安藤誓哉

「僕たちの100%は未知数」

アルバルク東京vs川崎ブレイブサンダースのBリーグ2020-21シーズン開幕戦は、ディフェンスで主導権を握ったA東京が85-79で勝利した。序盤から互いにインテンシティの高いディフェンス合戦の様相を呈す中、数少ない優位性を生かしたのがA東京だった。こうした場面で輝いたのがポイントガードの安藤誓哉だ。

安藤は27分間の出場で18得点6アシストを記録。川崎が帰化選手のニック・ファジーカスと2人の外国籍選手を同時起用する『オン3』を選択する中、外国籍選手とのマッチアップの機会を作り出した安藤は次々と3ポイントシュートを沈め、最終的に5本中4本の3ポイントシュートを成功させた。

第4クォーター残り37秒、安藤はマティアス・カルファニとの1対1から3ポイントシュートを沈め、点差を2桁に戻して勝負を決定づけた。プレッシャーのかかる場面だったが「あの時間であそこのポジションでボールをもらうということは、勝負をしに行かなきゃいきゃいけない。どういう1on1をするか、どういうシュートを打つかしか考えていなかった」と、リングだけを見据えていた。

外国籍選手の高さとパワーは特にオフェンスで大きな威力を発揮するが、ここで違いを生み出せなければディフェンスに回った際にスピードのミスマッチを突かれるデメリットが出てくる。安藤はそうしたシーンでことごとくビッグショットを決め、両チームともなかなか点数が伸びない展開の中で貴重な得点を積み上げた。以前、「毎試合ドミネート(支配)できるポイントガードになりたい」と語っていたが、それを有言実行した形となった。

指揮官のルカ・パヴィチェヴィッチも安藤を称賛した。「A東京で3年プレーし、優勝チームのポイントガードとなり、オリンピック候補にもなった。素晴らしいリーダーシップを持っている。彼のパフォーマンスはチームが勝利するチャンスを与えてくれた」

アルバルク東京

川崎のプレッシャーをかいくぐり主導権を引き寄せる

安藤が称えられる理由は得点だけではない。敗れた川崎の佐藤賢次ヘッドコーチが「ディフェンスは悪くなかった」と語ったように、川崎のディフェンスもA東京に負けず劣らず素晴らしかった。特にガード陣へのプレッシャーは激しく、トラップも仕掛けるなど攻撃的なディフェンスを見せた。しかし、安藤はそうした圧力に屈することなく、27分のプレータイムでターンオーバーを1つに抑えた。

川崎のプレッシャーディフェンスに最も晒されたのが、ボールを運ぶ安藤である。並のポイントガードであれば、何度もボールを失う可能性もあったが、安藤はこのプレッシャーを巧みにかいくぐってミスを最小限に抑えた。これはA東京が主導権を握り、川崎がずっとリズムをつかめない大きな要因となり、チームの勝利に繋がった。

A東京はデション・トーマスとケビン・ジョーンズの2選手が合流できていない状況で強豪の川崎を撃破した。安藤は「僕たちの100%は未知数」と、いずれ仕上がるチームの完成形のポテンシャルに自信を持つ。「若い選手たちと、まだ合流できていない外国籍選手たち。しっかりとケミストリーを重ねることができれば、もっと強いチームになれるのではないかと期待しています」

開幕戦で最高のパフォーマンスを見せ、試合を支配しながらも「さすがだなと思うプレーもたくさん見せつけられた」と川崎を称える面もあり、慢心はない。今シーズンからキャプテンを務めることになった安藤の存在感は、今まで以上に増している。