「何年もいた場所から離れるのは辛い」
若手中心の再建時期を迎えたマジックは、2021年のトレードデッドラインにアーロン・ゴードン、エバン・フォーニエ、ニコラ・ブーチェビッチという主力のトレードを決断した。この中でも在籍年数がチーム最長の9年だったブーチェビッチは、トレードの決定を受けて球団とファンに感謝の気持ちを伝えるメッセージをソーシャルメディアに投稿している。
そしてブルズの入団会見でも、彼はマジックで過ごした時間を振り返って感傷的になった。「僕にとって一番辛いのは、マジック時代に築いた人間関係から離れることだ。9年間で素晴らしい人たちと出会うことができて、本当に感謝しているよ」
マジックに在籍した9年でオールスター選手へと成長したブーチェビッチには、エースのザック・ラビーンを軸に強豪再建を目指すブルズの主力として大きな期待がかかる。ブーチェビッチにとっても、勝利が求められる環境に身を置くことで、新たな刺激と成長の機会を得られるはずだ。
だが、彼は自分を育ててくれた球団への感謝を忘れない義理堅い男であり、その感情はまだマジックへと向いていた。会見では何度となく涙を堪え、水を飲むなどして平静を保とうとしたが、湧き上がる感情を抑えられなかった。「子供だった僕を、大人に成長させてくれた。僕のこの様子を見たら分かってもらえると思うけど、何年もいた場所から離れるのは辛い」
こう別れを惜しんだブーチェビッチだったが、現地3月27日のスパーズ戦でブルズでのデビューを果たした。チームは104-120で敗れたが、トーマス・サトランスキーとのピック&ロールからの得点やキャッチ&シュートでの3ポイントシュートを沈めるなど、32分の出場でゲームハイの21得点と9リバウンド3アシストを記録。ディフェンスのローテーションミスなどもあったが、チームシステムへの慣れの問題は試合をこなしていくことで解決できる。
ブーチェビッチ自身も手応えを感じており、試合後の会見でこう語った。「チームメートを見つけて、コート上で起きているすべてのことを感じ取ろうとしていた。初めての試合にしては良かったし、試合が進むにつれて感覚をつかむことができたよ」
現在、東カンファレンス10位のブルズがプレーオフ進出を果たすためには、ブーチェビッチの活躍が必要だ。