2017年のサマーリーグで頭角を現したカルーソとクーズマ
今シーズンのレイカーズの年俸総額は1億2500万ドル。レブロン・ジェームズが3750万ドル、アンソニー・デイビスが2710万ドル、ダニー・グリーンが1460万ドルを受け取っており、年俸総額の約3分の2をこの3人に費やしていることになる。レイカーズのサポートキャストは実力者揃いではあるが、その年俸は安い。これは、契約時点で彼らが過小評価されていたことを意味する。
その代表格がアレックス・カルーソだ。2016年のNBAドラフトでは指名されず、プロ1年目はGリーグでプレー。2017年のサマーリーグにレイカーズの一員として参加し、2ウェイ契約を経て本契約を結んでいる。その後はチーム戦術を忠実に遂行し、バスケIQが高くハードワークができる選手としてファンからは愛されているが、その年俸は275万ドルでしかない。今回のNBAファイナルで、レイカーズをスター軍団、ヒートを雑草軍団と見る向きもあったが、カルーソこそ雑草魂で下から這い上がってきた選手だ。
カルーソは言う。「ここまで長い道のりだった。周りからは能力を疑われたこともあったけど、自分を信じて努力してきた」
サポートキャストと呼ばれ、彼もその立場で自分の力を尽くそうとしているが、今の彼はNBAチャンピオンであり、しかも優勝を決めた試合のスタートだ。33分の出場で4得点は物足りないが、速いテンポを作り出して人とボールを動かし、ヒートを受け身に回す上で決して小さくない貢献をしている。
「コーチは今日の試合で僕を先発で使ってくれた。そのための準備はしてきたつもりだった。僕は20得点を決めるような選手じゃないけど、自分の長所は分かっていて、試合に勝つ力になれる。僕はプロバスケ選手として、日々レベルアップするのが仕事だ。1年前と比べて格段にレベルアップできたし、それにまだ伸びしろは残っている」
「ドラフト外だったけど、サマーリーグでレイカーズにチャンスをもらい、クーズマと一緒にプレーして優勝した。そこからお互いに努力を続けて、ようやくここまで来たんだ。練習、練習、練習の日々だったけど、やってきた甲斐があったよ」
このようにカルーソが名前を挙げたカイル・クーズマもまた、評価が定まらなかった選手だ。2017年のドラフトでは1巡目27位でネッツに指名され、ディアンジェロ・ラッセルが絡むトレードでレイカーズへ。指名順位は低かったがコービー・ブライアントに目をかけられ、1年目から活躍。しかしチームが結果を出せない中で彼の評価も落ち、昨シーズンには「移籍の噂ばかりでプレーに集中できなかった」と苦しい胸のうちを明かしたこともあった。ヤング・コアが解体された中で放出こそ免れたものの、今シーズンは同じポジションにアンソニー・デイビスが来たことでプレータイムも役割も限定されることになった。
「いろいろなことがあった1年だった。兄のように慕っていたコービーを亡くし、新型コロナウイルスがあって、エイブリー・ブラッドリー抜きで『バブル』では戦わなきゃいけなかった。それでもやり遂げられたのは、僕らがトップクラスのメンタルの強さを持っていたからだろう。僕ら全員が、自分を犠牲にして戦ってきたんだ」
ロッカールームでのシャンパンファイトの後に会見に応じたクーズマは上半身裸で、そして幸せそうだった。「シャンパンを飲んだから少し酔っぱらっているんだけど、NBAのチャンピオンになれたなんて信じられないよ」と語る。
過小評価されていたのは若い2人だけではない。ラジョン・ロンドとドワイト・ハワードは『もう終わった選手』、『扱いにくいベテラン』と見なされていたが、プレーオフでは優勝請負人とも呼ぶべき働きを見せた。ケンテイビアス・コルドウェル・ポープもディフェンスマンとして本領を発揮している。
指揮官のフランク・ボーゲルはサポートキャストの貢献を問われ、次のように答えている。「全員が私の要求を受け入れて、選手層が厚いチームでプレーすることを理解してくれた。スモールボールとビッグボールのハイブリッドなど様々な要素が絡んだのがレイカーズのスタイルだ。守れるだけでなく、オフェンスでもドリブル、パス、シュートのできる選手が複数いたからこそ、非常に多彩なチームになれたんだ」
レブロン・ジェームズとアンソニー・デイビスの存在は確かに大きいが、スター選手を2人並べたチームは他にもあった。レイカーズは優れた『THE BOYS』を擁したことで、ライバルを上回ったのだ。