ジョエル・エンビード

「僕はフィラデルフィアで20年間プレーしたい」

プレーオフを目前にしてベン・シモンズがひざを痛めて戦線離脱。この時点で、セブンティシクサーズのシーズンは終わったようなものだった。プレーオフでは1回戦でセルティックス相手にスウィープ(0勝4敗)で敗れた。それでも、チームに残って最後まで戦い続けたもう一人のエース、ジョエル・エンビードの悲壮なまでの奮闘ぶりは見る者の心を打った。

その彼が新シーズン開幕に向けて始動した。「これまでたくさんのことを学んできたから良いコンディションを保てている。この夏は体調管理にすごく注意した。自分で栄養士とシェフ、理学療法士を雇って、体調を管理するためにやれることは全部やった。僕はフィラデルフィアで20年間プレーしたい。そのために必要だと思ったんだ。プロになって一番学んだのが体調管理の大切さだと思う。オフは短かったからまだ調整段階で、日々勉強だけど、ここまではすごく順調だ」

シモンズとエンビード。どのチームもうらやむタレントを擁しながらプレーオフで結果を出せないシクサーズは岐路に立っており、2人のうちどちらかを放出して再建に舵を切るのではないかとも言われている。昨シーズンの最後にケガをしたのがシモンズで、活躍したのがエンビードだったため、今はシモンズが議論の的。ロケッツで居場所を失っているジェームズ・ハーデンとのトレードが噂されている。エンビードが言う「20年間」は、それに対する皮肉でもあり、チーム愛の表れでもある。

常につきまとう懐疑論を払拭するには、結果を出すしかない。エンビードは今シーズンの目標を「まずは勝つこと。試合に勝つことがチーム全体にとっての成功になる」と言う。

「チームが勝てば僕もいろいろな賞の候補になれる。僕のような能力がある選手は、MVPやオールNBA、最優秀守備選手の候補に毎シーズンならなきゃいけない。ただ、受賞するにはチームの勝利が必要だ。だからそれを一番の目標にする。勝てばみんながハッピーでいられるからね」

もっとも、彼自身は本来の楽観的な考え方を取り戻している。結果を出さなければいけないプレッシャーと向き合いながらも、良いコンデイションを保ってさえいれば目標はクリアできると考えている。

「日程は変えられないから、体調管理に気をつけないといけない。開幕から良いスタートを切るのが大事。でも最も重要なのはプレーオフに向けて準備をすることだ。前回はケガ人が何人か出てしまい100%ではなかった。重要なのは100%の状態でプレーオフに進出することだ」

エースとしての自覚が確たるものとなり、プレッシャーと向き合いながら、それを力に変えられるようになったエンビード。新戦力が加わったシクサーズは新たなチームとなったが、彼を中心にまとまることができ、そして良いコンディションをキープしながら戦えるのであれば、きっと満足できるだけの成果を出すことができるに違いない。