ネイト・ロビンソン

写真=Getty Images

アービング主演映画『アンクル・ドリュー』で好演

NBAスラムダンク・コンテスト史上最多3回の優勝を誇るネイト・ロビンソンは、NBA史上に残る小兵ガードの一人として、2000年代に人気選手として活躍した。

175cmと小柄ながら身体能力はNBAでもトップクラスで、2005年のドラフト全体21位でサンズから指名され、ドラフト後ニックスにトレードされた。当初は体格差に苦しむと思われたものの、ロビンソンはベンチからのスコアラーとしてすぐ頭角を現し、1年目からローテーションに入った。34歳になった今も現役を続けているロビンソンは、『Boston.com』とのインタビューで、NBAキャリア10年を振り返った。

NBAキャリアを通じて3度も40得点以上を記録したロビンソンにとってのベストショットは、1年目の2005年11月26日にマディソン・スクエア・ガーデン(MSG)で行なわれたセブンティシクサーズ戦での決勝3ポイントシュート。オーバータイムにもつれた一戦は、102-102の同点のまま延長ピリオド終盤を迎え、ロビンソンが右コーナーから終了のブザーと同時にアレン・アイバーソン越しに3ポイントシュートを成功させ、チームを勝利に導いた。ロビンソンは、この時のシュートについて「アレン・アイバーソン越しに決めたウィニングショットが、どのシュートよりも上にくる」と回想した。

この決勝点を含め、ダイナミックなプレーでファンの心を掴んだロビンソンにとって転機となったのは、名門セルティックスへの移籍だった。2010年の2月にニックスからのトレードで加入した当時のセルティックスは、ポール・ピアース、ケビン・ガーネット、レイ・アレンの『ビッグ3』が中心の強豪で、同年のNBAファイナルにまで勝ち進んだチームだ(ファイナルではレイカーズに敗退)。ロビンソンは、加入後もセカンドユニットでのスコアラーとしてのポジションを掴み、マジックと対戦した東カンファレンス・ファイナルの第6戦では、第2クォーターだけで13得点の大活躍をみせ、96-84での勝利に貢献。負傷したポイントガードのラジョン・ロンド不在の影響を感じさせず、セルティックスはファイナル進出を決めた。

2011年の2月にサンダーにトレードされたのだが、ロビンソンはセルティックス時代のキャリアを「自分の子供や、孫に伝えられる話になった」と言う。「セルティックス時代は、とても良かった。あの時のチームはファーストクラスで、なんでもチームとして取り組んだ。チーム内の関係性もすごく良かったからね。あの時のようなチームには、なかなか出会えない」

ロビンソンは特にアレンと仲が良かった。3ポイントシュート成功数でNBA歴代1位(2973本)のアレンからシュートフォームに関するアドバイスを受けたほか、あまり知られていない話だが、練習では彼より多くのシュートを決めたことが何度かあったという。

その後サンダー、ウォリアーズ、ブルズ、ナゲッツ、クリッパーズ、ペリカンズと渡り歩いたロビンソンは、2015年の10月28日に行なわれたトレイルブレイザーズ戦を最後に、NBAの試合に出場していない。現在3on3リーグの『BIG3』に参戦しているロビンソンは、今もグッドシェイプをキープし、NBA復帰の道を模索中だ。

先日、『Yahoo Sports』がレバノンのホメネテメン・ベイルートと1年契約を結んだと伝えたが、ロビンソンによれば、まだ正式契約ではないとのことで、ギリギリまでNBAチームからトレーニングキャンプに招待されるのを待つという。

とはいえ、ロビンソンがコートを去る日は確実に近づいている。気になる引退後のプランについて、本人はテレビや映画の仕事に携わりたいと話している。最近では、日本でも11月に公開される、カイリー・アービング主演のコメディ映画『アンクル・ドリュー』に、『ブーツ』という役名で出演し、劇中で迫力あるパフォーマンスを披露した。

この作品は、当初ペプシのテレビコマーシャル用のシリーズだったのだが、人気を集めて映画化されたものだ。主演のアービングからTwitterのダイレクトメッセージで出演オファーを受けたロビンソンは、撮影時期に海外リーグでプレーする準備を進めていたという。だが、映画出演というチャンスを優先し、アービングからのオファーを快諾した。

「映画に出演するために、海外リーグでプレーするのを取り止めたんだ」と、ロビンソン。「いくつかオファーを受けていたけれど、すべて断った。映画出演のチャンスなんて滅多にないことだからね。今では子供たちから『ブーツ』と呼ばれるよ。新しいニックネームをもらえるのは悪くない」

仮にキャンプに招待されたとしても、シーズン開幕までに契約が決まる可能性は低く、NBA復帰に関しては、現時点では不透明なままだ。彼のようなベテランに出番がやってくるのは、ガードが負傷離脱して手が足りないチームが現れた場合に限られてしまう。オファーが届く保障はないものの、ロビンソンはコンディションを維持しながら、NBA復帰を諦めずに待ち続ける。