「自分が出すところに仲間がいてくれる」
東山と福岡大学附属大濠の男子3回戦は、米須玲音も「全く予想していませんでした。競っている中で1点でも勝てばいいと思っていたので」と驚くワンサイドゲームとなった。
206cmのサイズを誇るムトンボ・ジャン・ピエールのゴール下の存在感に威圧されてしまった大濠のシュートが決まらず、そこから立て続けにブレイクが出て開始2分半で8-0のラン。大濠はここでタイムアウトを取り、日本人ビッグマンの間山柊が巧みなステップでジャンピをかわして連続得点を決めるが、東山の勢いは衰えない。1年生から試合に出続ける米須は3年生になって完成された司令塔となり、矢のように飛ぶ強烈なチェストパスを走る味方に合わせて、次々と得点を演出していく。
どんなチームも『ディフェンスからの速攻』の展開に持ち込みたいが、実践するのはそう簡単ではない。それでも視野の広さとパスセンスを兼ね備えた米須はパス1本で大濠の堅守を切り裂いた。
17アシストを記録した米須は、そのパスについて「自分が出すところに仲間がいてくれるので、信じて出すだけです」と語る。
「今日は僕にマークが来るのが分かっていて、『お前たちがやらないといけない』と先生に言われていたフォワード陣の中川(泰志)、西部(秀馬)、堀(陽稀)が中心になって攻めてくれたので勝てたと思います。僕もこの試合に懸けている思いはあって、仲間たちが僕の言葉に応えてくれました」
その西部はゲームハイの33得点を、また中川が14得点、堀が9得点を記録。その一方でジャンピは16得点、米須は8得点と『省エネ』運転ながら大濠を一蹴する恐るべき強さを見せた。前半を終えて48-20、第3クォーターもさらに点差を広げる展開で、米須もジャンピもプレータイムを30分程度に留めながら94-65と快勝している。
「ここに来ているチームの中でNo.1のコミュニケーション能力を」
米須は8得点17アシスト。プレータイムが伸びていたらスタッツももっと伸びていただろうが、「自分のスタッツは気にしていません」と彼は言う。
「ですが、強豪の大濠さん相手に17アシストできたのは自信になります。自分のパスで流れを変えられているならガードの役割ができているということです。今日はパスで流れを変えられたので、そこは満足しています。みんな落ち着いて速攻が出せました。良かったところは褒めて、悪かったところは明日までに修正したいです」
明日の準々決勝では報徳学園と対戦。こちらもタレント揃いのチームだが、「今日は僕とジャンピが周りに任せた部分もあります。明日からはメインコートなので、またしっかりやりたいです」と米須は言う。
目標はもちろん全国制覇。ただ、米須はもう一つの目標を教えてくれた。「この大会は楽しむことを第一にして、ここに来ているチームの中でNo.1のコミュニケーション能力を出そうと言っています。そういう意味で試合に出ているメンバー以外もベンチから声を出して、チームで戦っているんだと感じながらプレーすることができたので、それも役立ったと思います」