アルバルク東京

残り6秒、1点ビハインドからの逆転劇

1月13日、天皇杯3次ラウンドでアルバルク東京がサンロッカーズ渋谷と激突。最後までもつれる一進一退の攻防となったが、田中大貴の劇的な逆転ブザービーターにより、A東京が74-73で前年王者のSR渋谷を撃破した。

前回の公式戦から中10日と休養十分の両チームが、出だしから共に持ち味であるインテンシティの高いディフェンスで相手オフェンスのリズムを崩し、開始5分で4-4とロースコアの幕開けとなる。

しかし、A東京の指揮官ルカ・パヴィチェヴィッチが「前半、SR渋谷のディフェンスに対し、オープンなシュートを打っていたがリングに嫌われて入らなかった。それと同時にドライブをすべき場面でそのままシュートを打ってしまうなど、オフェンスで少し固かった。また、課題であるターンオーバーから走られ、オフェンスリバウンドを取られてしまった」と語ったように、ここから試合はSR渋谷のペースとなる。

そして第2クォーター序盤には山内盛久がゴール下にアタックしての連続得点、さらにチャールズ・ジャクソンの豪快なダンクを導くアシストと活躍すると、残り6分22秒にSR渋谷が28-19とリードを広げ、A東京はたまらずタイムアウトを取った。

ここで守備を立て直したA東京は、小島元基が積極的なドライブで味方のシュートチャンスを作り出し、試合のリズムを変える。そして終盤には小酒部泰暉、ザック・バランスキーの連続3ポイントシュートが飛び出し、2点差にまで縮めて試合を折り返す。

後半はずっと僅差で推移する白熱の攻防が続く。最終クォーター残り2分半、SR渋谷はベンドラメの得点で4点をリードするが、A東京は小酒部のゴール下へのドライブで残り51秒に逆転する。しかし、SR渋谷も意地を見せ、残り6秒にこの試合で27得点を挙げたライアン・ケリーがタフショットを沈めて73-72と勝ち越した。

だが、A東京は自陣エンドゾーンから始まったラストオフェンスで、ボールを持ち込んだ田中が、身体が左に流れるオフバランスの難しいシュートを、試合終了のブザーとともに沈めて熱戦に終止符を打った。

アルバルク東京

「多くのビッグプレーが飛び出すローラーコースターのような試合」

試合後、パヴィチェヴィッチはこう振り返る。「本当に素晴らしい試合でした。常にインテンシティが高く、フィジカルコンタクト、スピードがあり、両チームで多くのビッグプレーが飛び出すローラーコースターのような試合となりました。そして最後まであきらめずに戦い続けた結果、勝利をつかむことができました」

また、最後のオフェンスについてこう言及する。「プレスブレイクエントリーから、3人のガードの内、誰かに1対1を任せる。エンドゾーンから6秒でできることは他にないです。オサ(小酒部)も優れた1対1の選手で得点能力があります。ただ、この試合では経験豊かな安藤か田中のどちらかに任せる中、田中がアドバンテージを生かしてくれました」

一方、惜しくも天皇杯連覇の大きな目標が潰えてしまったSR渋谷の伊佐勉ヘッドコーチは「負けて悔しいですが、最後の場面は田中選手がさすがのパフォーマンスでよく決め切ったと思います。戦えはしましたが、勝ち切るところまではいきませんでした」と総括する。

そして、「勝負どころ、特に4クォーターでオフェンスリバウンドを多分、6本取られてターンオーバーを5つしていると思います。それで勝つことは難しいです。その中でもクロスゲームになりましたが、この部分を減らせていれば展開は変わっていたと思います」と敗因を分析した。

現在、リーグ戦で地区7位と苦しんでいるA東京にとって、この勝利は大きな弾みとなり得るものだ。パヴィチェヴィッチも「まだまだ、完成度は求めるものに達していないが、この勝利でチームがプラスの方向に持っていけるようにしていきたい」と語る。

そしてこの試合、チームハイの18得点を挙げた安藤誓哉は、「渋谷さんのプレッシャーは分かっていましたが、今日もインテンシティの高い守備に対し、ターンオーバーが多かったです。その中でも集中して40分間、戦えたことが接戦に繋がったと思います。最後に勝ててよかったです」と振り返った後で、こう続ける。

「リーグ戦が再開するまで、これから自分たちがやるべきこと、良くなっていることをしっかり見直していきます。その中で今日、天皇杯の一発勝負ですごい試合を勝ち抜いたことを、自分たちの良い流れにして後半戦に臨んでいきたいと思います」

中断明け、A東京は23日、24日に島根スサノオマジックと対戦した後、27日に宇都宮ブレックス 、30日と31日に富山グラウジーズと東地区の上位チームと激突する。今回の劇的勝利で流れを変え、いよいよ王者が本領発揮となるか。リーグ再開後の戦いぶりにより注目が集まる。