Bリーグが始まってからの4シーズン、宇都宮ブレックスはディフェンスとリバウンドに絶対的な強みを持つスタイルで、常に優勝争いを演じてきた。在籍8年目を迎えたライアン・ロシターとともに、そのスタイルを支えるのが、Bリーグ創設のタイミングでトヨタ自動車から移籍して来たジェフ・ギブスだ。特に1年目のファイナル、優勝を手繰り寄せるルーズボールへのダイブは、今も色褪せない印象的なシーンだ。今夏に40歳になったギブスだが、今シーズンもインサイドを力強く支えて優勝を手繰り寄せるつもりだ。
「リバウンドは間違いなくこのリーグのトップ」
──オフはアメリカで過ごしていたと思いますが、コロナ禍の状況でチームへの合流は問題ありませんでしたか?
子供は学校があるので、基本的には単身赴任です。昨シーズン中断前のタイミングで家族が日本に来ていて、シーズンが途中で終わったことで全員でアメリカに帰りました。普段のオフだと僕の両親や妻の両親、親戚と会うのですが、今回のオフはコロナのことがあるし、 僕たち家族はアメリカ国外から戻って来るという状況だったので、帰国して2週間は家で自己隔離をして、念を入れて1カ月ぐらいはほとんど家から出ることなく、他の人と接触しないようにしていました。
毎年、コンディションを保つためにいろんなトーナメントに参加して、バスケの試合をやりながら調整しているのですが、今年はすべての大会がキャンセルになってしまいました。体育館もクローズになって、トレーニングする場所もなかったんです。外でワークアウトはしたのですが、コンクリートの上を走るのはひざに負担が大きい。トレーニングという面では難しかったです。それでも、普段は長く一緒にいられない家族と過ごせたのは良かったですね。
──家族で一緒に過ごす時間が長すぎてギスギスするケースもあると聞きますが、ギブス家は大丈夫でしたか?
奥さんはふざけて「もう日本に帰ったら?」と言うんですが、これも夫婦のコミュニケーションなので大丈夫(笑)。子供とも長く一緒に過ごせました。部屋を片付けなかったり手伝いをしなければ怒るし、やれと言われたのにやらなかったらまた怒ります。そうしたら子供たちも「次にやらなかったらどうなるか」を考えるので、やるようになります。でも、僕も自分のことを大きな子供だと思っているので、しつけは大事だけど普段は楽しく、親ではあるけど一緒にふざけて笑っていられる関係でありたいです。
──宇都宮のインサイドはジョシュ・スコット選手が入ってさらに強力になりました。ロシター選手とギブス選手、竹内公輔選手に彼が加わるのですから、リーグ最強のインサイド陣と言えるのではないですか?
今シーズンのインサイドは今まで以上に強くなります。4人になって今まで以上にタイムシェアができて、5分か6分ハードにプレーしたら、次の選手が出ることもできます。4人のローテーションで高いエナジーを保ち、良いパフォーマンスが見せられると思います。実際、絶対にNo.1のインサイドだという自信を持っています。特にリバウンドは4人全員が強みとしていて、オフェンスリバウンドもディフェンスリバウンドも間違いなくこのリーグのトップだと思います。
──チーム内競争でプレータイムを勝ち取らないといけない状況は久々なのではないかと思いますが、燃えますか?
練習でやることが試合に出ます。ボックスアウトもリバウンドも練習から高いレベルで競い合っていれば、それは試合で自然と出てくるものです。これだけのメンバーが揃っているのは素晴らしいこと。それぞれスタイルが違うので、マッチアップする中で試合での対応を学べるのもメリットですね。
日本人ビッグマンに檄!「もっと鍛えてインサイドに戻って来い」
──外国籍選手の登録数が増えることで、リーグ全体で日本人ビッグマンの活躍の場が減るのではないかという不安があります。ですがギブス選手は身長188cmと決して高さで優位があるわけではありません。日本人ビッグマンに「もっと頑張れよ」と思うことはありますか?
日本だけでなく世界のバスケのトレンドとして、今はビッグマンが3ポイントシュートを打つようになっています。日本の若いビッグマンもNBAを見ているだろうし、そのトレンドに影響されてアウトサイド志向になるのは仕方のないことです。ただ、僕は日本の若いビッグマンにはインサイドで頑張ってほしい。僕自身も身長が低かったので「ガードをやったらどうか」と言われたこともありました。だけど僕はインサイドで戦い続けることを選びました。理想の選手がチャールズ・バークレーだったので、高さがなくても身体を鍛えてインサイドで戦うスタイルが好きだったんです。今のトレンドもあるので、アウトサイドに流れるのも理解できます。でも、僕個人としては「もっと身体を鍛えてインサイドに戻って来いよ」と言いたいですね。
──ギブス選手も数は多くありませんが3ポイントシュートは打っていますよね。3番ポジションでの起用も面白いと思います。
僕がスモールフォワードをやったとしても、相手は僕よりサイズの小さい選手にはマークさせないはず。結局、どのポジションでプレーしようが、ビッグラインナップで僕をマークするのはビッグマンで、結果的にはそう変わらないと思います。
──トヨタ自動車でも在籍が長かったですが、宇都宮ももう5シーズン目です。これだけ安定して活躍していれば、他のクラブから興味を示されることもあったと思いますが、宇都宮でプレーし続ける理由はどこにありますか?
常にブレックスの方が良いチームだったからです。僕がここに来た時は、もう自分がチームのゴー・トゥ・ガイでありたいという時期を過ぎていました。 ライアンが、このチームの中心という状況ですが、他のどの選手が中心になってもおかしくないチームでもあります。すべてが自分中心で、どんな状況でも自分がすべてやる立ち位置より、チームを助ける存在になりたかったんです。キャリアのそういう時期に自分はいるのだと思います。
日本に来る前はドイツでプレーしていて、どのチームでも僕がゴー・トゥ・ガイでした。トヨタ自動車に来たらルールも違うので1年目は違いましたが、2年目からは自分がゴー・トゥ・ガイのつもりでプレーしていました。その後、ブレックスではなく下位のチームに行けばエースでいることもできたと思います。ですが、そういうチームで毎試合20得点するよりも、強いチームにいたかったんです。自分が20点や30点を取っても勝てないチームではなく、自分が10点を取り、他の選手たちも10点を取って勝つチームでプレーしていたかったんです。
──宇都宮はファンがチームを後押しする力が大きな武器となっています。観客を半分しか入れられない状況は厳しいのでは?
無観客じゃなくて良かったと思っています。 昨シーズンのラスト2試合は無観客での試合で、本当の試合とは思えなかったというのが正直なところです。観客がいない中で試合をするのは僕にとってとても難しいこと。 だから50%であってもアリーナにファンがいてくれれば、僕たちにとっては力になります。
──そんなファンの皆さんに、メッセージをお願いします。
今言ったように、ファンの皆さんを会場に迎え入れることができてうれしいです。一緒に、精一杯戦ってください。会場に来ることができず画面を通して僕たちを応援してくれる皆さんも、しばらくは遠いところからかもしれませんが応援してください。一日でも早く、また満員のアリーナで皆さんと一緒に戦いたいと思っています。