「決勝に出て、小川をベスト5にしてやりたかった」
ウインターカップ準決勝、洛南vs東山は米須玲音のゲームメーク力と得点力、ムトンボ・ジャン・ピエールの圧倒的な高さが光り、東山が87-67で勝利し本日の決勝戦に駒を進めた。
洛南の淺野ケニーは東山の米須とウインターカップの決勝で戦おうと約束していた。「去年は福岡決勝(福岡第一vs福岡大学附属大濠)があって、それが終わった後に来年は『京都対決』をやろうとずっと言っていました」
淺野は準々決勝の正智深谷戦で27得点15リバウンドを記録し、『京都対決』を実現させた。しかし、同試合でスコアラーであり司令塔の小川敦也が終盤に足を捻挫し、東山戦に出場できないアクシデントに見舞われた。そして、小川の穴を生めようとの思いが空回りしてしまった。
淺野は第1クォーターでいきなり2つのファウルを犯してしまい、早々にベンチに下がった。プレータイムは25分と伸びず9得点8リバウンドに終わり、チームも最後まで流れをつかめずに完敗を喫した。淺野は言う。「僕と小川で点数を取っていたんですけど、小川が抜けて、僕がエースとして頑張らないといけないと思ったんですけど、全然自分のプレーができなかったので、本当に悔しさが残る試合でした」
「なんとしても決勝に出て、小川をベスト5にしてやりたかった」との思いが力みとなり、自然体でプレーすることができなかった。
ライバルの米須は淺野とは対照的にノビノビとプレー。22得点10アシストを記録し、チームの絶対的な司令塔として勝利へと導いた。淺野も米須のパフォーマンスには脱帽するしかなかった。「僕たちがリズムをつかみかけたところで点数を決めてくるし、僕が2回ファウルをしたのでブロックもしに行きずらかったです。相手にしたら嫌な選手でした」
「本音では一番やりたくない相手」
東山は優勝候補に挙がる強豪だが、京都予選では洛南が82-72で勝利を収めた。『東山超え』という大きな目標を達成したことがウインターカップでは悪い方向に作用し、洛南らしいバスケットをうまく表現できずにいた。淺野もその違和感をずっと感じていたという。
「僕らの一番の壁は常に東山でした。1年の頃からずっと勝てなくて、もちろん日本一という目標があったんですけど、目の前の東山を倒すという目標がなくなってしまって、チームとして見失ってしまう時期がありました」
いわゆる燃え尽き症候群に近い症状だろう。準決勝まで勝ち抜いたが楽な試合はなかった。僅差での戦いが続いていたため、ベンチプレーヤーをコートに出す余裕はなく「大差をつけて全員出してあげたかったんですけど、なかなかそういう試合ができなくて……」と、淺野は歯がゆい思いをしていた。
自分たちらしいバスケが表現できていなかったからだろう。正智深谷を倒し念願の『京都対決』を実現させた直後、思わず本音がこぼれた。「正直なことをいうと、僕らからしたら東山が一番やりづらいチームです。米須との約束もあって、京都対決はしたいですけど、本音では一番やりたくない相手です」
小川の負傷欠場、自身の不調もあって、東山に完敗を喫して淺野の高校バスケ生活は幕を閉じた。「辛かったり苦い記憶が出てきて、正直楽しかったとは言えないような日々が続きました。でも、終わってみたら、もう少し吉田(裕司)先生の下でバスケがしたかったなって思います」
「こんな後悔はもうしたくないです。次のカテゴリーではこんな思いはしたくない」。淺野はこの悔しい経験を糧に、次のステップを登っていく。