「次に出てくるビッグマンのために少しでも相手の体力を削りたい」
赤穂雷太は今シーズンから特別指定選手(プロ契約)として千葉ジェッツに加入した。クラブの登録ではシューティングガード兼スモールフォワードだが、196cmという長身と当たり負けしないフィジカルを持つことで、ギャビン・エドワーズが欠場していた時期は彼に代わり先発を任されることもあった。最近はワンポイントでの起用や不出場に終わるなど出場機会が減っていたが、信州ブレイブウォリアーズとの第2戦では19分間のプレータイムが与えられた。
赤穂が「久しぶりのプレータイムだったので、出たら自分のできる仕事を精一杯やると決めていました。出だしで最初にスティールから入りましたし、ディフェンスでは貢献できたと思っています」と語るように、献身的な守備で好影響を与えていた。スタッツは2得点1アシスト1スティールと突出したものではないが、出場時の得失点差が+20という数字からも赤穂が出ていた時間帯はチームが機能していたことが分かる。
信州はビッグマンのアンソニー・マクヘンリーが欠場。赤穂も「たまたま相手の外国籍選手が1人外れていたので、プレータイムはあるだろうなと思っていた」と明かした。「日本人ビッグマンが相手だとプレータイムをもらえるくらい信用されてきたのかなとは思います。自分ではできると思っていても、外国籍選手が相手だとまだ信頼されていないので、そこをどう勝ち取っていくかが課題です」
選手層の厚い千葉において、プレータイムを確保することは容易ではない。老獪なゲームメークができる西村文男がいて、ピュアシューターの田口成浩もいる。ましてや、今シーズンはガードタイプの外国籍選手としてシャノン・ショーターもいるわけで、2番と3番は特に競争が激しいポジションだ。こうしたチーム事情もあり赤穂は3番で起用されることが多い。
ディフェンスファーストはもちろんだが、信頼を勝ち取るには数字を残す必要もある。ただ、赤穂は数字にこだわらず、チームが有利となるようなプレーをすることにフォーカスしている。「自分はディフェンスを大事にしていて、2番や3番を守れる脚があります。外国籍選手よりもアグレッシブにディフェンスできるのが特長でもあるので、ハードにディナイしたり、少しでも相手を困らせようとしています。次に出てくるビッグマンのために少しでも相手の体力を削りたいと思っていて、今日はそれが体現できました」
成長を感じさせたポストプレー
196cmのサイズがある赤穂だけに、マッチアップで高さで優位に立つケースは少なくない。だが、高校時代から将来を見据えてガードにコンバートされた彼にとって本職はシューティングガードであり、ポストプレーは決して得意ではなかった。赤穂も「外で育ててもらったプレーヤーなので、ミスマッチになる場面が前からよくあったんですけど、全然できていなくて、体格を生かし切れていなかったと思っていました」と言う。
だが、この試合ではディフェンスを背負ってポストプレーを仕掛ける場面が何度か見られた。「相手がスイッチしてきて、自分よりも身長が低い選手がついてきたのでそこでアドバンテージが取れました。チームプレーではなかったんですけど、自分で考えてポストプレーをしたほうが有効かなと思いました」と、ヘッドコーチの指示ではなく、自らが起点を利かしたプレーだったことを明かした。
相手のヘルプディフェンスを引き寄せ、ボールムーブがより円滑になるなど、赤穂のポストプレーはチームオフェンス全体に良い影響をもたらした。「前まではプレーをなぞるだけでしたが、今は余裕を持ってプレーできています。自信もついてきましたし、本当に良い感じなのかなと思ってます」と振り返ったように、赤穂の成長が垣間見えた瞬間だった。
赤穂はプロ選手として、ファンを喜ばせるために引っ込み思案な性格を変えることに取り組んでいる。この日の入場シーンでも、大宮宏正のアドバイスを受けてパフォーマンスを披露した。以前まではネタを提供してもらい、それを実行する状況だったが、パフォーマンスに関してもアグレッシブさが増している。
「自分でこれでいってもいいですかとネタを見せにいくんですけど、まだそれじゃ甘いと言われます。OKが出るように、そこを含めて頑張りたいです」。赤穂の成長は止まらない。