初谷洋志

ウインターカップの兵庫県予選は11月1日に決勝が行われた。女子では神戸龍谷と三田松聖が対戦。なかなか点差の離れない展開の中で、チーム一丸となってターンオーバーをせずに我慢し続けた三田松聖が80-74で接戦を制し、ウインターカップ初出場を決めている。全国を経験していないチームの試合運びとしては驚くべきものだし、この女子バスケ部が創部4年目であると聞けばさらに驚かされる。赴任とともにチームを立ち上げ、4年で全国へと導いた初谷洋志コーチに話を聞いた。

長谷川誠の檄「できるできないじゃなしに、目標は日本一」

──全国の強豪と戦うスタートラインに立ちました。本大会の開幕まで1カ月半ありますが、何を目標にしていきますか?

率直に言うと選手たちの目標ははっきりしていて、全国制覇です。1期生の先輩が掲げた近畿ベスト4、兵庫制覇から受け継いできたものです。これは長谷川誠の影響で、彼が言う「ベスト8なんて言うなって、そういうところが甘いんだ。できるできないじゃなしに、目標は日本一だよ」というところから始まっています。だから練習の質で「10秒上げよう」と言われて選手たちがハッとなれば「日本一を目指すんだろう?」と言われます。そうやって全部の行動を日本一の基準でやれるのが、能代工業で育ってきた長谷川のすごいところであり、そこは素直にリスペクトしています。だから私たちは日本一を目標に掲げます。ただ、全国大会で一つ勝つ苦労を皆さんがいっぱいしてきていることも分かっているので、そこは私が自分のテーマとして持っていきます。

──ウインターカップに向けてどの部分を強化したいですか?

「ディフェンスをデザインする」という言葉を使っているのですが、ディフェンス力は徹底したいですね。決勝でも縦に抜かれているシーンが多かったので、後ろに下がる力をしっかりと付けること。自分のディフェンスの距離感をもっと短くして、強度を上げていくことで、ブレイクも出せるんじゃないかと思います。

──全国大会の経験がないだけに、緊張して思うように動けないのではないか、という懸念はありますか?

今回の大会では緊張していたんですけど、ウチはやるべきことがはっきりしているので、アクシデントはあまりありませんでした。

──全国大会に行くからには、このチームと戦いたい、という相手はいますか?

私個人としては、全国ベスト8の壁は絶対にあって、そこまで勝ち上がって強豪校と当たるのも一つの経験だと思います。ただ、どこと対戦したいというのは特にありません。一戦一戦、自分達がやってきたことを頑張るだけです。

三田松聖

「 ウチのミッションは感動、感謝、一体感 」

──初谷コーチの息子さん、娘さんもバスケをやっているとうかがいました。

「3人のうち誰が一番最初に全国に行くか、家族で競争やな」と言ったのを、息子が高校生になる直前の3月に話したのを覚えています。私が一番に全国行きを決めたので、父親の面目を保つことができました(笑)。

──同じバスケで、家族で競い合うことができるのは素晴らしいですね。

私は今まで本当に自分のチームのことばかりで、子供たちにあまりバスケを教えたことがなかったんです。それでも今回のコロナで子供たちとほぼ毎日一緒にトレーニングができて、その中で兄の考え方がこの期間ですごく成長しましたね。でも、一番成長したのは娘で、兄貴のプレーを見て真似るので短期間ですごく上手くなりました。それはすごく楽しかったですね。私も3カ月で13kgダイエットできました(笑)。

人生の中で、教師生活の中で、バスケを全くやらない生活は経験したことがなかったのですが、そこで自分の毎日を見つめ直して、考える時間を持つことができました。バスケがなくなったら自分には何があるんだろう、3日で病気になるんじゃないかと思っていたんですけど、映画を見たり本を読んだり、やれることってすごくたくさんあるんだと気付きました。ダイエットもしましたし、トレーニングやバスケの研究もできました。今までできなかったことに時間を使えて、まさに私もデザインができました。コロナの期間をマイナスではなく、プラスに変えることができたのがすごく意味のある期間でした。

──それでは最後に、全国のバスケファンの皆さんに、三田松聖のここを見てほしい、という点を教えてください。

ウチのミッションは感動、感謝、一体感という『三感王』なんです。3つの感で三感王というのがすごく好きな言葉なんですけど、泥臭いプレーで感動させること、繋がりのあるバスケットができることは親や仲間への感謝だし、繋がりのあるバスケを見て足を止めて見入ってしまう、手を叩いてしまう。それで会場がいつの間にか三田松聖を応援しているという一体感。それを目指しています。なぜかみんなが自分たちを応援してくれる、ということを私は一回体験して、忘れられません。今回は選手たちがそれを表現するので、見ていただきたいと思います。