ENEOSサンフラワーズ

プレーオフに相応しい、意地と意地がぶつかり合う激戦

Wリーグのプレーオフセミファイナル、ENEOSとデンソーの第1戦は、両者の意地と意地がぶつかり合う激戦の末にENEOSが劇的な逆転勝利を収めた。

両チームともに強度の高いディフェンスを見せる中、デンソーは髙田真希を軸にインサイドを破り、ENEOSは3ポイントシュート3本を決めて巻き返す立ち上がりに。それでもほとんどの時間帯で先行したのはデンソーだった。髙田を休ませた第2クォーター開始からの3分半を無失点で切り抜けるとともに、赤穂ひまわりが個人でズレを作り出して3ポイントシュートとミドルジャンパーを連続で決めてリードを奪う。

それでも試合を通してENEOSは食らい付く。オフェンスが停滞する中で宮崎早織が2本の3ポイントシュートを決めて追い上げ、キャプテンの岡本彩也花、エースの宮澤夕貴による連続得点でENEOSが逆転。しかしデンソーも髙田が強引に仕掛けてバスケット・カウントをもぎ取り、本川紗奈生も3ポイントシュートで続いて再び逆転と譲らない。石原愛子の3ポイントシュートでENEOSが36-36と追いついて前半を終えた。

インサイドではデンソー、外角シュートではENEOSという差はあれど、お互いに相手の激しいディフェンスに手を焼きながらも積極的に攻め続けた前半を経て、後半に入るとデンソーが再び抜け出す。両者の差は積極性を保てたかどうか。ひまわりがオフェンスリバウンドから得点し、宮崎のミスを誘った稲井桃子のワンマン速攻が飛び出す。オフェンスではボールをシェアしながら誰もがペイントエリアに切り込み、オフェンスリバウンドにも飛び込む積極性を出して、そのリスクを背負いながらもハリーバックを怠らないことでENEOSのブレイクを未然に防いだ。

56-48とデンソーがリードして迎えた第4クォーター最初のプレーで、ENEOSのコミュニケーションミスからフリーになった髙田が3ポイントシュートを決めて点差は2桁に。ENEOSは運動量で負けている上に、オフェンスではインサイドで孤軍奮闘する中村優花の単調な1対1ばかりに。マッチアップする相手が髙田では、そう簡単に点は取れない。劣勢のまま時間は過ぎていった。

しかし『女王』はあきらめなかった。岡本彩也花は「正直ちょっとヤバい、というのが本音」と窮地に追い込まれた心境を明かしつつも、「前からついても足が動く選手が多いので、最初からプレッシャーを掛けた方がウチのリズムになると思った」と語る。

岡本彩也花

岡本彩也花「ここであきらめたら明日に繋がらない」

残り5分半で59-69。ここからENEOSの逆襲が始まる。高い位置からプレッシャーを掛けるディフェンスからブレイクが出るように。運動量で負けていたチームは、キャプテン岡本に引っ張られることで自分たちのスタイルを取り戻した。ボールに手を引っ掛けてもマイボールにならなかったり、逆にデンソーの仕掛けるオールコートプレスでボールを奪われたりと、すべてが上手くいったわけではない。それでも迷いを振り切ったENEOSは『女王』らしさを取り戻していた。

残り1分を切って、髙田のアタックを宮崎が足を攣りながら止めに入ってオフェンスファウルを引き出す。続く攻めでは2度のオフェンスリバウンド奪取と粘った末に宮崎のディープスリー成功へと繋ぎ、残り13秒で71-72と1点差まで追い上げた。デンソーは追い上げられながらも慌てずにリードをキープしていたが、やはり平静ではいられなかったのだろう。ここからのファウルゲームで、髙田がフリースローを2投とも落としてしまう。

ENEOSが最後の攻めを託したのは岡本だった。大きく動いて本川のマークを引きはがしてボールを受けた岡本は、そのままスピードで髙田を振り切ってリバースレイアップに行き、髙田からファウルを獲得。緊張する場面でのフリースロー2投をこちらはきっちり決めて逆転に成功し、最終スコア73-72でENEOSが初戦を勝利した。

絶体絶命の状況から逆転できた理由を岡本はこう語る。「単純に勝ちたいという気持ちがありました。途中でヤバいと思ったけど、ここであきらめたら明日に繋がらない。ここで負けられないという気持ちでずっと戦いました」

滅多に見ないほどの劇的な逆転勝利にENEOSのベンチは大盛り上がりだったが、会見場に来た時には全員が落ち着いていた。梅嵜英毅ヘッドコーチは「頑張って走って『女王』の意地を見せてくれた」と選手を称えつつも、デンソーが皇后杯の時からディフェンス面で大きく向上していたことに触れ、「リバウンドが取れずに自分たちが走れなかった。今日みたいなことをやれと言われても難しいので、ディフェンスを修正してリバウンドきちんと修正して臨みたい」と、明日の第2戦に向けて気を引き締めた。