ケビン・ラブ

ガーランドは擁護「ただイライラしただけさ」

今のキャバリアーズにレブロン・ジェームズがいた頃の面影はなく、負けたことはニュースにならない。しかし、チームリーダーであるべきケビン・ラブが勝負を捨てるような愚行に出れば話は別だ。4月26日のラプターズ戦、開始前からキャブズに勝ち目は薄かった。ケガや脳震盪プロトコルで7人を欠き、しかも前日にウィザーズとのアウェーゲームを終えて、試合の行われるタンパに到着したのは午前3時すぎ。コンディションとしては最悪だった。

それでも選手たちは闘志旺盛で、前半を終えて48-49と良い戦いを演じていた。しかし、第3クォーター終盤に事件は起きた。ラブはリスタートのボールをチームメートに渡すのではなく、叩き付けるようにはたいてコートに戻す。ラプターズの選手がこれを拾い、3ポイントシュートを成功させる間、ラブはボールを追うでもなくやられるがまま。このプレーの直後にベンチに下げられ、試合終了を待たずにロッカールームへと引き上げた。

これを機にチームは失速。あっという間に点差は開き、終わってみれば96-112の完敗となった。指揮官のJ.B.ビッカースタッフはラブの行為について「ケビンはチームメートに謝罪した。我々は前に進む」とだけコメント。「ほとんどの試合でウチの選手たちは実力を発揮し、一生懸命にプレーしてきた。どんな時でも力を尽くすこと。それがこのチームの個性だと思っている」と語った。

ダリウス・ガーランドは試合後の会見で「それまでに何回かファウルコールがなく、それにイライラしていたんだと思う」と語る。「僕はディフェンスを振り払おうとしていたから、その瞬間は見ていないんだ。SNSにアップされているだろうから、あとで映像を確認してみるよ。ああいうことが起きても、僕たちは切り替えて次のプレーに向かうしかない。ちょっとしたアクシデントで、深刻なものじゃないと思う。ただイライラしただけさ」

確かにイライラは理解できるが、その時点でキャブズには勝てるチャンスがあった。連戦の疲れが第4クォーターに出たかもしれないが、いずれにしてもまだ残っていた可能性をラブが投げ捨ててしまったのは事実だ。

ラブは過去にも癇癪を爆発させている。昨シーズンにはコリン・セクストンがボールを持ちすぎてパスが回らないことに試合中に激怒し、コビー・アルトマンGMと口論して罰金を科されてもいる。もっとも、今回はチームへの不満ではなく審判の判定基準が一致しないことにフラストレーションを溜めていたようだ。NBAでは審判も新型コロナウイルスの健康安全プロトコルで試合の担当から外れることが頻発しており、普段はNBAで笛を吹いていない審判が割り当てられるケースが増えている。

この試合でも、事件のタイミングでラブにリスタートのボールを渡したのは、普段はGリーグを担当している審判だった。しかし、それがラブの行為を正当化するものではない。

ここで我慢ができない時点で、ラブは普通の精神状態ではない。キャブズはガーランドやセクストンを始め若手を軸に再建を進めているが、32歳の彼はチームが再び強くなるまで待てそうもない。アンドレ・ドラモンドは優勝を狙える環境へと旅立ったが、ラブは2023年まで契約が残っている。かつての『ビッグ3』であるレブロンとカイリー・アービングが優勝を狙えるチームで主役を務めている一方で、ラブの存在感は薄れていく一方だ。

今シーズンのラブは18試合にしか出場しておらず、スタッツも大きく落ちている。高給は保証されているが、「勝ちたい」という欲求はここでは満たされそうにない。