1月7日、筑波大4年の野本大智は滋賀レイクスターズと特別指定選手契約(プロ契約)を結んだ。シーズン途中の合流ながらすぐに出場機会を得た野本は、プロでも通用するフィジカルの強さとシュート力を発揮。7試合連続で先発を任され平均6.9得点を記録するなど、すでにチームの主力としての立ち位置を確立した。関東大学リーグの強豪である筑波大の出身だが、野本は一般入試から主力へと成長している。滋賀でも同じようにチーム内で評価を勝ち取っており、チーム浮上のキーマンとなっている。
「自分の思い描いていた目標を早めに達成しちゃった」
──これまでの経歴を大まかに教えてください。
ジュニアオールスターには出ていませんが、中学では市の選抜に選ばれ、高校では国体に選んでいただきました。高崎高校でインターハイに出場しましたが、1回戦で負けてしまいました。
──強豪の筑波大に進学するにあたって、通用するという思いはありましたか? 野本選手は一般入試組でありながら、1年からAチームに入りましたが、高校バスケで活躍した推薦組が主力を占めるイメージがあります。
通用するという思いは全然なかったです。4年間頑張って、Aチームに上がって試合に出ることを目標にして筑波大に入ったので。AチームとBチームに分かれるのですが、やっぱり推薦の人がAチームに固まるので一般組は少ないですね。ただ年によりますが、僕の学年だけで4人くらいいて、下の学年にも何人かいました。Aチームに一般組がいない学年もありますし。どこまでが主力と言っていいのか分からないですけど、試合に絡むのは3人ぐらいで狭き門ですね。
──結果的に1年からAチーム入りすることになりました。いきなり目標を達成しましたが、そこからどのように目標設定をし直しましたか?
推薦組の2人がケガをしたのもあって、人数合わせ的な部分もあってAチームに入れたと思います。それでも自分の思い描いていた目標を早めに達成しちゃったというのはありましたね。でも練習では本当に全く通用しなくて、メンタル的にも身体的にもめっちゃキツかったのを覚えています。何も覚えていないと言ったらおかしいですけど、1年生の時は本当にキツかったです。
1年生の時は練習で足を引っ張らないことを目標にしました(笑)。簡単そうに聞こえますが、自分からしたらそれは大きな目標だったんです。練習をしていても自分の存在意義を感じられなかったし、なんで僕がここにいるのか分からないとも考えていたので。でも辞めたいとは思わなかったですし、そういう気持ちもあって頑張ってこれました。
僕はシューティングガードで入ったんですけど、2年生の時にポイントガードがあまりいない状況もあって、ポイントガードをやってみないかと吉田(健司)先生に言われました。菅原暉の控えで試合に絡むようになり、試合経験を積むことができました。試合では全然通用しなかったですし、足も引っ張りましたけど、そこで試合に出れたのは大きかったです。大事な時間帯で使ってもらう時もありましたし、そういうところで実力を示さなきゃいけないという感覚を経験できたので、3年生の時が一番大きかったと思います。
──筑波大で実力が向上したという自負はありますか?
それはかなりあります。高校生の時はチームの身長が小さく、僕は大きいほうだったので、試合中にドリブルもあまりしなかったです。3番とか4番の下のポジションをやっていて、走ってシュートを打つという感じだったので、ガードをやることはありませんでした。なのでドリブルを上手くならなきゃというところから始まりました。やってこなかったことができるようになったということで、成長は感じられました。
「こんなに早くチャンスが回ってくるとは思っていなかった」
──滋賀からオファーを受けた時の率直な気持ちを教えてください。ちなみに他のクラブからオファーはなかったのですか?
他クラブからはなかったので、かなりうれしかったです。Bリーグに挑戦できたらいいなという気持ちがあって、練習に一度参加させていただきました。前々からショーン(デニス)さんがすごく良いコーチだと聞いていましたが、実際に緻密なところもあって熱量もすごくて、ついていきたいと思いました。すごい魅力のあるオファーをいただいたと思っています。
英語に関しては分かる時と分からない時があります(笑)。その中でおちょくってきたり、「お前はまだシュート打つだけだ。決められる力がない」みたいにふざけていじられたりしますが、良いコミュニケーションが取れていると思います(笑)。
──ちなみにプロ契約での特別指定になりましたが、もともとプロ志望だったのですか?
3年のインカレが終わったくらいからプロ志望になりました。それまではBリーグに行くか実業団に行くか迷っていましたが、4年になってからはBリーグに行きたいと思うようになりました。
──サンロッカーズ渋谷戦で早速Bリーグデビューを飾りました。その時は使うと事前に言われていたのですか?
準備しとけよとは言われていました。最初から使われなくてもどこかで出場する時はあるし、ショーンさんはそういう使い方するからと先輩にも言われていたので、心の準備はできていました。
──琉球ゴールデンキングス戦で初先発となりましたが、その時は事前にアナウンスがあったのですか? そして、その時の率直な思いを聞かせてください。
試合の2日前の練習が終わった時に言われたと思います。もちろんビックリしました。正直、渋谷戦で活躍したわけでもなかったですし、練習の時でしかまだ自分のことを見せられていないと思っていたので。こんなに早くチャンスが回ってくるとは思っていなかったですし、驚きと同時にうれしさやワクワクする気持ちになりました。大学1年の時にAチームに入った時はまだ早いと思いましたが、今は楽しみのほうが大きいです。
「噛み合ったときの強さはすごい」
──リリースでもありましたが、頭が良いとかバスケIQの高さが持ち味となっています。あらためてご自身の強みは何になりますか?
そう言われることが多いですが、IQが高いとか賢いと自分では思ったことないんですよ。エネルギッシュにプレーしたりハッスルだったり、身体を張ることが自分では強みかなと思っています。
──ここまで平均6.9得点と結果を残していますが、活躍できている理由をどのように分析しますか?
20分以上出させてもらうこともあり、まずはプレータイムをもらえているからだと思います。ミスもある中で、ショーンさんが我慢して代えないで僕をコートに出してくれていることがうまくやれていることの一つです。
タレントが多い中でポイントガードをやらせてもらった、筑波のバスケを経験できたことが大きいとも思っています。周りに得点が取れるメンバーが多く、自分がファーストオプションになることがほとんどないバスケを経験できたので、周りが良く見えているのかなと思います。
──滋賀はアルバルク東京や宇都宮ブレックスに黒星をつけるなど、侮れないチームと見られていると思います。そんな滋賀の可能性についてどのようにとらえていますか?
ジョーダン(ハミルトン)がポイントゲッターですが、3人の外国籍選手が素晴らしい活躍をしています。僕の勝手なイメージで、できちゃうから適当にやっちゃうってイメージが外国籍選手にはありました。でもそういうところが全然なくて、アンガス(ブラント)も言われたことを忠実にやりますし、すごい練習もします。僕らも真似しなきゃいけないなと。
可能性……。スカウティングもすごく、相手チームのプレーの予測とかもしっかりやるし、試合中もコミニケーションをよく取っています。プロだから当たり前なのかもしれないですけど、そのレベルが少し高いと感じていて、だからこそ噛み合ったときの強さはすごいと思っています。
──一方で勝ち切れなかったり、取りこぼしてしまう試合もありますが、その点に関してはどのように考えていますか?
個人能力の問題はあると思います。僕もそうですし、相手チームの日本人選手と比べて個の力は差が少しあるのかな感じます。外国籍のレベルはかなり高いですし、もっと日本人選手の活躍が必要だと思いました。
出れると思っていなかったので最初はうれしかったんですけど、スタートで出してもらっている以上はもっとコンスタントに活躍しなきゃいけないと思うようになりました。
──では最後にファンの方々へメッセージをお願いします。
まだホームで勝てていないので、早くホームで勝って皆さんと勝った喜びを分かち合いたいというのが一番大きいです。それを実現できるように一生懸命頑張ります……。弱いですかね(笑)?
──もう一声!
強い気持ちを持って、僕が滋賀を勝利に導きます!
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