Bリーグの2020-21シーズンが10月に開幕する。新型コロナウイルスの影響で昨シーズンは途中で終了となり、今シーズンも観客を半分しか入れられないなどコート外の話題が多くなっているが、シーズンが始まればコートで戦う選手たちが主役となる。ここから開幕まで、テーマ別に注目選手をピックアップしたい。今回はチームに欠かせない守備の主役を担う3人を紹介する。
鵤誠司 規格外のフィジカルの持ち主
185cm95kgの体躯をフルに活用して相手を苦しめるのが鵤だ。ガードとして突出したスピードはないが、それを補って余りあるフィジカルの強さが持ち味。飛び込んでくる相手に身体を寄せるだけで軸をブレさせ、その後のプレーの精度をガタ落ちさせる。これを繰り返されて自分のリズムを保てる選手はいない。外国籍選手にもパワー負けしないポイントガードは現在のリーグにそうはいない。日本はワールドカップでフィジカルの差を痛感させられ、それ以降、パワーや身体の使い方の向上が叫ばれているが、鵤はそのスキルとパワーをすでに持っている。
ディフェンスが重要視される宇都宮ブレックスにおいて、鵤の存在は欠かせないものとなっている。安齋竜三ヘッドコーチも「ディフェンス面で残さないといけないメンバー」に鵤の名前を挙げていた。また、「ファウルをしてほしい時にファウルができたり、そういう隙もなくなってきました」と、バスケIQの向上も評価して絶大な信頼を寄せている。
過去に2度、ベストディフェンダー賞を受賞している遠藤祐亮の存在も合わせて考えると、相手にとっては脅威以外の何物でもない。まずはディフェンスとリバウンド。そこからトランジションで点を取りたい宇都宮にとって、ディフェンスの安定は最重要項目だ。初年度以来、2度目のBリーグ優勝を果たすには鵤のディフェンスでの貢献が重要だ。
関野剛平 敏捷性に特化したディフェンスマン
昨シーズンのサンロッカーズ渋谷は天皇杯を制し、過去最高勝率を記録した。飛躍を遂げた一番の理由は前線から激しいプレッシャーをかけるディフェンスを、強度を落とさずに40分間続けたからだ。そのディフェンス面で大きな役割を果たしたのが関野だった。誰に対してもスピード負けしない敏捷性を持ち、どこまでも食らいついていく粘り強さがある。
関野はスタミナ不足を自分でも認めており、全力でプレーすると3分も持たないことから「ウルトラマン」との異名を持つ。そのため、プレータイムは平均20分を下回っている。それでも41試合中40試合で先発を務めたように、試合の出だしからフルスロットルでディフェンスする関野はチームのペースメーカーとなり、数字に表れない部分での貢献度は高い。プレータイムはほぼ同じでも、脇役だったレバンガ北海道時代と今では、その存在感はまるで違う。
コートに出ている間にすべてを出し尽くすこのスタイルは、相手チームからすれば鬱陶しいことこの上ない。もちろん、スポットシューターとしての役割など、オフェンス面での貢献も忘れてはならない。エースのベンドラメ礼生も「ディフェンスからのトランジションであれば、関野のスピードは止められない」と言う。スピードに特化した関野のディフェンスでの輝きはSR渋谷でこれからも増していく。
長谷川技 相手の嫌がることを知り尽くすハードワーカー
育成型から即戦力級をチームに加える方針に切り替えた昨シーズンの川崎は、その目論見通り新戦力と既存戦力が噛み合い、リーグ2位タイとなる勝率77.5%を記録した。佐藤賢次が指揮官となり、全員に40分間のハードワークを求める激しいバスケットへと切り替わったことも大きな変化だった。そのハードワークを最も体現しているのは新戦力ではなく、東芝時代からの生え抜き、31歳のベテラン長谷川だ。
基本は3番でプレーするが、ビッグマンを相手にしてもパワー負けせず、ガードも守ることができる守備範囲の広さが魅力。特にピック&ロールが主流の現代バスケにおいて、スイッチしてもパワーやスピードのミスマッチを起こさせないプレーヤーは貴重だ。平均スティール数は0.6とそこまで多くはないが、長谷川のプレッシャーによってパスコースが制限され、チームメートのスティールに繋がるシーンは多々ある。
昨シーズンは平均17.1分のプレータイムで、Bリーグ以降最も少なかった。それでも「常にフルスロットルで、短い時間でも出せるものは出し尽くしてやっていたので物足りなさはなかったです。バスケやってるなって感じでした」と語ったように、プレータイムが減った分、コートに出ている時間帯の圧力は強烈だった。唯一無二のロールプレーヤーが強い川崎を支えている。
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