トーマスが噛み合うことで、チームは上昇気流に
アルバルク東京は、1月31日に行われた富山グラウジーズ戦に90-86で競り勝ち、前日に敗れたリベンジを果たした。ここで同一カード連敗を喫してしまうと、1月27日に敵地でリーグ最高勝率の宇都宮ブレックス相手に83-59と快勝した良い流れが完全に途切れてしまいかねない。それだけにこの勝利は、A東京にとって少なくない意味を持つもので、ここ一番での活躍が光ったのは第4クォーターに13得点を挙げたデション・トーマスだった。
この試合、トーマスはファウルトラブルに苦しんでいた富山のビッグマン、リチャード・ソロモン相手にインサイドアタックを仕掛けると残り1分38秒にバスケット・カウントを沈めてファウルアウトに追い込む。その結果、マッチアップの相手が橋本晃佑となったことによるアドバンテージを生かし、残り1分6秒から6得点と終盤に大暴れした。
「今日はタフな試合で、富山のインサイドの(ジョシュア)スミス選手、ソロモン選手をいかに抑えるかがポイントでした。チーム全体でハードに戦い勝つことができました。チームとしてよく戦った結果だと思います」
試合をこう総括したトーマスは、第4クォーターでの自身の活躍についてこう続ける。「勝負どころでなくとも、アグレッシブにプレーしようと心掛けています。ソロモン選手がファウルトラブルになっていたのでアタックして、結果的にファウルアウトをさせたことも勝ちに繋がりました。チームメートが良いポジショニングの時に良いパスをくれたことに感謝します」
「チームでプレーすることが最優先」
シーズン開幕前、指揮官ルカ・パヴィチェヴィッチにトーマスについて聞くと「強力なチームプレーヤー」と、個での打開ではなくチームオフェンスの中でこそ本領を発揮する選手だと評していた。それだけにコロナ禍によって来日が遅れたことは、A東京が緻密なチームバスケットボールにこだわることも相まって大きなマイナスからのスタートとなった。
パヴィチェヴィッチはこう振り返る。「彼はシステム、日本のリーグに全く慣れていない状況でスタートしました。コーチ陣が何十時間もかけてスカウティングビデオを見せて、一刻も早く溶け込めるように懸命に努力をしました」
ただ、この遅れも時間を重ねるごとに確実に改善されている。トーマスも「自分はシュートも打てますし、クリエイトもできます。最近ではほとんどのケースでチームにおける自分の役割を理解できていると思います」と力強く語る。
実際、連携面の向上はこの試合でも見られた。最後の連続得点は、ソロモン退場で生まれたミスマッチを的確に突いたものだが、接戦での終盤という緊迫した場面でアドバンテージを生かしたオフェンスを遂行することは、相手も防ごうとする中で決して簡単なことではない。それができたことは、トーマスがチームの歯車として噛み合ってきていることの証左だ。
チーム作りの出遅れからシーズン前半戦に予想外の苦戦を強いられたA東京だが、天皇杯を含めここ10試合では8勝と、徐々にではあるが調子は上がってきている。トーマスも手応えを感じている。
「このチームにはアレックス・カーク、田中大貴、竹内譲次、安藤誓哉と勝ち方を知っているベテランがいます。チームでプレーすることが最優先で、特にポイントガードの安藤とは練習の時から、どういうパスが欲しい、どういった場所でパスをもらいたいと毎日のように話をしています。残りの試合、チームとしてレベルを上げていけるのは間違いないと思います」
昨シーズンは欧州屈指の名門ギリシャのパナシナイコスで中心選手だったトーマスが、チームによりフィットして本領発揮となった時、A東京はさらなる上昇気流に乗る。