「周りの選手を空ける、あとは隙があったら自分も得点を狙っていく」
西地区3位のシーホース三河は、チャンピオンシップのクォーターファイナルで千葉ジェッツと対戦する。シーズン終盤の激しい戦いの中で、三河は特にインサイドが非常事態。シェーン・ウィティングトンは4月24日の試合を最後に欠場が続いており、大黒柱のダバンテ・ガードナーもケガを押してのプレーで先発から外れている状況。そんなチームを支えるのは、チーム最年少の23歳ながら55試合すべてに先発出場したシェーファー・アヴィ幸樹だ。
「全試合スターターで出していただいたのはありがたかったんですけど、同時に1試合も欠けることなく走りきれたこと、コンディション含めてちゃんとプレーできたことは自信に繋がっています。間違いなくいろいろできることが増えましたが、これだけスターターで出て、チームに影響を与えて、なおかつちゃんとチャンピオンシップに入ることができたのは一番大きい自信になっています」
相手の千葉ジェッツはレギュラーシーズン43勝14敗と西地区首位の琉球よりも勝率が高く、なおかつコロナで3月下旬から3週間に渡り試合から遠ざかり、練習が満足にできなかったこともあり再開後は3連敗と苦しい状況に置かれながら、そこから代替試合を含む過密日程の9試合をすべて勝ち、勢いに乗ってチャンピオンシップを迎える。
千葉の印象についてシェーファーは「とにかくリバウンドが激しい。特にビッグマンの(セバスチャン)サイズ選手、(ギャビン)エドワーズ選手」と言う。「アグレッシブにオフェンスリバウンドに飛び込んで来て、対戦した時も少しやられた印象。自分自身、リバウンドをあまり取れていなかったので、そこは取りきる、ボックスアウトをちゃんとやる、身体を当てるのを意識したい」
オフェンスについては「自分たちは点が取れる選手がたくさんいるので」と心配していない。「シーズンを通してやってきたことをやり続ける、自分たちのオフェンスをちゃんと遂行することが大事だと思っています。同時に僕がやらなきゃいけないことは、周りの選手を空ける、あとは隙があったら自分も得点を狙っていく。やっぱり自分がアグレッシブに行って得点を重ねられたら他の選手の負担も減りますし、チームとしてもっと動きが良くなるので、アグレッシブに行くことを大事にしたいです」
「今シーズンは手応えはオフェンスの方があります」
シェーファーはルーキーイヤーの2018-19シーズンにアルバルク東京の一員としてリーグ優勝を経験しているが、レギュラーシーズンは14試合のみの出場、チャンピオンシップではコートに立っていない。出場機会を求めて移籍した滋賀レイクスターズで昨シーズンに大活躍し、そして三河での現在に至る。今回のチャンピオンシップでは間違いなくスタメンとしてコートに立つ。責任は大きいが、臆する気持ちはない。
「昨シーズンは正直ディフェンスで手応えを感じていましたが、今シーズンはディフェンスでは変わらず自信を持って、ですが手応えはオフェンスの方があります。このチームは相手のプレッシャーがガードナー選手、金丸(晃輔)選手に偏るので、そういう意味では僕が隙を突いて得点したり、彼らのプレッシャーを取り除くことができないといけない。そういう面で今シーズンは上手くできたと思います」
かつてのシェーファーは高さと強さを生かし、相手ビッグマンとフィジカルに争うことで仕事をさせない汚れ仕事に徹する選手だった。それでも今シーズン、先の言葉にもあるようにオフェンス面でも大きく成長している。特にこの数週間、外国籍選手にケガが相次ぐ中で彼への得点面への期待が高まる中で結果を出した。今シーズンの平均得点は9.5だが、ウィティングトンがケガをしてからの8試合での平均得点は17.3と倍近くまで伸びている。
「ここ8試合ほどコロナでチームとして一時中断した後、自分としてはオフェンス面で起点となることを意識していた」とシェーファーは自身の成長を語る。「ガードナー選手も負傷したので、自分が彼のところを補う意味で、もっとアグレッシブに自分でやってやるんだという気持ちがあって、それはチャンピオンシップに向けても変わりません。自分としてはシュートタッチも良いし調子も良いので、自信を持ってプレーオフに向けてやっていきたいと思います。あとはどうしてもファウルができないところですけど、自分の売りはディフェンスなので、そこはファウルせず守ることを心掛けていきたい。リバウンドも負けてしまうことが増えるので、ボックスアウトをして自分が取れなくてもティップアウトして味方に取らせる。とにかくチームに協力できるよう意識しています」
「このままチャンピオンシップに入れるのはすごく良い形です」
とはいえ、主力選手が欠場した穴を埋めるのに、若さと勢いだけでは足りない。それまで得点面ではディフェンスの意識が他の選手に向いた隙を突き、イージーシュートのチャンスを確実に決めるのが彼の仕事だったが、今はエースムーブが求められている。相手のマークを振り切ってシュートを決める。体勢が不十分でも打つ、ゴール下でコンタクトされていてもリングにねじ込む。そのためには力強さだけでなくシュートスキルが求められるが、プルアップにフックシュート、トップスピードでリムに突進して相手のブロックをかわすリバースレイアップなど、シェーファーはこの部分でも急成長中だ。
スキルの面でコツコツと努力していた成果が、ここに来て形になっている。「平均25分、最近に至ってはほぼフル出場で、試合経験という面で成長できました。シュートバリエーションが増えたのも、試合の中でシュートを打つ本数が増えたので決めきれるようになったのは間違いなく大きいんですけど、ワークアウトでとにかくシュートのバリエーション、フィニッシュのバリエーション、ステップのバリエーションだとかハンドリングも、少しずつできることを増やしています」
「3ポイントシュートが一番分かりやすいところですけど、実際その他のところもやっているので、それがこの終盤にだんだん身に着いてきた」。そう語るシェーファーの表情には、実戦で積み重ねてきた自信がうかがえる。「シーズン終盤に向けてすごく調子が上がってきたので、このままチャンピオンシップに入れるのはすごく良い形です」
粗削りだった才能の塊は、Bリーグで揉まれることで洗練されたプレーも身に着けるようになっており、その真価を発揮し始めた。ガードナーが万全でないとなれば千葉有利の予想が大方を占めるだろうが、バスケを始めてからアップセットを連発してここまで来たシェーファーには、大仕事をやってのける雰囲気が漂っている。
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