トバイアス・ハリス「すべての試合が成長のステップになる」
『ビッグ3』を結成したネッツが注目を集める今シーズンだが、そのネッツを抑えて東地区首位を走り続けているのはセブンティシクサーズだ。ウィザーズ戦でエースのジョエル・エンビードが膝を痛めて戦線離脱した後も、チームは5勝1敗と変わらぬペースで突き進んでいる。
今のシクサーズは、ベン・シモンズとエンビードの両エースのうち、いずれかが欠ければ失速するチームではない。それどころか、エンビードだけでなくシモンズまで欠場した3月20日のキングス戦にも完勝している。さらに言えばここ3試合は平均12.9得点のシューター、セス・カリーも欠場しているが、チームは勝ち続けている。
この変化はどこから生まれたのか。一つは今シーズンから指揮を執るドック・リバースがこのチームのメンタルを変えたことだ。リバースは「以前は自分たちの役割を模索している最中だったし、ベストプレーヤーがいなくても勝てる、という信念を持つことが必要だった」と言う。
「今シーズンの過密日程を考えれば、ジョエルがいない、ベンがいない試合は必ずある。また彼らが出場しても高いレベルでプレーできないこともある。だから他のメンバーが成長しなければならない、とずっと言い続けてきた。そして今、チームはそうやって機能している。大事なのは『ジョエルとベンが活躍しない限り、自分たちは勝てない』という考えを彼ら自身が変えたことだ。今はもうそんなことは思っていない。それは勝つことで証明されている」
エンビードが抜けた後、得点面でチームを引っ張るのはトバイアス・ハリスだ。リバースの下ですべてのスタッツを向上させている彼は、インサイドの相棒であるエンビードが欠場しても自信を持ってプレーし続けている。
ハリスは自身の成長を「試合展開と僕自身のプレーをより注意深く見て、判断できるようになったこと」と説明する。「新しいラインナップと新しいプレースタイルになって、どんなセットプレーからどんなマッチアップを作り出せるか、できる限り分析しようとしている。すべての試合が成長のステップになる」
こうした勉強熱心な姿勢が試合でのパフォーマンスに繋がっている。ニックス戦ではオーバータイムの末に勝利したものの、ハリスはフィールドゴール18本中成功5本の20得点と、効率の悪さが目立った。それが2日後のウォリアーズ戦ではフィールドゴール18本中9本の25得点、成功率を2倍に引き上げて勝利の立役者になった。指揮官リバースは言う。「無理に自分で仕掛けないことをテーマにして、実際にパスやディフェンスでも活躍した。苦戦する試合は誰にでもあるが、そこからどう立ち直るかが大事なんだ」
ハリスはエンビード欠場というチームのピンチに奮起すると同時に、エースの早期復帰を切望している。JJ・レディックのyoutube番組に出演したハリスは、「相手チームの5人全員がジョエルのことを恐れて縮こまる」という表現でエンビードを称賛する。「昨シーズンは調子の波があったけど、今シーズンはチームが首位を走っていることもあって自信とやる気に満ちている。間違いなくMVPに値する選手だよ」
エンビードの復帰までにはまだしばらくかかる。その間にハリスを始め他の選手がステップアップし、万全になったエンビードが戻ってくれば、シクサーズは真の優勝候補となるはずだ。ダリル・モーリーがトレードデッドラインにどのような動きをするかも含め、今のシクサーズからは目が離せそうにない。