ダニー・グリーン

グリーン&ルビオはサンダーの『新しい風』に

トレードが解禁となり、サンダーが早速クリス・ポールとデニス・シュルーダーを放出しました。オールNBAチームに選ばれたスターターとシックスマン候補になったベンチの両ポイントガードは、2人でチームの半分のアシストを稼いでいただけに不安もありますが、非常に面白いトレードを実行したと見ることもできます。

手に入れた1巡目指名権は2つのみ。再建を目指すチームが手に入れる対価としては寂しく、ロバート・コビントンで2つの1巡目指名権を手に入れたロケッツには大きく見劣りします。ポールとシュルーダーの価値を考えると、早まった判断だったのではないかとも思えてきます。バックスとのトレードであれば、もっと多くの指名権を手に入れられたでしょう。

しかし、33歳のダニー・グリーンと29歳のリッキー・ルビオという実力派のベテランは、若い選手が多いサンダーをまとめる存在としては最適です。グリーンは伝統のハードなディフェンスに経験をもたらすとともに、これまでサンダーに足りなかったコーナーでの堅実なシューターという役割を教え込んでくれるでしょう。

そしてルビオは愚直なストロングスタイルでアタックを繰り返していたサンダーに新たな風をもたらす存在になります。ポールもシュルーダーも基本的には個人での得点が役割でしたが、アシストが中心だったルビオのプレースタイルは、より連携を重視した形への転換が期待できます。ヘッドコーチも代わっただけに、チーム戦術全体も変革される可能性があります。

またダニーロ・ガリナーリがフリーエージェントで移籍することが濃厚なだけに、ケリー・ウーブレイJr.を補強できたことも大きく、こちらはサンダーらしいハードなディフェンスとランニングゲームで持ち味を発揮できる選手だけに、フィットすれば面白い存在になります。必要なポジションに実績のある選手を獲得するトレードをまとめたサンダーは、競争力を失うことなく新シーズンに臨めそうです。

また、方針を若手に振り過ぎなかったことも重要です。例えばウーブレイJr.はプレーは良いものの性格的にカッなるタイプで、これから獲得する若手にも似たようなタイプがいるかもしれません。何よりも戦えるファイターを重視するサンダーだけに、強くなるためには常にベテランを加えて、チームを落ち着かせつつ勝利を追い求めていくべきです。かつてはニック・コリソンが担っていた役割をグリーンやルビオに求めていくことになるでしょう。

トレードで実力者を補強し、競争力を維持したとはいえ、主力選手を放出しています。それだけにシェイ・ギルジャス・アレクサンダーを中心とした若手がより中心的な存在にステップアップしないといけません。言い換えればステップアップすることができれば、より強いチームになる可能性を秘めたトレードだったと言えます。

しかし、まだまだトレードは解禁されたばかり。大量のドラフト指名権をもっているサンダーは、さらに大きな補強に動く可能性もあります。たった一日で戦力バランスが大きく変わるNBAの熱い熱いオフシーズンが本格的にやって来たことを感じさせる大胆なトレードでした。