ラウリー・マルッカネン

文=神高尚 写真=Getty Images

新たなチームの骨格を形成した若手たち

2017年のドラフトで最大の衝撃は、その後に大活躍する多くのルーキーたちではなく、ブルズがジミー・バトラーをトレードで放出したことでした。これを皮切りにブルズはドウェイン・ウェイドやラジョン・ロンドといったベテランとの契約も打ち切り、さらにはシーズン中にニコラ・ミロティッチもトレードで放出。再建へと舵を切りました。それから1年が経った現在、チームの再建計画は順調に進んでおり、ブルズは新シーズンで東カンファレンスの台風の目になる可能性を秘めています。

チームの中心になったのはバトラーとのトレードで手に入れた3人の若手です。その中でもラウリー・マルッカネンはシーズンを通しチームの中心として活躍し、オールルーキーファーストチームに選ばれました。ドラフト時はヨーロッパ出身らしく「シュートの上手さはあるが、線の細いビックマン」という印象でしたが、シーズンが始まると3ポイントシュートだけでなく、インサイドへも果敢にアタックして得点を稼ぎ、リバウンドでもベン・シモンズに次いでルーキーで2位になるなど、多彩な能力を示しました。

爆発的なスピードや強烈なパワー、絶対的な高さといった身体能力でのインパクトには欠けるマルッカネンですが、そのプレーは一つひとつの動作が非常にスムーズで、思わず魅入ってしまう美しさがあります。ボールをキャッチしてからシュートまでの動作、ドリブルからパスに切り替える動作、ポストアップからのターンシュートあるいはスピンムーブに繋ぐ動作、どれをとってもムダがなく、非常に滑らかに次の動作に移行していきます。まるでディフェンスがいないかのような美しいムーブは、守る方からしても次のプレーを読むことが難しくなります。

ティンバーウルブスで失意の1年目を味わったクリス・ダンは、ドライブ不足のチームの中で爆発的な運動能力を生かして切り込み、12月には平均8.0アシストを記録するなどポイントガードとして引っ張りました。途中、脳震盪で離脱するなど不運に見舞われたもののチームオフェンスの中で変化を付けるだけでなく、ディフェンス面での貢献も期待を抱かせました。

大ケガからの復帰となったザック・ラビーンはプレータイムの制限もあり24試合の出場に留まったものの、スピードと得点力で非凡なところをあらためて示しました。超人的なダンクに目が行きがちですが、シュート精度やターンオーバーの少なさも特長です。チームは完全復活への確信を得たのか、オフに4年の大型契約を結んでいます。

バトラーとのトレードで得た3人の若手がそれぞれのポジションで中核となりつつあり、他にも多くの若手にプレータイムを与えたブルズは1年という短い期間でチームの新たな骨格を形成しました。

そして今オフ、ジョン・パクソン副社長は「サイズとシュート力のあるウイングを獲得したい」と、チーム全体のサイズアップを補強計画に挙げました。その宣言通りドラフトでは7位でヴェンデル・カーターjr、22位でチャンドラー・ハッチソンと2人のビックマンを指名。特にカーターjrはサマーリーグでセンターとしてプレーし、9.4リバウンド、2.6ブロックとインサイドでの強さを発揮しただけでなく、3ポイントシュートの成功率も40%を上回り、攻守両面で即戦力になれることを示しました。ハッチソンも荒さは残るものの3ポイントシュートを50%決めて期待を抱かせました。

ブルズはイーストの台風の目になれるのか

ブルズの補強はそこで終わらず、フリーエージェントでジャバリ・パーカーの獲得に成功します。ケガに悩まされ続けてきたパーカーですが、サイズに似合わない高いハンドリング技術とスピードを併せ持ち、昨シーズンは3ポイントシュートの確率も向上しました。ペリメーターディフェンスには課題があるものの、パクソンが希望した通りの能力をもつウイングです。

これでブルズはまだ再建段階のチームでありながら、フロントコートにサイズと機動力を併せ持ち、3ポイントシュートも打てる厚い選手層を実現しました。

ブルズはリーグで最も運動量の多いオフェンスを採用しており、厚い選手層でプレータイムをシェアし、試合を通してサイズの優位性を保つ戦い方が可能になります。同時に若手たちの競争意識を高め、個人の成長も促すでしょう。

また昨シーズンはディフェンスが機能しなかったものの、実はディフェンスリバウンドの確保率はリーグ2位と高く、インサイドに強さを見せる一方で3ポイントシュートを防ぐことができませんでした。そこでアウトサイドのディフェンス力の高い選手を集めるよりも、サイズと機動力のある選手を集め、スイッチディフェンスを容易にする方法を選びました。サイズのある選手が最後までシュートチェックに行きアウトサイドでプレッシャーをかけるとともに、インサイドでのミスマッチも防ぐ狙いです。若い選手たちがディフェンスシステムを理解し、ローテーションをしっかりできるようになるには時間がかかるでしょうが、ディフェンスでも厚い選手層を生かして激しくチェイスしてきそうです。

ヘッドコーチのフレッド・ホイバーグは特定の選手の能力を中核に置くのではなく、全員が同じ役割を果たし連動するシステムを好みます。高度な戦術理解力と連携が必要で、機能するには時間がかかりますが、突破力のあるガード陣に、サイズとシュート力を併せ持ったフロントコートを揃えて、どんな相手に対しても全員で得点し守れるチームを作ろうとしています。

東カンファレンスはプレーオフに出られなかった7チーム中5チームがヘッドコーチを交代させており、まだまだ再建の初期段階にあるチームが多いのが現状です。それに対してブルズは個人の成長とチームとしての戦い方の徹底、それぞれに多くの課題はあるものの、衝撃だったバトラーのトレードから1年あまりで戦力とシステムの骨格が見えてきました。厚い選手層と特徴あるシステムを生かして、新シーズンの台風の目となりそうです。