RJ・バレット

終盤の猛攻でオーバータイムに持ち込み、グリズリーズを撃破

第4クォーター残り6分の時点で93-106。ジャ・モラントを中心としながらもチームでシュートチャンスを作り出すグリズリーズに対し、ニックスはエースのジュリアス・ランドルがシュートタッチ不調で、他の選手がそれをカバーすることもできず、苦しい戦いを強いられていた。しかし、ニックスは最後まであきらめずに戦い続け、チャンスを待った。

6点ビハインドの第4クォーター残り1分、ランドルが強引なアタックからバスケット・カウントの3点プレーでチームを勢い付けると、ここからRJ・バレットが大仕事をやってのける。ランドルが再び強引にリムを狙うと見せかけて右コーナーで待つバレットにパスを送ると、バレットは冷静にシュートファウルを誘い、フリースロー3本を沈めて同点とする。その後、グリズリーズに再びリードを許すも、バレットはチャンスを狙い続けていた。

残り15秒、決めれば3点差となるフリースローをヨナス・バランチュナスが外す。このリバウンドを拾ったバレットはコースト・トゥ・コーストでリムへと一直線。モラントがシュート前に身体を寄せる最善のディフェンスを行ったのだが、それでもバレットはバランスを崩すことなく、同点シュートを決めた。

クラッチタイムに同期のライバルであるモラントとの1on1を制した得点が、オーバータイムのバレットにさらなる自信を与えた。先ほどの同点シュートと同じようなアタックから、今度はディロン・ブルックスのディフェンスをかわして得点を奪い、同点で迎えた残り1分15秒には、その前のファウルを誘った3ポイントシュートと同じような形で、強引なアタックでディフェンスの注意を引き付けたランドルからのアシストを受け、右45度からの3ポイントシュートを決めている。

ここで得たリードを守り切り、ニックスが133-129で見事な勝利を収めた。終盤の逆転劇を主導したランドルとバレットが目立ったが、20得点のイマニュエル・クイックリー、ともに19得点のデリック・ローズとアレック・バークスとセカンドユニットが悪い流れの中でチームを支えたことも見逃せない。ヘッドコーチのトム・シボドーは勝因を「忍耐力」の一言で表現している。

好調ではあるが直近の5試合は1勝4敗で、うち3敗は2点差以内で負けており、東カンファレンス8位に転落していたニックスにとって、忍耐力を見せた上での勝利は非常に大きい。バレットも「最近の試合でも全員で全力でプレーしていることに変わりはなかった。ずっとその姿勢を続けてきたからこそ、今日のチャンスが訪れたんだ」と語る。

今シーズンのバレットは、躍進するニックスでランドルに次ぐ17.5得点をマーク。この試合でもトリプル・ダブルを記録したランドルに対し、彼は純粋なスコアラーであり、チームにより貢献するには得点をもっと伸ばしたい。2019年のドラフト1巡目3位指名の彼は、ルーキーイヤーからエース級の活躍を見せたが、全体1位のザイオン・ウイリアムソン、2位で新人王となったジャ・モラントの後塵を拝している。リーグの次期スター選手と見られるザイオン、グリズリーズの絶対的エースであるモラントに負けない活躍が望まれるが、彼自身は「彼らの数字や成功はどうだっていい。僕の価値を示すのは、僕の試合であり僕のプレーだ」と言う。

そんなバレットに周囲も信頼を寄せている。シボドーは「自信に満ち溢れていて、ミスをしても動じない。そこが良いところだ」と語り、ランドルは「ノビノビとプレーして、驚異的な成長を見せているよ」と、2年目のバレットについて語る。

低迷が続いたニックスにとっては飛躍のシーズンとなっているが、彼らは貪欲に『もっと上』を目指している。2年目のRJ・バレットがどこまで駆け上がるかは、ニックスの成績を大きく左右する要素となりそうだ。