齋藤拓実

「自分たちのバスケットを遂行できたことが勝利に繋がった」

名古屋ダイヤモンドドルフィンズは5月2日に行われた琉球ゴールデンキングス戦に93-88で勝利して、2020-21シーズンを締めくくった。

名古屋Dは前日の第1戦に最大16点のリードを奪いながらも最終クォーターに失速して逆転負けを喫しており、第2戦でも最大21点のリードを覆される展開となった。それでも第2戦では、逆転されてもすぐにシュートを決め返して粘りを見せることで勝利を収めた。

第2戦で齋藤拓実は、シーズンハイの27得点と3リバウンド7アシスト1スティールを記録する活躍でチームを牽引した。特に延長戦の5分間では、フィールドゴール2本中2本成功、そしてフリースローも5本すべて成功の9得点と2アシストを挙げてゲームを支配した。

「昨日に引き続き、後半に追い上げられる形にはなってしまいました。ただ、そうなってもポイントガードのコールでディフェンスをチェンジングしたり、オフェンスでも昨日よりもしっかり自分たちのバスケットを遂行できたことが勝利に繋がったと思います」と齋藤は試合を振り返った。

今シーズンの名古屋Dは昨シーズンの主力をすべて残した上で、齋藤や狩野祐介、ジェフ・エアーズ、レオ・ライオンズと主力級の選手を獲得し、最も補強が上手くいったチームとも見られた。今シーズンの戦績は32勝24敗でBリーグ開幕以降で最高の勝率57.1%を記録したが、西地区4位でチャンピオンシップ進出は逃してしまった。

「シーズンを通してもっとケミストリーは高めていけたのかなと、個人的には感じています」と齋藤は今シーズンを振り返る。「メンバーが揃っているのに勝てないとか、いろいろ言われたりもしました。それぞれ思うところはあったと思いますが、チームとしてもう少し合わせなきゃいけない中で、なかなかアジャストできずにシーズンが終わってしまった感じです」

齋藤拓実

「ポイントガードとしてそこで賭けに出るのは良くなかった」

齋藤は常々「チームを勝たせるポイントガードになりたい」と口にしており、実際に琉球との第2戦ではスタッツとゲームメーク力でそれを体現してみせた。

齋藤に個人的なシーズンの振り返りを問うと「ゲームを支配して勝てたなと、実際に自分でも感じることができた試合はありました」と言う。それでも「今日は結果的に勝てたから良かっただけで、僕としては第4クォーター最後のロングパスはかなり後悔しています」と続けた。

75-75で迎えた残り19秒、琉球の並里成が外した3ポイントシュートのリバウンドを取ったジャスティン・バーレルからボールを受け取った齋藤は、前を走るレオ・ライオンズにロングパスを送った。しかし、このパスが数センチ合わなかったため、ライオンズはシュートモーションが遅れてしまいディフェンスに囲まれてシュートを外し、逆に残り10秒を切って琉球に速攻を与えてしまった。

齋藤は言う。「あの時はライオンズに並里さんがついていたので、直観的にロングパスを出しました。僕はファウルをもらえるかなと思ってパスを出しましたけど、やっぱりポイントガードとしてそこで賭けに出るのは良くなかった。そこのリスクを高めるよりは、しっかり自分で運んで僕たちのオフェンスで終わるのが理想でした。結局、ターンオーバーになって今村(佳太)選手にシュートを打たれてしまった。あそこで決められていたら本当に僕の責任ですし、そこはポイントガードとしてもっと経験を積まなければいけないと感じています」

齋藤拓実

「自分を評価するのは周り」

大学時代から非凡なパスセンスとドリブル技術で大学No.1ポイントガードの呼び名が高かった齋藤だったが、選手層が厚いアルバルク東京ではプレータイム獲得に苦戦し、昨シーズンは滋賀レイクスターズへ移籍した。滋賀では先発ポイントガードの座を獲得し、平均13.0得点、5.4アシストと、いずれも日本人選手としては3位のスタッツを記録して、クラブ初の勝率5割超えに貢献した。

そして、今シーズンは名古屋Dで出場した55試合すべてで先発を務め、平均12.5得点とキャリアハイの5.6アシストを記録。今では日本代表候補の富樫勇樹や安藤誓哉、そして琉球戦で熱いマッチアップを見せた並里など、リーグを代表する司令塔と肩を並べている。

「自分を評価するのは周りだと思うので、そう言ってもらえるのはうれしいです」と齋藤は言うが、「今名前が挙がった3選手はチームを勝たせることができていると個人的には感じていて、そこはまだまだ僕には足りないところです」と言う。

「僕自身、そこの結果だけを求めてやっているので、そうやって評価していただけるのはありがたいですが、傲慢にならず来シーズンはもっともっと理想のポイントガードに付近づけるようにやっていきたいです」

「ポイントガードの自分が入ることで、良くも悪くも自分のチームになることがあります。そこで自分だけのチームにならないように、出ている5人の選手が驚異的なチームにならないといけないと思います」

残念ながら今シーズンの戦いはこれで終了となったが、『チームを勝たせるポイントガード』になるための齋藤の戦いはまだまだ続く。

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