Black Lives Matterを主題とするタイムリープもの
『隔たる世界の2人』(原題:Two Distant Strangers)がアカデミー賞の短編実写映画賞を受賞した。
2018年のアカデミー賞ではコービー・ブライアント制作の『Dear Basketball』が短編アニメーション賞に輝いているが、この『隔たる世界の2人』はNBA選手のケビン・デュラントとマイク・コンリー、2007年のNBAドラフトの同期2人がエグゼクティブ・プロデューサーとして制作にかかわっている。
『隔たる世界の2人』は白人警官に黒人青年が何の罪もないのに殺され、そのたび朝に目覚める瞬間に戻るタイムリープもの。抵抗しても、対話しても、逃げても、外に出ないようにしても殺されることの繰り返しは、ジョージ・フロイド氏殺害事件をきっかけにBlack Lives Matter運動が盛り上がっても、同じ惨劇が繰り返される現実を映画に落とし込んだものだ。
警官に押さえつけられ「息ができない」と言いながら殺される、部屋を間違えて突入してきた機動隊に勘違いで殺される、といったシーンは、実際に起きた事件をモチーフにしたものだ。それでいて映像と音楽はポップで、だからこそ終わりなく繰り返される悲劇が日常のすぐ近くにあることを感じさせる。それでいてエンタテインメントとしても上質に仕上がっていたことが受賞の理由だろう。
アカデミー賞にノミネートされた時点で、デュラントは「このプロジェクトが始まってすぐに参画を決めた。脚本を読んで、僕たちはすぐにこの作品にかかわり、完成させたいと思ったんだ」とコメントしている。
『隔たる世界の2人』は32分の短編で、NETFLIXで配信中だ。