ただし編成で『賢く振る舞う』こと、コンディショニングの改善はチーム浮上の絶対条件だ。

J.B.ビッカースタッフは「浮き沈みの多いシーズンだったが、私自身が不快な思いをしたことは一度もなかった。選手たちは成長したいという意欲に満ちていて、指導者冥利に尽きる環境だった。選手たちの成長への意欲に感謝したい」と語る。「このオフは全員が努力する夏にしたい。フロントも選手も、来シーズンをもっと良いものにするための努力をするんだ。そうすれば我々の仕事は必ず成し遂げられる」