ケガからの復活だけでなく進化も果たしたケンバ・ウォーカー、セルティックスの個性を生かし上昇気流に乗せる

ケガからの復活だけでなく進化も果たしたケンバ・ウォーカー、セルティックスの個性を生かし上昇気流に乗せる

2021/04/19 07:30
ケンバ・ウォーカー

「時にはそれを乗り越えるメンタルの強さが必要だ」

セルティックスは現地4月17日に行われたウォリアーズ戦に競り勝ち、これで4月に入って8勝1敗と調子を上げている。『ゾーン』に入ったステフィン・カリーがタフショットを決め続け、マークに付いたグラント・ウィリアムズにとっては悪夢の夜だったことだろう。それでも47得点を挙げたカリーに対してジェイソン・テイタムが44得点をマーク。一歩も引かない戦いぶりで勝利をつかんだ。

今シーズンのテイタムは新型コロナウイルス感染で欠場し、ようやく100%の力を発揮できるようになった。だが、今のセルティックスの好調ぶりはそれだけでは説明できない。テイタムとジェイレン・ブラウンの若き両エースが万全だった序盤もチームは苦戦を強いられていた。今、本当の意味でチームを上昇気流に乗せているのはケンバ・ウォーカーだ。

NBAキャリア10年目のケンバは、昨シーズン途中に膝を故障した影響が長引いている。ダッシュするにもストップするにも、膝の状態が悪ければ彼が必要とするキレと精度が出ない。昨シーズンはプレーオフ直前に復帰したが、最後まで本調子は取り戻せなかった。今シーズンも連戦の2試合目の出場は避け、調子を確かめながらのプレーが続いていた。

30歳の彼はまだまだ第一線で活躍できるはずだが、膝を痛めたことで無理が利かなくなった。セルティックスに来て満足な結果を出せないために、エース失格と見なされるどころか、トレード候補に挙げられもした。だが、ここに来てケンバはようやく最適なバランスを見いだしたようだ。4月に入ってシュートアテンプトとフリースロー獲得数が減少。それに伴い得点が減った一方で、アシストは急増。これがケンバの新たなスタイルだ。

ホーネッツ時代の彼は、NBAでも屈指のピック&ロールの使い手だった。味方のスクリーンを利用してフリーになり、3ポイントシュートやミドルジャンパー、加速してレイアップに持ち込むなど、自らのフィニッシュで得点を量産してきた。だが今の彼はよりプレーメークを重視し、ツーメンゲームでの打開ではなくチーム全体を動かすようになっている。

セルティックスではテイタムもブラウンも、マーカス・スマートもピック&ロールを使う。ケンバだけが攻めの起点だったホーネッツとは違い、この多彩さが相手にとって脅威となる。トップ・オブ・ザ・キーは彼の職場だが、そこを仲間に任すことも増えた。今まではほとんど打つことのなかったコーナースリーが増えているのは、彼がパスを受ける側に回るようになった結果だ。膝の状態を気にしての変化がきっかけかもしれないが、今はそのスタイルが彼に馴染んだ。周囲もそれに慣れたことで、セルティックスのオフェンスは大きく動き始めた。

ウォリアーズ戦に話を戻すと、ケンバは終盤の勝負どころでターンオーバーをせず、チームメートとボールを動かしてオフェンスを組み立てた。絶好調のテイタムにボールを多く預けるのはもちろんだが、バランスの良い配分も意識してウォリアーズ守備陣に的を絞らせないインテリジェンスが光った。

1点ビハインドで迎えた第4クォーター残り1分、スマートの決めた3ポイントシュートは、今のセルティックスの好調ぶりを示す一発だった。スマートがオフェンスリバウンドを奪取してボールを回し、再び彼にボールが戻って来る。直近の10試合での3ポイントシュート成功率39%のスマートを捨てていいはずはないが、ウォリアーズのディフェンスは一度振り切られてしまうと、もうスマートのチェックに行く余裕がなかった。スマートはゆっくりと狙いを定めて、さらに一呼吸置いてから逆転のシュートを沈めている。

そして残り25秒、今度はケンバの好調ぶりを示す一発があった。ディフェンスとの1対1の駆け引きから、ステップバックでの3ポイントシュートを沈めて116-111とリードを広げたシーンだ。プレーメーカーとしてパスワークの中心となることにシフトしても、必要であればクラッチシュートを決める力をいまだ持つことをケンバは示した。

試合後の会見でケンバはこのシュートについて「他に選択肢がなかったからだ」と自ら解説し、意識の上ではあくまでパスを優先していたことを明かした。「パスを出す相手は止められていて、ショットクロックも残り少なかった。プレーメークを考えていたけど、これは自分で打つべき場面だと判断した」

膝の状態と折り合いを付けながら調子を上げていることについて、ケンバはこう語る。「明確に乗り越えたきっかけがあったわけじゃないけど、メンタルの部分が大きいと思う。膝に問題を抱えていては良い感覚を得られない。調子が良くても、過去の経験から『この動きをすると膝に痛みが出そうだ』というのは分かる。でも、時にはそれを乗り越えるメンタルの強さが必要だ。今は良い感じでプレーできているよ。これからも気分良くプレーするための努力を毎日欠かさないつもりだ」

セルティックスはトレードデッドラインにビッグマンのダニエル・タイスを放出。これを機に伝統的な2ビッグマンからスペーシングをより重視するスタイルへとシフトしている。フロアバランスを整え、アタックするスペースができれば、テイタムとブラウンのオフェンス能力はより発揮できるようになる。ただ、そのスタイルがどれだけ機能するかは、ケンバが担う部分が大きい。

今シーズンのセルティックスは調子が上がらず、3月末まで勝率が5割を切っていたが、最適なバランスを見いだした今のチームがここからさらに進化するのだとしたら、1カ月後には東カンファレンスのトップにいるシクサーズとネッツを脅かす存在になりそうだ。

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