カイリー・アービング

ネッツ最大のリスクはデュラントとハーデンの『反乱』

現地1月20日、ネッツは『ビッグ3』が初めて揃ったキャバリアーズ戦でダブルオーバータイムの末に敗れた。試合後、ヘッドコーチのスティーブ・ナッシュは眉間にしわを寄せながら「適切なバランスを見いださなければならない」と語ったが、その後に会見に現れたカイリー・アービングは晴れやかな笑顔で「楽しかった」を連発。コリン・セクストンにクラッチスリーを決められた瞬間も彼は笑っていたが「NBAのバスケットボールの素晴らしさをあらためて感じられてハッピーだった」と語る。

カイリーはバスケットから2週間離れていたにもかかわらず、個のオフェンス能力ではNBAトップレベルにあることを示した。ただ、今の彼がネッツにとって『危険人物』であるのは間違いない。ドナルド・トランプはもう合衆国大統領ではないが、これからもナイーブなカイリーの神経に障る出来事は起こるだろう。そのたびにチームはカイリーがどこにいるかを確認しなければならない。当然、チームリーダーとしては不適格だ。

ネッツにとって最大のリスクはカイリーがまた不意にいなくなってタイトルを逃すことではなく、彼のワガママを黙認することで他の選手に愛想を尽かされることだ。国と人々を憂うカイリーの社会的行動は批判できないが、何年続くか分からないキャリアの中で、勝つために、キャリアを築くためにネッツにやって来た選手にとって受け入れがたいと判断されてもおかしくない。

『ビッグ3』の契約はいずれも来シーズンまでしか保証されていない。3人とも2022-23シーズンの契約はプレーヤーオプションだ。デュラントとハーデンが「このチームでは勝てない。出て行く」と言いだせば、この夏のトレードを余儀なくされる。カイリーとデュラントを獲得した2019年夏の時点でネッツには優勝を狙うチャンスが4年間あったが、1年目の昨シーズンはケガでノーカウント。実質的に初の挑戦となった2年目の今、カイリーの行動でプランは崩れつつある。

では、カイリーが市場に出た場合に欲しがるチームはいるのだろうか。「いくらでもいる」というのがその答えだ。コート上での実力は申し分なく、ただ優勝を狙うチームにとってリスクが大きすぎるだけだ。そしてカイリー自身も、今は優勝にプライオリティを置いているようには思えない。

トレードが成立するであろう相手として挙げられるのは例えばペリカンズで、23歳のブランドン・イングラムと20歳のザイオン・ウイリアムソンとの『ビッグ3』形成である。カイリーを加えればイングラムとザイオンの成長を待ちながらプレーオフ進出はもちろん、その先で勝ち進むことも期待できる。

ネッツは指名権を必要としている。これに加えて同じポイントガードのロンゾ・ボール、あるいはJJ・レディックとエリック・ブレッドソー、ジャクソン・ヘイズといった組み合わせでトレードは成立するだろう。荒唐無稽なようだが、ネッツが今のチーム内のバランス、ロッカールームの雰囲気を深刻にとらえているのだとしたら、早いうちに手は打たれるはずだ。