大阪エヴェッサは、試合を重ねるにつれパフォーマンスを向上させていた。12月以降は宇都宮ブレックスに1勝1敗、千葉ジェッツに2勝2敗と優勝候補の強豪を相手に互角の戦いを繰り広げ、バイウィーク前にはリーグ上位の富山グラウシーズに連勝。西地区の順位で3位の名古屋ダイヤモンドドルフィンズまで1ゲーム差と迫っている。右肩上がりのチームを牽引するのが、ディージェイ・ニュービルだ。全米屈指の強豪カンファレンスに所属するペン州立大で大学4年時には平均20得点を挙げた点取り屋は、昨シーズンまでオーストラリアNBLで活躍。そして今シーズンに加入した大阪でも、得点とアシストでチームトップの数字を残している。Bリーグ5シーズン目にして初のチャンピオンシップ進出を目指す大阪。その大黒柱ニュービルに、ここまでの戦いぶりを聞いた。
「子供の頃はアレン・アイバーソンが憧れでした」
──まずは今のチーム状態について聞かせてください。
練習と試合を重ねるごとに良くなってきています。西地区3位でチャンピオンシップの出場権を狙える位置にいますし、今後を考えるとワクワクします。シーズン当初と比べるとケミストリーが高まり、よりチーム一体となって戦えるようになりました。また、若い選手たちがステップアップしています。守備におけるインテンシティが高まり、オフェンスでイージーシュートを打てる機会が増えています。試合終盤における遂行力も上がってきて、接戦をチームプレーで勝てる試合が増えています。
──ニュービル選手自身の出来はどう見ていますか。一度波に乗れば短い期間で一気に大量得点を挙げる爆発力があります。
ベストを尽くして良いプレーができているので、このまま続けていきたいです。ただ、調子が良いのは、チームメートがスクリーンをかけたりなど、自分がプレーしやすいように助けてくれているからです。そして、毎日ハードワークを続けている成果が出ています。自分が何点取るのか、短い時間で得点を量産している点について意識したことはなくて、試合に勝つことのみにフォーカスしています。それでも、チームが僕の得点を必要としていると感じた時にはステップアップしたいですね。
試合に勝つためにディフェンス、パス、得点とすべてを同じように重視していて、自分のことをスコアラーと捉えたことはないです。あえて言うならコンボガードですね。ただ、ここぞの場面で相手を仕留める『アサシン』ではありたいです。
──自分のプレーに影響を与えている選手はいますか。
トレイルブレイザーズのデイミアン・リラードです。プレースタイルだけでなく、オフコートでの振る舞いも好きです。フィラデルフィア出身なので、子供の頃はアレン・アイバーソンが憧れでした。みんなアイバーソンのようになりたがっていました(笑)。
「自分の能力を信じているし、新しい挑戦が好き」
──プロキャリアの最初はフランスでプレーし、すぐにオーストラリアのNBLヘ挑戦しました。今シーズンから大阪に加入した流れを教えてください。
プロ3年目でオーストラリアに行ったのは、それが自分にとってベストの選択だったからです。多くの友人たちもプレーしていて、素晴らしいリーグ、環境であることは分かっていました。海外の優れたリーグや選手を相手にしても自分が活躍できることを示すチャンスでした。オーストラリアは英語が母国語ですし、アメリカ文化と似ている点も多い。時差以外に大きな違いはないので適応するのは簡単でした。
昨年の夏、新型コロナウイルスの影響でチームとの交渉がなかなか進まない中でオファーをくれたチームの一つが大阪でした。いろいろな人に相談したのですが、その中にはジョシュ(ハレルソン)もいました。チーム、大阪の街、コーチについて彼がいろいろと教えてくれたことが、大阪入りの決断を後押ししてくれました。また、フィラデルフィアに住んでいた頃からの友人であるウェイン・マーシャル、スクーティ・ランダルは日本でのプレーが長く、どんなに良い場所か教えてくれました。
──新型コロナウイルスの感染が拡大していた状況で、新しい国、新しいリーグに臨むことへの不安はなかったですか。
自分の能力を信じているし、新しい挑戦が好きです。ハードなトレーニングをたくさん積んでいますし、このビジネスで必要なことをしっかりやってきています。だから、どのリーグでもインパクトを与えられると思っています。
──実際、Bリーグへの適応はスムーズにいきましたか。また、外国籍選手のオンザコートルールに戸惑うことはなかったですか。
Bリーグのレベルは高いですし、とてもフィジカルですが、適応に苦労はありませんでした。マネージャー、通訳、トレーナー、コーチと多くの人たちが助けてくれたおかげで、僕の仕事は本当にやりやすくなっています。コートに立てる外国籍選手が2人というのは、今までと異なる体験ですが、試合を重ねるたびにルールに適応できている手応えはあります。このルールによって、自分が不利を被っているとは思いません。僕は相手のビッグマンよりクイックネスで優位に立てるし、僕がビッグマンを守らないといけない状況になってもアイラ(ブラウン)、ジョシュ、ギャレット(スタツ)とコートにいる味方のビッグマンが助けてくれます。
また、遠征の移動時間が短くて済むのは助かります。日曜の試合が終わった後に電車やバスですぐ移動して、夜は自宅で眠ることができるのは素晴らしいです。オーストラリアは時に遠征で8時間飛行機に乗っていることもありました。ただ、最大でも34試合しかなかったオーストラリアと比べると、Bリーグは試合数が多いです。睡眠と食生活など自己管理には気をつけています。プロとして正しい食事と休養などやるべきことをすべてをやっているので、疲れを感じることなくエナジーを出してプレーできます。
──新型コロナウイルスの感染予防のために多くの制限がありますが、大阪の暮らしには慣れましたか?
コロナによってオフコートの暮らしは難しくなっていますが、大阪での暮らしは想像以上に楽しくて、不満は全くありません。日本の文化は気に入っていますし、日本語も勉強しています。食べ物は本当に美味しいですね。特に気に入っているのはココカリーハウス(CoCo壱番屋)。チキンをトッピングした、辛さレベル5のカレーをいつも食べています。
「僕たちはリーグベストのチームになれる」
──シーズン後半、ここから順位を上げていくためには何が重要ですか。
ここからチーム力をさらに高めるには、日々の練習で課題を修正してチームを成長させ、自信を持ってプレーすることです。試合で自分たちの役割を遂行すれば、結果はついてきます。それぞれの相手に対して、守備では異なるゲームプランで臨み、オフェンスではボールをシェアし、走る展開に持ち込む。ビッグマンのスクリーンをうまく使って、オープンなシュートを作り出すことが大切です。そしてリバウンドを取り、ターンオーバーを少なくする。僕たちには地区1位になる可能性が残っているし、リーグベストのチームになれるとも思っています。
──バックコートでコンビを組む日本人選手たちの成長ぶりをどう感じていますか。
(橋本)拓哉は2月13日の富山とのタフなゲームで34点を取ってくれました。彼は周囲の期待に応え、チームを牽引しています。ポイントガードのヒロ(中村浩陸)とタツ(伊藤達哉)はBリーグのどのチームに行っても先発を任せられます。彼らは日頃の練習から競い合うことで互いを高めていますし、その成果は試合で出ています。スモールフォワードで先発を務めるエリー(エリエット・ドンリー)は若いですが、急激に成熟してきています。若い時から先発として多くの出場機会を得れば、一気に成長できます。みんなステップアップしてチームの鍵となっています。
──ニュービル選手は現在、得点、アシストの両方で個人タイトルを狙える位置です。チームの勝利が大前提として、スタッツを気にすることはありますか。また、勝負ところでビッグショットを沈める決定力の持ち主ですが、クラッチタイムで自分が決めると意識する部分はありますか。
スタッツを気にすることもありますが、何よりも大事なのは勝つことです。そのために僕はプレーしています。良いスタッツを残したところで、試合に負けてしまったら誰も気に留めません。僕は勝者になりたいです。常に自分の力を信じていますし、特に試合終盤ではその気持ちが強くなります。ただ、僕は正しいプレーを判断できる力を持っているつもりです。自分でシュートを打つのではなく、他の選手が打つべき時もあります。例えば富山戦の拓哉はそうでした。ここ一番で活躍するために、普段からハードなトレーニングをしています。
──最後に、大阪ファンへのメッセージをお願いします。
エヴェッサファンのことを愛しています。皆さんに勝利を届けるためにベストを尽くします。会場に引き続き来てほしいですし、次の試合で会いましょう。