金近廉

「チームメートに、監督に感謝しています」

関西大学北陽は今日の2回戦で福岡大学附属大濠に敗れ、2回戦で姿を消した。今大会屈指のスコアラーとして注目された金近廉は、初戦で広島皆実を相手に33得点15リバウンドのダブル・ダブルを記録。今日の大濠戦ではさらに勢いを増し、34得点12リバウンド10アシストのトリプル・ダブルを記録した。早期敗退は悔しい結果だが、相手は昨年大会の準優勝チームであり、金近も「やり切ることができた」と、悔いのない表情で取材に応じた。

「1桁の差でついていって、最後に引っくり返すのを狙っていたんですけど、最後そこまでの力がなくて、相手との力の差とか経験の差を感じたんですけど、今回の大会は自分の中でやり切ったという感じが大きいので、悔しいですけど、チームメートも僕がミスしてもパスを回してくれて、チームメートにも感謝していますし、監督のおかげでここまで成長できたので感謝しています」

大濠とすれば、攻守に自分たちが主導権を握り、10点前後のリードを保つ試合展開。だが、金近を中心とする北陽のオフェンスはいつ爆発してもおかしくない危険な雰囲気を漂わせており、気が抜けなかった。

「今までは僕が一番身長が大きくて、カバーに来る人もそこまでサイズがなかったんですけど、大濠では1人抜いてももう1人、自分と同じぐらいの身長の選手が来て、そこに慣れるまでに後半まで修正できませんでした。そこは自分の実力不足なんですけど、チームメートが活躍してくれて1桁の点差で終われました」

ただ、アジャストに手間取っている感も、金近が仕事をしていなかったわけではない。自分でアタックできなければマークを引き付けてチャンスメークする。広島皆実との試合では3だったアシストが、この大濠戦では10へと増えた。

「味方だけじゃなく相手のディフェンスがどこを向いているかが見えて、視野が切れているところを狙ってパスができたので、自分の中では今日はすごく良い出来でした」と振り返るパスワークが冴えた。彼にとって2桁得点、2桁リバウンドは全国の舞台でも当たり前。だが、トリプル・ダブルとなれば話は別だ。「リバウンドはいつも20本ぐらい取るんですけど、トリプル・ダブルは初めてです」と、この時ばかりは笑みもこぼれた。

金近廉

「トリプル・ダブルは初めてです」

後半になると大濠の組織的なディフェンスにアジャスト。速い展開で大濠が守備の陣形を整える前に仕掛ければ、196cmのサイズに加えて走って跳べるアスリート能力を兼ね備えた金近は止められない。ウイングの位置から一気にゴール下まで切れ込むアタックは迫力十分。大濠の堅守を何度も突き崩し、得点を伸ばしていった。

猛烈な追い上げを見せるも届かず。それでも金近には満足感があった。「強豪校相手でどうなるかなと思っていたんですけど、前半も長い間リードして、チーム全体として全然やれるという気持ちで一試合を通してやれました。自分も後半はしっかり点をとってやり切れたので、そういう部分では良かったです」

「大阪での3冠を目標にしてきて、そのうち2大会がなくなってしまったんですけど、それでも1冠をしっかり取って、このウインターカップに向けてチーム全体でミーティングをして一つになってやってこれました。去年より一つになって戦えた印象です」

高校バスケ最後の1年、インターハイを始めとする他の大会があれば金近はもっと活躍できたはず。ただ、それを悔やんでも仕方ない。後悔なく大会を締めくくることのできる選手は決して多くない。金近はその一人として、笑顔で舞台を降りた。