カイル・ラウリー

今夏にフリーエージェント、行き先はヒート、ニックス、シクサーズ?

カイル・ラウリーはラプターズの球団史上最高の選手だ。ロケッツから加入した2012年から9シーズンに渡ってチームを牽引し、2019年の球団初優勝に大きく貢献した。その彼は35歳となり、契約最終年を迎えている。今年3月のトレードデッドラインで、彼は退団するものと思われた。彼自身もトレードを覚悟していたが、結局は残留に。ラウリーは「球団と僕はお互いに包み隠さず話せる関係にある」と残留を歓迎し、今もチームのプレーオフ進出のために戦っている。

それでも、契約問題はシーズン終了後に引き伸ばされただけで、もうしばらくすれば新たな決断の時を迎える。ラウリーは35歳の今もトップレベルでプレーできる力を残しているが、長期契約を結ぶ年齢ではない。

パスカル・シアカム、フレッド・バンブリート、OG・アヌノビーと高額契約を結んでいる今、ラウリーとの再契約は大きな負担となる。途中加入のギャリー・トレントJr.とケム・バーチはチームにフィットしており、いずれも新契約を結んで残したい。そうなると、現在3050万ドル(約33億円)の年俸を得ているラウリーと、この金額での契約を延長することは考えづらい。

サージ・イバカの退団はラプターズにとって大きな戦力ダウンとなったが、マジックから加入したバーチがその穴を埋める活躍をしている。彼が14得点を挙げたキャブズ戦の後、そのうち5アシストがラウリーによるものだったことに「バーチの給料を上げてやろうと思ってね」とラウリーはジョーク混じりで語っている。バーチ自身も「カイルからは、もっとプレーに絡み、細かいプレーの質を上げれば良い契約に繋がると気合いを入れられているんだ。お互いに助け合うこのチームの文化は素晴らしいし、カイルの言葉には感謝している」と発奮している。

これはラウリーのチームリーダーとしての資質を示すものであると同時に、愛するラプターズを離れる時期を意識した発言でもある。サラリーキャップを考慮すると、仲間の給料を上げるには彼が身を引く必要が出てくるのだ。他の主力選手についてもラウリーは「みんな男らしくなった。良い選手に成長したら、それに見合うお金をもらうべきだ。家族をずっと養い、世代を超えて財産を残し、好きなことをするために頑張ってきたんだから」と語っている。

そしてラウリーも、彼自身がプレーヤーとしていまだ衰えていない現状では良い契約をもらうべきだ。ラプターズでは無理でも、それを提示できるチームは他にある。今の候補は3つ。ヒート、ニックス、セブンティシクサーズだ。

ヒートはサラリーキャップに余裕がある、数少ない強豪チームの一つ。ヒートはこの夏にヤニス・アデトクンボがフリーエージェントになるのに備えて、サラリーを調整していた。アデトクンボは早々にバックスとの再契約を選択したため、そのプランは宙に浮いた形となっており、ジミー・バトラーとの強固な信頼関係が契約をアシストすると言われている。3050万ドルの金額をキープしつつ2年ないしは3年の契約を提示できるとしたら、それはヒートだろう。

そしてニックスは、今シーズンに大きな飛躍を遂げたチーム。ジュリアス・ランドルを中心に若い才能が集まり、プレーオフ進出へとこぎ着けた。そのチームを来シーズンさらにアップグレードするために、若い選手たちの模範となれるリーダーを必要としている。デリック・ローズは背中で引っ張る寡黙なリーダーで、ここに声を出して若手の背中を押すラウリーが加われば心強い。ドアマットチームからの脱却で満足せず、さらに上を目指すのであれば、ラウリーのような存在が必要だ。

もう一つがセブンティシクサーズだ。ベン・シモンズとジョエル・エンビード、トバイアス・ハリスのコアを解体せずにラウリーを迎え入れるのは難しいが、ダリル・モーリーGMはそこに何とか折り合いをつけてチームを成立させるタイプ。ラウリーはフィラデルフィア出身で、近郊のビラノバ大でプレーしていた。キャリアの最後を過ごす地としては申し分ない。

現在、ラプターズは26勝36敗でブルズと並んで東の11位。残り10試合で巻き返してプレーインに進めるかどうかの正念場を迎えており、ラウリーも球団も今は目の前の試合に集中している。この挑戦が終わった時に、彼らは包み隠さずにお互いの事情と思いを話し合い、将来を決めることになる。