渡邊雄太

評価されない時期の苦しみも「自分には努力しかなかった」

ラプターズと正式契約を結んだ渡邊雄太が、4月20日にチームのオンライン会見に登場した。契約について渡邊は「2ウェイで結果が出ずに苦しんだ時期もある中で、目に見える結果がもらえるのはすごくありがたいし、モチベーションになる。素直に喜びたい」と語る。

2ウェイ契約でNBA3シーズン目。いつ契約を切られてもおかしくない状況の中で、渡邊は努力を続けることでNBAの厳しい競争の中で生き残り、ここに来てチームのスタイルと自分のバスケットが噛み合ったことでスタッツ面でもプレーの印象の面でも評価を上げて、正式契約を勝ち取った。

プレータイムがもらえず、自分の実力をアピールする場がなかったり、ケガが相次いだりと、苦しい時期は決して短くなかった。努力は必ず報われるとは限らない。それでも努力し続けられた理由を問うと、渡邊は「最終的に、それしか自分の中に残っていなかった」と言う。

「努力は報われるとは成功した人が言えることで、努力してもなかなか結果が出ない人は当然いるし、僕もそういう時期が続いたこともあります。過去3年間こういう世界にいて、それなりの努力で大活躍している選手を何人も見てきて、世の中不公平だと感じることが正直すごくあったんですけど、じゃあ自分はそういう選手に比べて才能があるわけでもないし、身体が強いわけでも走るのが速いわけでもジャンプ力が高いわけでもない。自分に何が残されているかと考えた時に、自分には努力しかなかったので、最終的には一番シンプルなところに戻りました」

気持ちが折れそうな時期がなかったわけではない。そこで力になったのは身近な人たちの存在だ。「両親の存在はすごく大きくて、僕がどんな状況でも第1のファンとして常に応援してくれましたし、親友や日本時代の恩師を含め、常に僕のことを信じて、今シーズンだけでもすごく大きな波がある中で、自分がダメな時でも僕を信じてサポートしてくれた人間が僕の身近にいたことが支えになりました」

そしてもう一つは「メディアを利用した」と、渡邊は笑いながら振り返る。「自分自身の中で奮い立たせるのが難しい時期があったので、こうやって偉そうに皆さんに『自分は努力してますよ』と言うことで(笑)、自分が努力するしかない状況を作ってしまう、ということはやっていました。自分自身にハッパをかけて、僕は口だけの人間は大嫌いで、自分はそうはなりたくないので、言ったからにはやれよ、と自分に言い聞かせてやっている時期はありました」

渡邊雄太

自分のやってきたことを信じてコート上で出していけば結果がついてくる

正式契約になったことで、年俸もアップ。「下世話な話ですが……」とおカネの話を振ると、「僕はもともとそんなにお金も使わないですし物欲もなくて、何を買おうとはないんですけど、お金が上がったイコール評価が上がったと言えると思う」と、その意味でも今の状況を歓迎している。

来シーズンの契約は条件付きで、保証されたわけではないが、今の彼がモチベーションに事欠くことはないし、自信にも満ち溢れている。「ケガ人が帰ってきた時にプレータイムがもらえる保証はないですし、来シーズンの保証もない中で、自分がまだまだやれることは見せていかなきゃならない。でも自分のプレースタイルを変える必要は一切なくて、自分のやってきたことを信じてコート上で出していけば結果がついてくるし評価されるのは自分で証明してきたので、あとはそれを続けるだけだと思います」

シーズンは終盤戦を迎えているが、「ベンチから出て流れを変える選手になって、チームの勝ちに繋がるプレーを与えられた時間でやれる選手になりたい」という渡邊の、さらなる活躍に期待したい。