ラジョン・ロンド

クリッパーズのオフェンスを劇的に変化させる存在

クリッパーズは2019-20シーズンの優勝候補に挙げられていた。カワイ・レナードとポール・ジョージを中心に、セカンドユニットまで分厚い選手層を武器にカンファレンスセミファイナルまで勝ち上がったが、ナゲッツに1勝3敗から逆転され敗退。このシリーズでは各選手が持ち味を発揮できず、シーズンを通して築き上げたクリッパーズらしさが消えてしまった。結果以上に心象の悪いシーズン終了となった。

クリッパーズが苦しんだ原因の一つがボールムーブメントの少なさだ。チームの24秒ポゼッションあたりのパス回数は5.2回でリーグ26位。ちなみにリーグトップはウォリアーズの6.5回、最下位はブレイザーズの4.5回だ。

チームの中心であるレナードはアイソレーションを得意とするスコアラー、ジョージは1on1とアウトサイドシュートが得意でパス能力は高くない。ポイントガードのパトリック・ベバリーは激しいディフェンスが持ち味で、ゲームメークを得意とするタイプではない。バックアップのルー・ウィリアムズは得点を第一に考えるタイプで、若いランドリー・シャメットも適正はシューターだろう。レジー・ジャクソンは指揮官ドック・リバースに重用されなかった。

つまりクリッパーズにはゲームメーカーが不在だった。レナードは今シーズン4.9アシストを記録し、オールラウンダーとしてのプレーの幅をまた広げたが、ESPNのスティーブン・A・スミスはレナードがパサーの役割を望んでいないと明かす。「レナードはプライベートの場でそれを要望している。ベバリーの放出を望んでいるわけではない。ベバリーはディフェンスのエースだが、サイズが小さくミスマッチが起きる。ベンチからディフェンスにエネルギーをもたらす選手だ。先発ポイントガードにはチームを引っ張ることができ、シュートも打てる選手が必要だ」

では、クリッパーズはどんなポイントガードを獲得すべきだろうか。噂はたくさん出ているが、注目すべきはラジョン・ロンドだ。レイカーズの優勝に貢献したロンドは2020-21シーズンのプレーヤーオプションを拒否し、フリーエージェントとなって自分の市場価値を問うと予想される。レイカーズとの契約がもう1年残っているとはいえ、270万ドル(約3億円)と格安。長期契約は望めないにせよ、単年であればずっと高いオファーを受け取ってもおかしくはない。

バスケットボールIQが高く、パスを優先する生粋のゲームメーカーであるロンドが加われば、レナードにとっても理想的なパートナーになる。ハードワークの部分はベバリーがサポートできるだろう。クリッパーズの選択肢となるポイントガードは多数いるが、レナードとジョージのプレースタイルに依存しているクリッパーズのオフェンスを劇的に変化させる、なおかつサラリーキャップに大きな負担を与えない選手はロンドしかいないのではないか。また、ライバルの優勝に貢献したポイントガードを引き抜くとなれば、不本意な敗退に鬱憤を募らせるファンも納得させられるだろう。

もっとも、クリッパーズはただでさえ個性の強い選手が多く、経験豊富なドック・リバースでも『バブル』という特殊な環境下でのチームの舵取りには苦労した。ロンドも癖の強い選手で、既存の選手たちとフィットさせるのは一苦労だろう。それでもヘッドコーチに昇格したタロン・ルーなら上手く折り合いを付けてくれるに違いない。