松井啓十郎

「試合の流れを読む力は他の選手以上にある」

京都ハンナリーズは名古屋ダイヤモンドドルフィンズとの第2戦に86-77で勝利し、対名古屋D戦の連敗を3で止めた。

この試合、大事な場面でシュートを決め続け、3本の3ポイントシュートを含む20得点を挙げた松井啓十郎のパフォーマンスは一際目立っていた。それは名古屋Dの梶山信吾ヘッドコーチが「松井選手に痛いところでシュートを決められてしまった」と敗因に挙げたことからも明らかだった。

「フリースロー以外はほとんど決めました」と松井が語ったように、最終クォーターは2回のシュートチャンスを確実にモノにし、フリースローを6本中5本成功させて10得点を固めた。まさに『ベテランの妙』と言えるプレーを見せた松井だが、「35歳ですけど身体はまだまだ動きます。こうやって20代の若い選手とやれるし、シュートもトップのほうでやれる自信はあります」と、ベテランの自覚はない。

それでも、経験豊富なベテランでないとできないビッグプレーも飛び出した。最終クォーター残り4分42秒、ジャスティン・ハーパーが3ポイントシュートを放った瞬間に飛び込み、オフェンスリバウンドを奪ってゴール下を決めた。京都はこの得点で点差を2桁に乗せ、オフィシャルタイムアウトを迎えた。

松井も「オフェンスリバウンドからのプットバックは20試合に1回出るか出ないかかのプレー」と話し、このように振り返った。「シュートを打った時に齋藤拓実がいたので、小さいしフィジカルもそこまでないので取れると思いました。ベンチも盛り上がってましたし、小川(伸也)さんがあれで勝ったと確信したって言ってました」

まさにベテランの観察眼が生んだビッグプレーだったが、これは松井が有利な状況を作り出すために、常にアンテナを張り巡らせている結果だ。「何がアドバンテージになるかを常に見ています。試合の流れを読む力は他の選手以上にあると思っていて、試合でハドルを組んでいる時にプレーコールをポイントガードにアドバイスすることもありますし、タイムアウト中にボードに書いたりする時もあります」

松井啓十郎

「少しでも勝率を上げて、5位でシーズンを終えたい」

対名古屋D戦の連敗を3で止めた京都だが、敗れた過去3戦はいずれも4点差以内の惜敗とあって、今回の勝利の喜びはひとしおだ。また、チームメートである満田丈太郎の古巣であったこともモチベーションアップに繋がったという。

「丈太郎の古巣ということで、古巣のチームに負けたくないって気持ちはどの選手も持っていると思います。丈太郎的にも4連敗でシーズンを終えたくなかったと思うし、今日はみんなが力を合わせて昨日の借りを返せました。名古屋さんもチャンピオンシップが懸かっていて、連勝したかっと思いますし」

京都は現在16勝31敗と大きく黒星が先行しており、チャンピオンシップ進出は絶望的だ。目標を見失うことでモチベーションを保つのは難しくなり、プレーに悪影響を及ぼすこともあるだろう。だが、小川ヘッドコーチが「僕たちはプロのチームで、常に一生懸命プレーをして、身体を張ってルーズボールに飛び込む。そういうところにお客さんはお金を払ってくれていると思うので。チャンピオンシップがある、ないにかかわらずプロとしてやるべきことをやるだけです」と言うように、京都はプロとしての在り方を体現し続けている。

もちろん、松井も最後まで戦い抜くことを大事にしている。だからこそ、「島根が5位で、滋賀と信州と並んでいる状況です。少しでも勝率を上げて、5位でシーズンを終えたいと思っています」と語り、目先の1勝にこだわるのだ。

11月7日以来の先発起用に見事に応えた松井は「ここ最近は誰が出てもディフェンスが維持できています」とディフェンスの向上に手応えを感じている。ファンはこうしたチームの成長を見ることに喜びを感じ、選手を後押しする。こうした正のサイクルを回す中心に松井はいる。