ステフィン・カリー

「エネルギッシュに、そして楽しんでプレーすることができた」

ステフィン・カリーは圧倒的なパフォーマンスでNBAの主役に返り咲いた。昨シーズンはケガが相次ぎ、出場わずか5試合。チームも最下位に沈み、プレーオフ出場が途切れた。カリーにとっては6年連続のNBAオールスター出場が途切れた年でもあった。

どんな選手であっても、ケガによる長期欠場の後はパフォーマンスの低下が懸念されるもの。しかし今シーズン前半戦のカリーは35試合に出場し、平均34.1分出場で29.7得点と、ケガ以前の水準を上回るスタッツを残している。盟友クレイ・トンプソンは引き続き全休となる中、チームは19勝18敗といまだ本調子とはいかないが、カリー個人で言えば『完全復活』を遂げたと言える。

そのカリーにとって、NBAオールスターはここまでの復調を確認し、自信を取り戻す良い機会になったようだ。「僕にとっては大きな意味がある」と、オールスター本戦を控えた会見で彼は言う。

「昨シーズンはケガをして、新型コロナウイルスの感染が広がる中で、また高いレベルでプレーができるよう努力してきた。今回のオールスターには、チームや家族、支えてくれた人たちを代表して出場するつもりだったから、個人的にとても重要なんだ。出場できて当たり前だとは思っていないし、この機会を与えてもらったことに感謝している。オールスターは何度出場してもうれしいし、緊張するもの。今年は例年とは違うスケジュールだけど、一瞬一瞬を楽しむつもりでいるよ」

今回のオールスターはカリーにとって、自らの復活に対する祝祭の場だった。3ポイントコンテストでは28ポイントを決めたマイク・コンリーとの競争に。右コーナーからの最後のマネーボールを残した時点で27ポイント。カリーはこの1本を見事に決めてコンリーを逆転し、3ポイントコンテスト優勝を決めている。『ラストショット』についてカリーは「フォロースルーまでバッチリ決まった」と余裕の笑みを浮かべるとともに、「おかげで試合でもシュートタッチは良かった。すべてが上手くいった夜だ」と語る。

カリーは自身の言葉通り、NBAオールスターのすべてを楽しんだ。レブロン・ジェームズと初めて一緒にプレーしたことは大いに注目されたが、彼自身も「ずっとファイナルで対戦してきたレブロンと一緒にプレーするのは特別なこと。ロッカールームで楽しく話すことができて、良い経験になった」と語る。実際、レブロンが試合前に行うチョークトスを間近で眺めるカリーは、誰よりも楽しそうだった。

そしてカリーは、世界中のファンに新たな驚きを提供することも忘れなかった。今回のNBAオールスターで唯一やろうと決めていたプレーが、クリス・ポールとのアリウープだそうだ。彼はその経緯をこう明かす。「試合前にチームメートと会話する中で、僕とクリスは運動能力が低いという話になった。僕らはそれを認めたくなくて、クリスと『お互いにパスを出してアリウープをやろう』と決めたんだ。もうベテランだけど、自分の能力をきっちり示すことができて良かったよ」

カリーとクリス・ポールが連続でアリウープを決めたのは驚きだったが、決めた後にしばらくリングからぶら下がっていたのは、自分の身体能力を見せ付けるためのエンタテインメントだったというわけだ。

22分の出場で、8本の3ポイントシュート成功を含む28得点。カリーが所属した『チーム・レブロン』は170-150で勝利した。「エネルギッシュに、そして楽しんでプレーすることができた。素晴らしいオールスターになった」とカリーは総括している。

ステフィン・カリー

コート上での活躍だけでなく、カリーブランドとしても社会貢献も

また、今回はカリーが自身のブランドを立ち上げて初めてのNBAオールスターでもあった。本戦を前にした会見でカリーは「オールスターという輝かしい舞台で自分のブランドのシューズを履いてプレーできることは本当に素晴らしいことだし、謙虚に受け止めている。今回はオールスター用のシューズを用意しているんだ」と語った。

カリーは3ポイントコンテストでは3月8日の『国際女性デー』を記念して、女性のシンボルカラーの一つである紫を採用した『IWD』を着用。本戦では虹色のカラーをアクセントに配した『WISH FLOW』を履いた。

「僕のブランドの理念を世界中の人たちに伝えたいし、参加してほしい」とカリーは言う。スポーツを通して成長してきた自分の歩みを振り返り、その機会を誰もが得られる環境を作り出すこと。それがカリーブランドを立ち上げた目的だ。これまで子供たちを支援する様々な取り組みを行ってきたカリーだが、ブランドを立ち上げたことでその方向性はより明確になり、今まで以上に力を入れている。

今回、カリーブランドは『Good Sports』というチャリティー団体を通し、アトランタ市内の7つのバスケットボールプログラムをサポートした。それとともにカリーはオールスターでの1得点あたり1000ドルを『Good Sports』に寄付することを発表。カリーは28得点を決めたので、2万8000ドル(約300万円)が寄付されることになった。

NBAオールスターで完全復活をあらためて印象付けたカリーは、この先の戦いについて意気込みを語った。「達成したいことはたくさんあるけど、何かを証明しょうとは思っていない。達成と証明は似ているけど、微妙に違うんだ。僕のモチベーションは楽しむこと。バスケをするのが本当に好きだし、一番高いレベルでプレーできることに感謝している。もっともっと上のレベルを目指すけど、キャリアはいつかは終わるもの。健康で、前向きな気持ちを持っているうちは、プレーする喜びを感じていたい。それが僕のモチベーションなんだ。これからもチームメートと一生懸命に取り組んで、チャンピオンを目指すよ」