出場すれば2017年2月以来のNBA復帰「興奮しているし、不安もある」
『ワイルド・シング』がNBAに戻って来る。キャバリアーズはアンダーソン・バレジャオと10日間契約を結んだ。
バレジャオが最後にNBAでプレーしたのは2017年2月。最後の公式戦は2019年にブラジル代表の一員として参加したワールドカップで、長らく実戦から遠ざかっている38歳との契約が、チームにとって大きな助けとなるとは考えづらい。バレジャオ自身も、キャブズから連絡をもらって大喜びしたが、久々にチームの練習場に車を走らせる間は不安に襲われたそうだ。
長くプレーしてはいないが、引退したわけではない。ワールドカップが終わった後もオファーはいくつかあったが、彼は当時妊娠していた妻と過ごすことを優先し、その後は新型コロナウイルスのパンデミックで身動きが取れなくなった。
バレジャオは2004-05シーズンのNBAデビューから12シーズンをキャブズで過ごし、キャブズがあと4カ月後に球団初優勝を決める2015-16シーズンにトレードに出され、解雇された後にライバルのウォリアーズのオファーを受けてライバルの一員となった。キャブズが優勝を決めた試合にも、彼はウォリアーズの一員として参加している。翌シーズンも引き続きウォリアーズでプレー。キャブズは功労者である彼にチャンピオンリングを贈呈しようとしたが、彼は両チームのライバル関係に配慮してこれを断っている。
それでも、キャブズに対して怒りも恨みもない。10日間契約を決めて会見に臨んだヴァレジャオは「トレードは確かに予想していなかったけど、NBAのビジネスの一部として自分に起きてもおかしくはないと受け止めた。僕は相手チームにいたけど、みんなが優勝して大喜びしているのを見て、僕も心からうれしかったよ。この街とファンはそれに値するからね。大事なのは過去のことじゃなく、今ここに僕が戻って来たということだ」
彼はウォリアーズ在籍時も、ワールドカップの準備で1年以上ブラジルに滞在した間も、クリーブランドの家を手放さず、ワールドカップの後はずっとそこに住んでいる。ガレージを練習場に変え、コーチを付けてトレーニングを続けていた。
チームは21勝43敗で、プレーイン・トーナメント進出の可能性も断たれた。さらにケガ人が続出していることで、バレジャオを追加登録する枠が認められた。長らく実戦から遠ざかっている彼がどれだけのプレーができるかは懐疑的な見方もある。それでもコービー・アルトマンGMは「彼はチームの象徴であり、その経験とリーダーシップをこのロッカールームに戻すことができて良かった。彼ほど良い影響を与えられる選手は多くない。若い選手たちは彼との交流から大きなプラスを見いだせるはずだ」と語る。
確かに、チームの将来を担うコリン・セクストンやダリウス・ガーランドを始め、ほとんどの選手がバレジャオのプレーを見ていない。常にベストの準備をして、誰に対しても果敢に挑みかかっていく『ワイルド・シング』の姿は若い選手たちに良い影響を与えるだろう。それとは別に、『強かったキャブズ』を支えたピースである彼が戻って来ることで、ケビン・ラブも落ち着いてバスケに集中できるようになるかもしれない。
どれだけのプレーができると思うか? と会見で問われたバレジャオは、真面目な顔で、そして大きな笑みを見せて「分からない」と答えた。「プレータイムは5分かもしれないし、10分かもしれないし、15分かも。それは実際に試合に出てみて、どれだけのアドレナリンが出るか次第だね。正直に言えば不安もあるけど、楽しみだ。正確に言えば『よし、仕事に戻るぞ!』という感じだ。アリーナでの思い出、これから再開する人々。心と身体にいろんな感情がよぎるだろう」
「一つ言えることは、このチームは僕の故郷であり、ファンを愛している。コートに出てクレイジーなことがやれたらいいね。でも最も大事なのは、若い選手を助けて何事も当たり前ではないと理解してもらうことだ。興奮しているし、不安もあるけど、一日一日を大切にしてこの瞬間を楽しみたい」