大きなポテンシャルを秘めた『サイズのある3番』
川崎ブレイブサンダースは、10月28日の新潟アルビレックスBB戦に92-69で快勝した。そして第1クォーターを互角の展開で終えた後、第2クォーター序盤にチームに勢いを与えたのがルーキーの増田啓介だ。ポストアップからのインサイドアタック、さらに3ポイントシュートで連続得点を挙げた増田は、この試合で最終的に今シーズン最長となる24分の出場、シーズン初の2桁得点となる10得点に3アシストを挙げる活躍ぶりだった。
2017年のU19ワールドカップに中心選手として出場し、昨年には筑波大をインカレ制覇に導くなどエリート街道を歩んできた増田は、過去2シーズンは特別指定選手として川崎に加入しており、ルーキーではあるがすでにチームに馴染んでいる。
チームの期待の大きさは、リーグ屈指の選手層を誇る川崎においても開幕からローテーションに入り、安定したプレータイムを得ていることからも明らかだ。佐藤賢次ヘッドコーチは、「まだまだ経験のある先輩たちに比べると、セットプレーの守りでポジショニング、読みが違うところはあるのでそこは成長してもらいたいです」と課題を挙げるとともに、その非凡な能力を評価している。
「増田はサイズがある3番としてポストアップで起点になり、ディフェンスでも身体を張れます。バスケットボールIQも高く、試合の流れを読む能力でも期待しています」
増田本人は、開幕から10試合の自己評価について「プレータイムも今日みたいに多く出させてもらっている時もあれば、少ない時もあります。自分自身、まだまだだと感じています」と手厳しい。
「川崎は伝統あるチームで長くプレーしている選手たちが多く、チームの中に阿吽の呼吸があります。そこは入ったばかりということもあり、まだまだ足りていない。もっと詰めていけると思います」
カルファニ離脱の穴を埋める選手として期待大
昨シーズンの時から自身について控えめな言葉が目立つ増田だが、少なくとも彼が思うよりも周囲は頼りにしている。マティアス・カルファニが24日の試合で左足底筋膜断裂によって戦線離脱したことで、彼の存在はより重要になっている。
帰化枠のニック・ファジーカスと外国籍2名を同時にコートに送りだすビッグラインアップは川崎の大きな武器だ。しかし、カルファニの離脱でインサイドの駒が少なくなったことにより、このラインアップを使える時間が減っている。ただ、その中で194cmの増田は、「大学時代はインサイドでプレーしていたので、武器の一つです」と語るようにポストアップを得意としており、カルファニやパブロ・アギラールが3番ポジションでプレーする時と同様に、ゴール下で起点となってサイズのアドバンテージを生み出せる貴重な日本人フォワードだ。
また、経験豊富で老獪なカルファニ、アギラールと比べれば粗削りな部分は否めないが、指揮官も称えるIQの高さで、若手らしからぬ読みの鋭さ、センスの良さを備えている。「同じプレーをすることは無理ですけど、マティアス選手に負けないようにハッスルしてチームに勢いを与えたいと思います」と本人も語るように、カルファニ離脱の穴を埋める選手として期待されている。
ちなみに川崎の次戦は琉球ゴールデンキングスが相手となり、増田にとって福岡大附属大濠、筑波大と7年間チームメートだった牧隼利との公式戦初対決となる。川崎加入後の増田はインサイドから3番、もしくは2番起用とポジションアップしており、牧と同時にコートに立てばマッチアップする可能性が高い。実際に開幕前の練習試合で対戦した時にはそういう機会が多かった。
「牧に対して個人的な思いがない訳ではないですけど、まずはチームとして琉球に勝ちたいと思います」と増田は冷静だが、同時に意識せざるを得ないところもある。「実際に対戦してみるまでどんな気持ちになるのか分かりません。なんと言えばいいのか……ずっと一緒にやってきたので不思議な感覚になると思います」
11月の川崎は琉球、千葉ジェッツ、富山グラウジーズとタフな相手との対戦が続く。それだけに、ここで白星を積み重ねていくためには、増田がどれだけステップアップできるかも重要なポイントとなってくる。