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レブロンは「すぐ優勝できるチームか」にこだわらず

7月1日、NBAのパワーバランスを根底から変えるであろう移籍が決まった。キャバリアーズからフリーエージェントになったレブロン・ジェームズが、かねてから噂のあったレイカーズへの移籍を決断したのだ。

今から24時間前、レイカーズは当初の青写真を変えざるを得ない危機的状況を迎えていた。南カリフォルニア出身で、以前からレイカーズでプレーしたいと公言していたポール・ジョージが、たった1年しか在籍していないサンダーとの再契約を表明。ジョージの残留はサプライズとして報じられ、ジョージという戦力を確保した上でレブロンとの交渉に臨もうとしていたレイカーズのプランに大きな影響を与えると見られた。

だが、レイカーズ球団社長のマジック・ジョンソンは動じなかった。レブロンと4年1億5400万ドル(約170億円)の契約に合意するまでの動きを『LA Times』が伝えている。

6月30日、レブロンは家族とバカンスを過ごしていたカリブ海の東に位置するアンギラ島からロサンゼルスに到着後、その日はロサンゼルスのブレントウッドにある自宅に戻った。そして、その日の午後9時すぎ、マジックがレブロン宅にやって来た。レイカーズがこの時点で優勝を狙えるチームかどうかをレブロンは気にしなかった。シーズン開幕前とシーズン途中にロスターを解体したキャブズをファイナルに導いたレブロンの実力と経験を持ってすれば、それは問題ではない。むしろレブロンがマジックに求めたのは、揺るぎない信頼関係を築けるかどうかだった。

その点で言えば、レブロンとマジックは出身地もオハイオ州とミシガン州で近く、バスケットボールがビジネスの世界に繋がる道筋になること、そして社会を変えられるだけの影響力を持つ競技であることを理解しており、パートナー関係を結ぶには最適だった。こうして2人はすぐさま合意し、移籍決定へと至ったのだ。

優勝16回を誇る名門ながら、レイカーズは2013年あたりから迷走していた。コービー・ブライアント時代からの世代交代に失敗したという理由もあったが、前オーナーであるジェリー・バスの死後、その子供たちによる体制が機能しなかったことが大きい。その結果、レイカーズは勝てなくなり、スター選手たちがプレーしたがらないチームになり下がってしまった。

大物フリーエージェント選手を獲得するための努力をレイカーズが怠ったわけではない。しかし、2014年にはカーメロ・アンソニーにそっぽを向かれ、2015年にはラマーカス・オルドリッジの心をつかめず、2016年にはケビン・デュラントと交渉する機会さえ持てなかった。

そして2017年の春、球団の総責任者だったジーニー・バスが、当時チーム強化と運営を任されていた兄のジム・バス、2000年からGMを務めていたミッチ・カプチャックの解任という大ナタを振るう。代わりに、その年の始めにアドバイザーとしてレイカーズに戻っていたマジックを現場の責任者に起用した。

ジーニーは、父が築いた強いレイカーズを取り戻すため、マジックに現場を託した。マジックは就任後、自分の相棒となる新GMに、以前コービーの代理人を務めたロブ・ペリンカを起用。2人は早速行動を開始し、生え抜き選手のディアンジェロ・ラッセル、それから適正価格を超える高額年俸を受け取っていたティモフェイ・モズゴフをネッツにトレードし、昨年のドラフトでロンゾ・ボールという金の卵を指名。ヘッドコーチには指導者としての実績よりもリーダーとしての資質を重視し、元レイカーズのルーク・ウォルトンを据えた。同時に今年のオフに使える資金を用意するため、キャップスペースの整理も進めた。

そして2018年7月1日、今夏最大の大物フリーエージェント選手であるレブロン・ジェームズの獲得に成功する。レブロン加入による影響力は大きかった。レブロンの移籍が決まった直後に、『曲者』ではあるが確かな実力を持つランス・スティーブンソン、昨シーズンまで王者ウォリアーズを支えたジャベール・マギーが単年契約に合意。彼らに続いてレイカーズ入りを希望するベテランは間違いなく増えるだろう。

レイカーズはすぐに優勝できないチームかもしれない。しかし、レブロンという大黒柱を手にした以上は、フロントにかかる期待と重圧はこれまでとは比べものにならないくらい大きくなる。ウォリアーズに対抗できるだけのチームをどうやって作るか、メディアやファンの目もいっそう厳しくなるだろう。

とにかく、賽は投げられた。もう誰にもレイカーズ新時代の流れを止められはしない。レブロンが中心の新生レイカーズは、果たしてどういうチームに変貌を遂げるのだろうか。再び黄金の輝きを取り戻せるかどうかは、新時代の担い手になったレブロン、マジック、ペリンカ、ウォルトンにかかっている。