細谷将司

秋田ノーザンハピネッツは2020年最後のリーグ戦となった三遠ネオフェニックスとのホームゲームに連勝し、通算成績を16勝9敗として年を越した。B1での過去3シーズンはいずれも勝率5割を切っていたが、今シーズンは開幕から常に勝ち星が先行。とりわけラスト4週間は8勝1敗と絶好調だ。細谷将司はこの時期に調子を上げて、チームの好調に一役買っている。秋田に移籍して2年目を迎えた細谷に、自身の成長ぶりとチームの状況について語ってもらった。

大きく勝ち越すも「そこで満足している選手は一人もいない」

──序盤戦で大きく勝ち越しています。開幕時点での想定と比べて、内容も結果もかなり上を行っているのではありませんか。

チームとしても個人としても満足はしていないと思いますね。チームとしては勝ち切れたはずの試合が結構あって、そこを勝っていればもっと上位にいたはずです。個人的にも最初の方はプレータイムが全然もらえない状況で、スタッツもそうですしチームに貢献できなかったので。そこは満足してはいません。

今シーズンはチームとして日本一を目指していて、勝ちゲームを落としているようではそこに手が届かないとコーチ陣からいつもミーティングで指摘されています。今は勝ちが先行していますけど、そこで満足している選手は一人もいないと思います。

──宇都宮ブレックスや千葉ジェッツといった強豪にも競った試合ができています。もう少し、という手応えはありますか?

その手応えはチームとして感じていると思います。スカウティングをちゃんとやって、自分たちのオフェンスもディフェンスも遂行できている部分がたくさんあって、昨シーズンと比べるとかなり良くなっています。その中で勝ちに近づいている実感はあるので、本当にあと少しのところなんだと思います。

特に宇都宮との試合ではチャンスがあったと思います。あと足りないのは細かいところ、リバウンドだったり、ここぞの場面での遂行力です。強いチームはみんなの意思統一の力がはっきりしていますが、ウチはまだそこが曖昧だったりするので。本当に少しの差なんですけど。

──秋田では若手が先発に固定されていて、細谷選手は昨シーズンからベンチスタートになっていますが、自分の役割はどう受け止めていますか? 自分だけのことで言えば、先発で出た方がリズムに乗りやすいですよね?

やっぱり先発で出た方がリズムを作れたり、やりやすい部分は正直あります。でも、途中から出てもやることは変わらないという意識で昨シーズンからやっています。先発でやりたいという気持ちはもちろん持っていますが、今の僕の役割はベンチから出てアップテンポな展開を作るところで、ディフェンスもさらに激しくやるように意識してプレッシャーを掛けています。

──ポイントガードでは大浦颯太選手が先発していますが、これは若手を先に出して思い切りプレーさせる考えなのか、フラットに競争して大浦選手が一番手なのか、どういう基準で選ばれているんでしょうか。

それはコーチ陣に聞かなきゃ分からないんですけど(笑)。でも、大浦もすごく良いプレーヤーですし、スタートでも物怖じせずに思い切りプレーしてくれています。若手だから、という理由ではないと思います。

細谷将司

B1新記録の5連勝「そこに貢献できたことで自信になった」

──そんな中、細谷選手は12月に入ってプレータイムが伸び、それに伴ってスタッツも伸びています。何か変化はありましたか?

今シーズンは大浦と伊藤(駿)、長谷川(暢)、中山(拓哉)とポイントガードのできる選手がすごく多くて、僕に求められていたのは2番ポジションで得点を取ることでした。ですが自分としては今までのプロキャリアでずっと1番ポジションをやってきたので、このスタイルにアジャストするのが難しくて、自分の中でかなりもがいて考えながら過ごしてきたんです。12月に入る前に顕蔵さん(前田顕蔵ヘッドコーチ)が話す機会を作ってくれて、そこで自分の良さが消えてしまっていると感じていること、やはり1番でプレーしてピック&ロールからさばいてクリエイトしていきたいという話をさせてもらいました。そこで顕蔵さんが「それでやってみよう、1番に戻してみよう」と言ってくれて。広島戦の週からポイントガードとして出て結果を残すことができて、そこから良い流れができました。顕蔵さんが僕を気にかけてコミニケーションをとってくれたおかげなんです。

──バランスもあるから選手の希望をすべて受け入れるわけにはいかないので、難しいところですよね。

そう思います。顕蔵さんは選手の意見をすごく聞いてくれるコーチなので選手としては本当に助かっていますね。難しい立場ではあると思うんですけど、それでも常にチームのことを考えて選手のことを考えて行動してくださっているので、そこは感謝です。

──起用法の希望を受け入れてもらうからには結果を出す責任もあるわけですが、それを果たすことができました。

そうですね。横浜戦の第1戦は悔しい負けになりましたけど、それでもチームはB1で新記録の5連勝を達成して自信になりました。僕自身もそこに貢献できたことで自信になったし、そこは一つ成長できたところだと思います。

──横浜と言えば、河村勇輝選手が特別指定選手として加入して注目されていますが、『ビーコルの0番』と言えば細谷選手でした。退団した後も『ビーコルの0番』に愛着はあるはずで、その番号を選んだ河村選手について思うところはありますか?

「0番を選んだんだ!」という感じではあるんですけど、僕は彼が付けることに何か言える立場じゃなくて「0番をよろしくお願いします」という気持ちです(笑)。でも本当に僕にとっては思い入れのあった番号なので、0番を大事にして大活躍してほしいです。

細谷将司

「ディフェンスをすることがすごく楽しくなっています」

──秋田への移籍を決めた時点で、細谷選手はディフェンスの成長を個人的な目標に掲げていました。1年目はコロナに揺れたシーズンとなりましたが、2年目を迎えた今、ディフェンスの成長に対しての手応えはどうですか?

昨シーズンに比べると、ディフェンスは自分の中でかなり成長している実感があります。僕自身、伊藤や長谷川や中山のようにディフェンスが得意な選手と比べたらまだ全然できていませんが、それでも「ディフェンスで相手を止めて、そこから行くんだ」というマインドはすごく出来上がりました。もともとは気持ちの部分でオフェンスが強く、自分で点を取ること、周りを生かすことが自分の役割だと考えていました。でも今はディフェンスをすることがすごく楽しくなっています。

もう一つの変化は「みんなの力になりたい」ということです。秋田はディフェンスのチームで、そこで僕が足を引っ張るようではチームにとって大きなマイナスになってしまうので、そこでプラスになりたいというように気持ちが変化したのを感じています。

──2021年がスタートします。秋田ノーザンハピネッツと細谷選手に期待してほしいところを教えてください。

2021年は、チームとしては引き続き日本一を目指してやっています。個人としては、僕はやはりディフェンスに磨きを掛けて、ディフェンスでチームを盛り上げられる選手になりたいです。それにプラスして、オフェンスでさらにアグレッシブに、周りの選手も巻き込んでスピーディーなバスケットを展開していきたいです。そうやって日本一になるチームの勝ちに貢献したいです。

──細谷選手の調子が上がるのに合わせてチームも勝ち続けていますから、これは期待ですね。

そう言ってもらえるとうれしいです(笑)。僕の力だけじゃなく、みんなが頑張ったからこその勝ちだと思っているのですが、今はチームが一つになっている感覚があって、お互いやりたいこともすごく分かってきている状況なので、だから先ほども言ったように勝負どころのリバウンドだったり遂行力だったり、細かいところを突き詰めていけば、もっと勝ち星が増えていくと思っています。そこは注目してもらいたいし、期待してもらいたいです。