ジョン・ウォール

「自分がまだこのリーグのオールスターだと思っている」

ロケッツの今シーズンは、ジェームズ・ハーデンに台無しにされた。彼にも言い分はあるだろうが、自分中心のチームを長らく作ってきた球団を見捨て、最悪の形で出て行ったことに変わりはない。ロケッツは予期せぬチーム解体を強いられ、屈辱の20連敗を経験して、15勝46敗とリーグ最低の勝率に沈んでいる。

そのロケッツにまた悪いニュースが舞い込んだ。ラッセル・ウェストブルックとのトレードで加入し、チームを引っ張ってきたジョン・ウォールがハムストリングを痛め、今シーズン終了となる可能性が高いと『ESPN』が報じている。

4月23日のクリッパーズ戦でウォールは太ももに違和感を感じていた。ただ、強い痛みがあるわけではなく、翌日のナゲッツ戦は連戦の2試合目だったためもともと欠場が決まっており、中3日の休養で回復すると本人は考えていたが、実際はそうではなかった。

クリッパーズ戦を終えた会見でウォールは、「自分がまだこのリーグのオールスターだと思っている。健康でさえあれば、最高の相手とも戦えると感じている」と発言している。

ウィザーズからロケッツへと移籍して再起のシーズンを迎えたウォールは、ここまで40試合に出場。20.6得点は悪くない数字だが、フィールドゴール成功率40.4%、6.9アシストはキャリア最低の数字。これまであまり打たなかった3ポイントシュートを5.3本も打つようになったが、成功率は31.7%と低い。

2018年の年末にプレーしたのを最後に、かかとの手術を行い、リハビリ期間中に自宅で転倒したことでアキレス腱を断裂。キャリアの最盛期を手術とリハビリに費やした後の復帰というだけでも大変なのに、沈みゆくロケッツを何とか支えようとした結果が、シュート確率の低下を招いている。

それでもヘッドコーチのスティーブン・サイラスはウォールへ全面的な信頼を寄せている。それは彼のリーダーシップが唯一無二のものだからだ。「彼は持っているすべての力をチームのために出し尽くそうとする。ハドルを組めば最初に発言するのは彼で、みんなをまとめてくれる。彼がどんな経歴を持ち、この数年で何を経験してきたかのストーリーにも意味がある。ウチのようなチームにとって、彼がいてくれることには大きな意味がある」

今シーズンのウォールは好不調の波が激しく、コンスタントにプレーするのも難しかったが、調子が良い時にはかつてと変わらぬ爆発的なスピードを見せていた。大ケガをした選手が、復帰1年目は苦しむも2年目に本調子を取り戻すケースは多い。ウォールもそうなってほしいものだが、再びケガに見舞われてしまった。

ウォールは自分自身のミッションについてこう語っている。「今シーズンはコートに戻り、自分にまだ多くの力が残っていると人々に示すことが目標だった。次の目標は、身体を万全の状態に保って82試合のシーズンを戦うための準備をすることだ。この夏はそのために費やすつもりだよ。2年間プレーしていなかった去年の夏は、ワークアウトやピックアップゲームでどれだけやれるか試し、自分を追い込むことが目標だった。でももう違う。目標はチームの勝利に貢献することなんだ」

今シーズンは思うようにいかないことが多かっただろうが、それでもプレーできなかった過去とは決別し、再起の重要な一歩を踏み出すことはできた。強烈なリーダーシップを発揮し、コミュニティでの存在感もあるウォールは大ベテランのように感じられるが、まだ30歳だ。大ケガを乗り越えて完全復活するチャンスはまだ大いに残されている。