シアトル発レポート 渡嘉敷来夢「ストームへの凱旋」

2016/09/05
NBA&海外
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文=小林まりを 写真=Getty Images

『ジャパンナイト』にシアトル在住の渡嘉敷ファンが集結

8月31日、シアトル・ストームのホーム、キーアリーナでダラス・ウィングス戦が行われた。この日は『ジャパンナイト』と称され、シアトル在住の日本人コミュニティーを応援、盛り上げようという主旨で多くの日系人または日本人が観客席を埋めた。

もちろんメインイベントは日本代表であり、ストームで活躍中の渡嘉敷来夢のプレーを見ることであり、中には日の丸の旗や、「らむ」のポスターを振ったり、揃いのはっぴを着て応援する観客もいた。もちろん地元シアトル人も試合前の練習から「RAMU!」を連呼し、こちらに振り向いてもらおうと必死だ。試合直前には渡嘉敷の今までの貢献を称える花束贈呈があり、アリーナはまさに『ジャパンナイト』に染まっていた。

78-66のストーム勝利で終えた試合後は、渡嘉敷の応援に駆けつけた、現在シアトル・レインFCで活躍している『なでしこJAPAN』の宇津木瑠美選手とともにファンを交えたQ&Aイベントが行われ、『ジャパンナイト』は大成功で幕を閉じた。

この日の来場者に配られたマッチデープログラム。渡嘉敷が大きく取り上げられる内容だった。

ディフェンス中心から攻守に大きく関与する存在へ

この日のストームはスー・バードの先取点を皮切りに高さとスピード溢れる攻めで得点を順調に上げていった。今年WNBAのMVPになるのではないかと噂のジュエル・ロイドの調子も安定しており、相手のディフェンスを潜り抜けては華麗なプレーを繰り広げていた。また、こちらもMVP候補の新星ブリアーナ・スチュワートはルーキーとは思えない集中力と落ち着きで、オフェンス、ディファンスともバランスの良い動きを見せ、着々と成績を残している。

第2クォーター、ストームが41-30と優勢な状況で渡嘉敷が登場した。開幕当初とは少し違ったポジョショニングで、ディフェンス中心型からオフェンスにも大きく携わっている姿が見えた。攻めの中心核ブリアーナがいない時間は自ら素早くゴール下へ走りポイントを狙いにいっている。またブリアーナと渡嘉敷の両選手がゴール周辺を陣取ることでオフェンスの幅をさらに広げていた。渡嘉敷がマークに付いていたダラス・ウィングス、長身(191センチ)のグローリィー・ジョンソンを7得点までに抑えた結果を見れば、渡嘉敷の存在でディフェンス力が数段上がるのが分かる。

プレータイム確保に苦労する今シーズンだが、先日は初のスタメン出場を果たし、評価は着実に高まっている。

「スーやブリアーナには絶対に負けたくなかった」

試合中には通訳を付けずコーチの指示に耳を傾け、チームメイトとの会話も難なくやり遂げており、これは大きな一歩だ。試合後はチームメートのカリーナ・ルイスと仲良く冗談を言い合っている姿も見え、チーム内での渡嘉敷の存在は確実に大きくなりつつある。

試合後のQ&Aでファンから「バスケをやっていて、壁にぶつかったらどう乗り越えるか」の質問に、渡嘉敷はWNBAでは自分のプレータイムの少ないこと、周りのレベルが高いことが現時点の自分にとっての壁だと答えた。また「壁を乗り越えた時に自分がレベルアップする、うまくなるためには壁は必要」と力強くメッセージを送っていた。

そんな壁にぶち当たりながらも渡嘉敷は常に世界を目指している。オリンピック出発前は「メダルを持って帰ってきます」と断言したが達成できなかったことを冗談まじりでファンに謝りながらも、「4年後に叶えられたらと思っています」と新たに宣言。すでに気持ちは4年後の東京オリンピックに向かっている。

中学から始めたバスケットボール。バスケが好きだという率直な気持ちでプレーを続け、誰にも負けたくない気持ちが日本国内から世界へ向けられた。リオ五輪で代表選手として対面したストームのチームメート、また敵チームとして対戦したアメリカ代表については「自分が日本代表として戦っている姿を見せたかった。同じチームメートにオリンピックで会うのは刺激になった。またスーやブリアーナには絶対に負けたくなかった」と笑顔でコメントした。

常に世界を目指している渡嘉敷は、そういった存在に魅かれ、また自分がその存在になることで自分をアピールし続けるのだろう。

最後にファンに対して「今日のような機会、世界を舞台に活躍している選手との機会を大切にしてほしい」と伝えた。きっとそれを渡嘉敷自身が実践し、日本代表として世界に通用する選手になり、東京オリンピックでファンとともに夢を追いかけるのだろう。