負けが決まっていてもやり続ける理由
レバンガ北海道は先週末に行われたサンロッカーズ渋谷戦に敗れ、泥沼の11連敗と苦しんでいる。
ジャワッド・ウィリアムズが4月7日の横浜ビー・コルセアーズ戦で、ジョーダン・テイラーが4月14日の新潟アルビレックスBB戦でともに右膝内側側副靱帯損傷を負い、戦線離脱となったことがこの結果に繋がっていることは明白だ。現在もBリーグにおける外国籍選手の存在は大きく、チームの勝敗を左右するほどの影響力を持っている。
橋本竜馬も「外国籍選手が2人抜けてキツい状況ではある」と、外国籍選手がニック・メイヨのみという現状について正直な気持ちを語った。それでも、橋本にはそれを言い訳にして勝利をあきらめるという選択肢はない。特にSR渋谷との第2戦ではそうした姿勢が最後まで見られた。
アップダウンが激しい展開となったが、我慢を続けた北海道は第3クォーターを終えた時点で8点ビハインドと食らいついていた。しかし、最終クォーター出だしの約2分間で0-13のランを受け、ビハインドは20の大台に乗った。地力の差、そして20点差という現実を考えれば勝敗はそこで決まったと言える。それでも、北海道は誰一人あきらめることなく、コートにダイブするなどハードに戦い続けた。残り3分半の時点で22点差だったが、最終的に15点差まで戻してタイムアップを迎えた。
なぜ、勝敗がすでに決まっているにもかかわらず全力プレーを続けるのか。そして、続けられるのか。橋本は言う。「スタッフもチームも全員頑張っていて、コートに出ている選手たちは常にやり続ける。それをレバンガのファンやブースターが見ています。正直、負けが決まっていた試合なんですけど、最後までやり続けることは自分のポリシーでもあるし、そういったところを見ていただけるファンも多くいると思っています。変わらずやり続けます」
勝敗が決まっているのであれば、ケガのリスクを考えてインテンシティを下げるという選択肢も決して悪くはないはずだ。実際、桜井良太はコートにダイブした際に流血し、交代を余儀なくされた。だが、橋本は「良太さんは鉄人なので、あれくらいはケガに入らないです(笑)。次も頑張ってもらいたいと思います」と笑顔で話し、全力プレーを継続することしか頭にないようだ。
「次のプレーに切り替えるマインドセットは絶対に大事」
橋本を筆頭にハードなプレーを続けた北海道。これにはSR渋谷の伊佐勉ヘッドコーチも「最後のボールへの執着心はレバンガさんのほうが圧倒的に高かったのでそこは見習うべき。見習って反省し、次に生かしてきたい」と、敵ながら天晴れといった様子だった。
そして、北海道の宮永雄太ヘッドコーチも選手たちの全力プレーに『感謝』という言葉を交えて、このように評価した。「練習から橋本、多嶋(朝飛)、桜井は同じような強度でずっとやって、チームの士気を高めてくれている。どのような状況でも彼らがクラブのモットーである『頑張れを届ける』ということに対し、マインドセットしてくれているので感謝と言いますか。そこは大事にしなければいけない部分です」
また、宮永ヘッドコーチは「ただ、彼らについていける選手が他にいるかといったらまだまだそうではない状況だと思う。そういった選手も引っ張り上げられるように準備していきたい」とも語り、橋本らの次に続く選手が現れることを期待している。
そういった意味では、19得点を挙げた中野司のステップアップはチームにとって明るいニュースだろう。そして、中野が見せたグッドパフォーマンスにも橋本が関係していた。最終クォーター残り5分10秒、中野はライアン・ケリーにバスケット・カウントを献上し、肩を落とした。すると、橋本は中野を捕まえ、ハドルを組んだ。
「レフェリーのところへ行こうとしていたので捕まえました。選手は自分の考えとは違った笛が吹かれる時もありますが、それでレフェリーに意識が向くと良い方向にいかないと自分自身も経験しています。なので、それはやめようと。ムッとしたとしても言いに行くのではなく、次のプレーを考えようと。引きずられることなく次のプレーに切り替えるマインドセットは絶対に大事なので、そこは常々言っています」
これで落ち着きを取り戻した中野は直後に3ポイントシュートを沈めて、一矢報いた。そして、橋本はそんな中野を笑顔で迎え入れた。
得点やリバウンド、アシストと違い、数字で表せない部分の貢献度は評価されにくい。だが、バスケットボールというスポーツはそうした目に見えない部分での貢献度が勝敗に直結しやすい側面もある。橋本はこれからも一つの言葉や一つのプレー、そして背中で北海道の大事なマインドを伝えていく。
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