チームのバランスを新たに見いだす必要がある
ケビン・デュラントを獲得して『スーパーチーム』を結成したが、それを心から祝福しているのは純粋なウォリアーズファンのみで、あとは敵だらけ。NBAを代表する4人のスター選手が、キャリア全盛期に同じチームでプレーする状況は、2010年のヒートに酷似している。
レブロン・ジェームズ、ドウェイン・ウェイド、クリス・ボッシュが同年にフリーエージェントとなり、3人は優勝という目的のためヒートに集結した。『スリーキングス』と呼ばれたチームは、優勝以外は失敗という難題に向き合い、2010年から4年連続ファイナル進出、12年と13年に2連覇という結果を残した。そして2014年、ジェームズが古巣キャバリアーズへの復帰を決め、一つの時代にピリオドを打った。
ヒートと同様に、新ウォリアーズが短命という意見もある。確かに、4人ともマックス契約を得るに値することを考えれば、サラリーキャップの都合上、全員と同時期に満額の契約を結ぶのは難しい。
だが、それは先の話。当面、ウォリアーズが立ち向かうべきは昨シーズンの成績だ。73勝9敗という年間最多勝利記録の更新、NBA新記録の開幕24連勝など、打ち立てた記録は枚挙にいとまがない。もちろん、今シーズンも十二分に優勝を狙えるだけの戦力を備えている。
エースのステフ・カリーは、2016年のプレーオフ中に足首とヒザを故障したが、治療を優先するためにリオ五輪出場を断念した。『スプラッシュブラザーズ』の相棒クレイ・トンプソン、ドレイモンド・グリーン、そしてデュラントはアメリカ代表として五輪に参戦し、疲労の蓄積が懸念されるが、3人ともまだ若く大した影響はないだろう。
ただ、アンドリュー・ボーガット、ハリソン・バーンズ、マリース・スペイツといった『チームを支えた黒子プレーヤー』を失ったことで、適切なチームのバランスを新たに見いだす必要がある。
「優勝以外は失敗」という言葉では足りない
トレーニングキャンプ開始まで1カ月を切った今、ウォリアーズに最も必要なのは時間だ。一昨シーズンの優勝メンバーとほぼ同じ面子で臨んだ昨シーズンとは大きく異なり、このプレシーズンに新たなメンバーで新たなチームプレーを構築しなければならない。
ウォリアーズGMを務めるボブ・マイヤーズも、シーズン序盤の苦戦を覚悟していることを『KNBR』の番組に出演した際に語っている。「ケミストリーの構築には時間がかかる。1日や1週間、1カ月で作られるものではない。チームには過去最大の期待が寄せられている。NBA優勝チームとして開幕を迎えた1年前よりも期待は大きいだろう。球団としては常に勝利を目指すべきだが、苦戦したり、連敗を喫することもあると思っている」
だが、もし仮にシーズン序盤で2敗、3敗と負けた時、「想定の範囲内」として平静を保っていられるだろうか。メディアは騒ぐ。世界中のバスケファンが『スーパーチーム』のつまづきを見逃しはしないだろう。「開幕24連勝した昨シーズンのチームのほうが強かった」という論調になり、事細かに弱点を分析されるのは目に見えている。
ウォリアーズはそんなプレッシャーにも向き合わねばならない。「優勝以外は失敗と見なされる」などという言葉だけでは足りないほど、アプローチが難しい開幕となるのだ。
ショットブロッカー、パサーとしても優れていたボーガットが抜けてできた穴は決して小さくないだろうが、粘り強いディフェンスが持ち味のザザ・パチューリア、昨シーズンはスパーズで求められた役割を高い水準でこなしたデイビッド・ウェストの加入はプラスだ。昨シーズン途中から加入したアンダーソン・ヴァレジャオも、プレーこそ地味だがハートの強さを全面に押し出し、チームに勢いを与えてくれる。
デュラントの加入が最大のプラスとなるのは、相手がディフェンスでスイッチを多用してきた時だ。昨シーズンは対戦相手にスイッチを多用され、効率良く点を決められない試合もあった。デュラントには1対1から打開する力もあり、シュートレンジも広いため、いかなる状況でもボールを集められる。
残す難問は、カリー、デュラント、トンプソン、グリーンの役割分担だが、これもマイヤーズが指摘する通り、時間が必要になる。昨シーズン下位に終わったチームとの対戦が比較的多く組まれている前半戦でチームの形を見いだせればよい。真価が問われるのは、昨シーズンのプレーオフ進出チームとの対戦が続く来年の1月以降だ。