ラジョン・ロンド

トレイ・ヤングの指南役に「もう一つ上のレベルに行ける」

ラジョン・ロンドは21歳と34歳の時にそれぞれNBAチャンピオンになった。バスケットIQを駆使してチームを動かす司令塔であり続けているが、勝てない時期や評価されない時期も経験しながら、NBAプレーヤーとして15年目のシーズンを迎える。新天地はホークス。レイカーズとの契約満了を迎えた後、2年1500万ドル(約16億円)という契約で迎え入れられた。

昨シーズンのNBAファイナルまで戦い抜き、異例の短いオフを挟んでの再始動。それでもロンドは新シーズンを戦うエネルギーを十分に装填してホークスのキャンプへやって来た。「いつものオフとは違うし、優勝のお祝いもコロナに合わせて変えた。それでも家族と一緒に休暇を楽しく過ごしたよ。いつもより短いけど、仕事に戻らなくちゃならない。別に問題はないよ。僕は好きなバスケットボールを仕事にしている。体調も問題ない。バスケでお金がもらえるんだから、不満なんてない」

ホークスは今オフに積極的な補強に出て、強豪チームへとステップアップしようとしている。トレイ・ヤングを始めタレントは豊富で、『勝ち方を知る』ロンドのような選手がリーダーシップを発揮すれば、東地区の上位へと一気に突き抜ける可能性もある。

「チームからはまだ何も言われていないけど、理解はしている」と、ロンドはホークスでの役割を語る。

「このリーグで15年やっているから、スターターではないこと、30分プレーしないことは分かっている。開幕から20試合はコーチを補佐するかもしれない。出場時間にかかわらず自分の仕事をしてみせる。特定の役割はないにしても、一番求められるのはリーダーシップになる。若手のお手本となり、彼らがコンスタントに高いレベルでプレーするのに何が必要かを理解してもらうんだ」

若手に伝えたいことは『心構え』だと彼は言う。「毎日の練習からインテンシティ高くやること、そして細部に気を配ること。それがチームに伝わってくれればと思う。僕は手本を示してみんなを導きたい。日々の練習でコンスタントに実践するつもりだ。僕の教えを聞く意思のある選手には、なるべく多くのことを伝えたい。僕もそうしてもらってきたからね」

ロンドに特に期待されるのは、トレイ・ヤングに勝者のメンタリティを植え付けること。デビューから2シーズンで、ステフィン・カリーにも匹敵するオフェンスの才能を持つことを十分に見せ付けている。昨シーズンは平均29.6得点と、リーグ4位の数字を叩き出した。ただ、自分のパフォーマンスをどうやってチームの勝利に結び付けるか。その方法を学ぶ必要がある。

「トレイには素晴らしい才能がある。フィルムルームで彼がどう考えているのか早く聞き出したいよ。相手の守備の綻びを突くベストな方法、ディフェンスの崩し方についてはアドバイスできると思う。そうすればもう一つ上のレベルに行けるはずだ。僕が教えることは、スタッツには表れないと思う。メンタルの強さ、試合へのアプローチ、ディフェンスを自分の思うように動かすこと、サイズが小さくても効果的なディフェンスをする方法……そんなことを教えられると思う。3ポイントシュートやアシストだけでなく、試合をコントロールする方法を学び、彼とコーチが常にコミュニケーションが取れているように僕が助けるつもりだ」

年が明けて2月には35歳になる。近年はケガも多く、レイカーズではプレーオフの勝負どころで持ち味を発揮して優勝に貢献できたが、シーズンを通じてフル回転するわけにはいかない。キャリアの終わりが見えている年齢だが、ホークスが現役最後のチームになるか、との問いには「そこまでは考えていない」と答えた。

「最大の目標は自分の足で歩ける状態でバスケットボールを引退すること。限界までやった結果、ベッドから起き上がれないようにはなりたくない。プレーできないと自分で感じた時、あるいは家族からそうすべきだと言われた時に引退するよ。今回、自宅に近い東カンファレンスのチームに加入できたのは、家族のことを考えると良かった」

口調は淡々としていても、新しい挑戦へ向かう心の準備はしっかりと感じさせる会見だった。勝てなかったチームが強豪に生まれ変わるには単に優れた選手だけでなく、勝利に貪欲なメンタリティを植え付けられるリーダーの存在が不可欠だ。ロンドはその役割を果たすつもりでいる。