「古川選手が27点取っても74点しか取れないという現状がある」
秋田ノーザンハピネッツは週末に行われた滋賀レイクスターズ戦を1勝1敗の痛み分けで終えた。74-77で敗れた第2戦、「ミスが起こった時に、メンタル的にチームのトーンが落ちてしまう」と前田顕蔵ヘッドコーチが指摘したように、攻守ともに噛み合わず第2クォーターに10-26と大きく失速したことが敗因の一つとなった。
それでも、気持ちを切り替え臨んだ第3クォーターには同点に追いつくシーンもあるなど、粘り強さを見せて25-11と巻き返す力があることも証明した。最終クォーターにも何度も同点に追いつくシーンが見られたが逆転の1本が遠く、3点差の惜敗を喫した。
この接戦を演じる主役となったのが古川孝敏だ。最終クォーターだけで17得点を固め、キャリアハイとなる27得点を記録した。前田ヘッドコーチも「さすがだと思います。ああいう時間帯にシュートを決めきるのは非常に難しい中で、勝負強さを見せて助かりました」と古川への信頼を口にした。だが一方で「古川選手が27点取っても74点しか取れないという現状がある」とも語り、他の日本人選手の得点が伸びてこない状況に困惑している。
古川も「前半の相手のリードをあそこまで持ってこれたというのはプラスではあると思うし、これだけできる力がある」と後半のカムバックを評価しながらも、「悪い流れになった時でも我慢してディフェンスができるか。まとまりきれず、ああいう展開が続いてしまうと勝つのは難しい」と、冷静に現状を見つめた。
今シーズンの秋田は日本人選手の活躍が不可欠なチーム作りを推し進めてきた。日替わりでヒーローが誕生するそのスタイルで強豪チームも撃破し、2度の5連勝を達成するなど躍進を遂げた。しかし、2月以降の戦績は3勝7敗とここにきて失速している。古川はあらためてチームバスケで勝つことの大事さを訴えた。
「どれだけ自分たちのバスケットを遂行できるか。それができなくて他のことをやって勝ったり負けたりしても後がない。みんなの技術というよりは気持ちと理解度と共通認識が大切です。みんなが一つになって、チームで勝つことが大事」
「大事な時間帯は僕がやらなきゃいけない」
キャリアハイを更新した直後にもかかわらず、古川は「僕は0点でもいいんです」と言う。それは特定の選手に得点が偏るチームを目指していないことに起因する。
「そもそものバスケットがそれぞれの良さを出すためにどうするかというバスケットなので。良い流れができた中でシュートが入り、ディフェンスが激しくできる、それが自分たちの求めているバスケットなので、それができたら僕が0点だろうが関係ないです」
それでも、チームにはクラッチタイムを任せられる、いわゆる『ゴートゥーガイ』の存在が必要だ。第2戦の終盤、古川は躊躇なくシュートを打ち続けた。2本連続でシュートを外しても、味方がオフェンスリバウンドを拾い、再び古川へパスを送る。そして、古川は残り20秒で1点差に迫る3ポイントシュートを、3度目の試投で成功させた。「そこは自分がやらなきゃいけない。大事な時間帯は僕がやらなきゃいけないという気持ちを常に持っているので、それがパフォーマンスに出た」と古川は振り返った。
秋田はカディーム・コールビーが両膝膝蓋骨骨折の重傷を負い、戦線を離脱した。ともにチームトップとなる平均12.3得点、7.9リバウンドを記録する大黒柱を失ったことは非常に大きな痛手だ。古川も「身体を張ってオフェンスリバウンドもよく取ってくれた。繋いでくれる展開も多く、ゴール下にいてくれるだけで安心感があった」と語るように、秋田が目指すスタイルに欠かせない存在だった。
こうした緊急事態だからこそ、他の選手のステップアップが急務であり、古川が強調するチームバスケの体現が求められる。それらが実現でき、クラッチタイムで古川が抜群の勝負強さを発揮できれば、悲願のチャンピオンシップ進出も決して夢ではない。