「公式戦があるからこそ、学べることがあります」
新型コロナウィルス感染拡大によって、中学バスケットボール界も2020年は大半の大会が中止となった。それだけに迎えた今回のU15世代の日本一決定戦、『Jr.ウインターカップ2020-21』は昨年末に開催されたウインターカップと同じく、参加チームに勝ち負け以上の大きな意味をもたらすものとなっている。
八村塁、馬場雄大らを輩出した奥田中のメンバーで構成される奥田バスケットボールクラブは、5日の2回戦でBASKETCOUNT(山梨)に60-42で快勝した。チームを率いる坂本穣治コーチは、勝利とともに得られたものを次のように語る。
「選手たちにはバスケットボール以外、人としての部分でも中学校3年間で伝えたいことはいっぱいあります。そして真剣勝負の試合をやることで、人間形成にかかわる教育などいろいろことができると思います」
「例えば審判、相手に敬意を持ってプレーをすることの大切さなど、プロなら分かることでも、中学生では分からないところもあります。それは練習だけでは学ぶことができません。公式戦があるからこそ、学べることがあります。そういうことを今日はできたので良かったです。今シーズンはここまで実戦経験がものすごく少ないので、この大会には本当に感謝しています」
真剣勝負の大会だからこそ得られるものの大切さを強調する坂本コーチは、だからこそ難しい状況下にあっても今大会が実施されたのは大きな価値があると続ける。
「何カ月、何年後かは分からないですが、コロナ禍でも大会を実施したことの意味はみなさんに伝わる。この状況でも大会をやれたのは意味があると、いろいろなことに気づくと思います」
「奥田の子は決して大きくはないですが、ハートは全然違います」
大会は6日に3回戦と準々決勝、7日に準決勝と決勝と過密スケジュールが続く。当然、優勝を目指している奥田バスケットボールクラブだが、同時に坂本コーチは何よりも勝ち残ったことで、貴重な学びの場が増えたことの大切さを強調する。
「勝ち負けは二の次で、バスケットをやって良かったという試合をしたいです。試合でしか教えられないことがあって、まだ伝えきれていないことがいっぱいあります。身体はいつも奥田の子は決して大きくはないですが、ハートは全然違います。だからいろいろな高校に行っても、ものすごく評価してもらえる。精神の部分をきちっとして高校の指導者の方にお渡ししたいと思っていて、その機会がもう1回あります」
今大会の出場選手たちは、コロナ禍により様々な我慢を強いられてきた。だからこそ奥田バスケットボールクラブの選手たちに限らず、今大会に出場した将来あるバスケットボール少年少女が貴重な公式戦でいろいろなことを吸収し、さらなる成長の糧としてくれることを願っている。