残り28秒で迫られた選択に正解し接戦を制す
1点差に詰め寄る得点を決め、残り時間は28秒。チームファウルはすでに5に達している。あなたはこの状況でどんな行動を取るだろうか?
5月2日、千葉はアルバルク東京と対戦し、延長にもつれる接戦を111-109でモノにした。最終クォーター残り1分7秒の時点で千葉は6点ビハインドと苦戦を強いられた。セバスチャン・サイズが3ポイントシュートを決め返し、1ポゼッション差にすると、残り28秒にギャビン・エドワーズの得点で1点差に迫った。
このディフェンスを守り切り、最後のオフェンスに懸ける選択肢もあったが、千葉ジェッツの富樫勇樹は迷わずファウルゲームを選択した。富樫はこの時の状況をこのように説明した。
「自分でショットクロックを見て、『ファウルしますか?』というアイコンタクトを監督と取り、『行け』という感じだったので。オフェンスリバウンドを取られたり、リバウンドを取ったとしても僕にボールが来たところで2、3秒しかないので、そういう判断でした」
冷静かつ合理的な判断だった。A東京の小島元基が2投目のフリースローを失敗し、2点差で千葉のラストポゼッションに。そして残り1.9秒、エンドからのリスタートで富樫がゴール下でポジションを取るギャビン・エドワーズにパスを通し、土壇場で同点に追いついた。結果的に、富樫の判断が試合を延長戦に持ち込むきっかけとなった。
そして、富樫はこの判断が過去のA東京戦で得た教訓だったことを明かした。「それこそ、数年前にアルバルクと駒沢で試合をした時に、28秒くらい残っていて、その時にファウルをせずに負けてしまったんです。シュートを落としてから残り4秒でどうにかなるという判断だったと思います。でもティップされて、自分たちのポゼッションにならずに負けてしまった試合があって、それをすごく覚えていたのでファウルに行こうと」
「Bリーグ記録を作ったシーズンに近いような感覚が出てきました」
富樫はファウルゲームで使ったファウルにより個人ファウルが4つの状態でオーバータイムを迎えた。そして、残り2分54秒、ケビン・ジョーンズからオフェンスファウルを誘発しようとした際にファウルアウトとなった。さらにその直後、サイズもファウルアウトとなるピンチに見舞われたが、シャノン・ショーターのフリースローが決勝点となり、接戦を制した。
大事な場面でコートを去ることになった富樫だが、不思議とチームが負けるビジョンは見えなかったという。それは、ここにきて最も完成度が高かった2シーズン前の状態にチームが近づいてきているからだ。
「10点開いた時もなぜか負けるという感覚がなく、追いつけるとしか思わなかったです。オーバータイムに行けたことは完全にこっちのリズムだったんじゃないかと思ってましたし、特に2年前のBリーグ記録を作ったシーズンに近いような感覚が出てきました」
千葉は代替試合がシーズン終盤に多く組まれ、どのチームよりもタフな日程となっている。それでも、富樫は以前からコロナ禍におけるコンディションの低下を試合で取り戻せると言い、ポジティブに受け止めてきた。実際、チームも6連勝中と調子を上げており「体力面で多少疲れている選手はいると思うけど、勝っていることでそれ以上の手応えを感じています」と、いたって前向きだ。
千葉は5月5日に琉球ゴールデンキングス戦、8日に秋田ノーザンハピネッツ戦があり、10日のサンロッカーズ渋谷戦でレギュラーシーズンの全日程を終える。チャンピオンシップ出場はすでに決めているが、ここで連敗を喫すると東地区3位に転落する可能性も残している。それでも、富樫が語るように、最高の状態でチャンピオンシップを迎えられれば、悲願達成の可能性もその分高くなる。
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