ポール・ジョージ

「この場所こそ、自分の魂が存在するところ」

昨シーズンのクリッパーズは、優勝候補に挙げられながらもカンファレンスファイナルにすらたどり着けなかった。勝敗は運に左右される面もあり、レギュラーシーズン49勝23敗で西カンファレンスの2位、プレーオフではカンファレンスセミファイナル進出と、結果そのものは最悪と呼ぶほどのものでもない。

しかし、最後の負け方が悪かった。ナゲッツとのシリーズで1勝3敗から3連敗を喫しての逆転での敗退。しかも、チームの中心であるカワイ・レナードとポール・ジョージは覇気のないプレーに終始。彼らを支えるべき実績ある選手たちも持ち味を発揮できず、勝負どころでチームがバラバラだったことが露呈した。

その責任を取る形でオフには前指揮官のドック・リバースが退任。チームは再出発を切ろうとしているが、ネガティブなイメージはなかなか払拭できない。カワイとジョージの契約は2021-22シーズンがプレーヤーオプションとなる。もし今シーズンもチームとして機能しないのであれば、2人揃って再びフリーエージェントになってクリッパーズを去ると見られている。

しかし、チーム始動に伴うメディア対応で、ジョージは故郷であるロサンゼルスに留まる意向を表明。現地4日の会見で「クリッパーとして引退したい」と発言した。

「これまでなら、多くのシナリオを検討する立場だったが、今はホームにいられることに満足している。クリッパーズは幼い頃から試合を見てきたチームの一つだし、僕はこのチームのために力を尽くしている。ここで長くやりたいし、クリッパーズの選手として引退したい。これは、今後も言い続けるよ」とコメントしたジョージには、シーズン開幕前日にあたる12月21日までにクリッパーズと延長契約を結ぶ資格がある。

あと2週間あまりで延長契約が成立するかは分からないが、ここまで踏み込んだ発言をするからには今の環境をよほど気に入っているのだろう。ジョージは「この場所こそ、自分の魂が存在するところ。何があっても、ここにいられて幸せなんだ」と続けた。

昨シーズンは新型コロナウイルスの影響もあり、ジョージは思うように力を発揮できなかった。彼をシューターのように扱うドック・リバースの選手起用にも戸惑いがあったと明かしている。ジョージは確かにシュートも上手いが、本来の持ち味は攻守にコートを支配する影響力。スポットシューターではその魅力は半分も出せない。

契約延長に合意すれば、彼は余計な雑音をシャットアウトしてプレーに集中できる。チームとしても、長期的な編成をする上でジョージを軸として考えられる。『ロサンゼルス愛』を宣言したジョージの決断に、注目が集まる。